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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第487話 スライムゾンビ試験体の使い方

 敵を退けつつ、俺達はようやく空調の施設を発見した。流石はシャーリーン、こういった建造物の構造を知り尽くしており、俺達はそれほど手間をかけずして到着したのだった。


 俺達が見ている先に、超巨大なプロペラが何重にも設置されており、その上に金網が張られている。そこの前に立っただけで、物凄い吸い込みの力が働いている事が分かった。


「薬を」


 俺達はポケットから薬の瓶を取り出して蓋を開け、プロペラにめがけて投げつける。プロペラにぶつかって割れた液体が、吸い込まれて中に入っていくのだった。


「よし。行こう!」


 クキが言った。俺が先行し来た道を戻ると、その途中で新しいゾンビ化兵の気配がした。


 だがそいつらは、バタバタと倒れ次々に気配を消していった。


「効いたようだ」


「成功ですか」


「ああ。これで多少邪魔者は消える」


「ああ」

「はい」


 さっきの超音波音声が再び流れたら、俺は周囲をずたずたに切り裂く。どこかで機器が破壊され、クキもシャーリーンも気にせず進むことができた。かなり下まで潜ったが、ゾンビ化兵はことごとく死んでおり、俺達の新型ゾンビ破壊薬が効いている事がわかった。


 するとようやく研究施設のような場所に到着し、あちこちにぐったりした研究員が座り込んでいた。どうやらおかまいなしに超音波兵器を使ったらしく、それを喰らった研究員が体調不良で動けなくなっているらしい。


「俺が始末する。シャーリーンは情報を探してくれ」


「はい」


 クキがシャーリーンを守り、俺は身動きが取れなくなっている研究員の意識を刈り取った。


 そして端末のデータを見たシャーリーンが言う。


「ここは……」


「なんだ?」


「新型試験体の製造工場です。そして…新型試験体に使用させる兵器開発をしています」


「試験体用の兵器だって?」


「見てください」


 そして俺とクキがその情報を見る。


 そこには試験体が武装をしている様子が、動画で映し出されていた。


 クキが呆れたように言う。


「おいおい。生物兵器開発に飽き足らず、そいつらを強化する兵器まで開発しているのか」


「そのようです。だからこのような海上に基地があるのですね。ここならば、外に被害が及ばない。その代わりに、大陸にある研究所で開発されている試験体とは桁が違うようです」


「新型ゾンビ破壊薬が、効かない可能性も視野に入れないといけないだろう」


「その時は。俺が斬る」


「ああ。それしかない」


 次々にデーターのバックアップを取りながら、シャーリーンが俺に言う。


「ミスターヒカルのリュックから、衛星通信回線の機器を」


 俺が取り出すと、シャーリーンが袋を開けて端末を繋いだ。衛星回線を通じて、オオモリと自衛隊に送られる仕組みになっている。


「あとどのくらいだ?」


 クキが聞いてシャーリーンが答えた。


「あと十分」


「急いでくれ」


「はい」


「下手にこの基地がダメになったと分れば、アイツらは自爆や核で消去をしてくる」


「分かっています」


 衛星通信に繋いだことで、オオモリたちとの回線がつながる。


「九鬼さん」


「こちらは基地に潜入中。送ったデータにあるように、海上プラントを模した基地があった」


「気を付けてください。謎の航空機がそちらに向かいました。自衛隊からも注意をするようにと通信が来てます」


「証拠隠滅か…」


「可能性が高いです」


「あいつらも諦めが早いこった」


「後手に回りたくないのでしょう」


「了解だ。データが吸い上がれば回線は切れる。他に何かあるか?」


「御武運を」


「おうよ」


 そこでシャーリーンが言う。


「吸い上がりました。回線を閉じます」


 回線を閉じ、衛星機器をリュックに仕舞いこんで俺達は廊下に出る。そこでクキが言った。


「既に謎の航空機がこっちに来ている。恐らくは証拠隠滅だ。もう間に合わんかもしれん」


 そこで俺が言う。


「なら下に潜ろう」


「わかった」

「はい」


 下に潜れば、海上が攻撃されても後から脱出方法はいくらでもある。とにかく二人を連れて下に降りていくと、螺旋階段と空洞が下に続いているのが見えて来た。下はどこまでも続いているように見える。


「こりゃ…エレベーターだな」


「何のエレベーターでしょう?」


「クキ。下から何かが上がって来るぞ。恐らく試験体だ」


 下のエレベーターが上がって来るのを感知した。


「試験体だあ? 挟み撃ちか」


「問題ない」


 俺達が螺旋階段を下りていると、下から上がって来た大型のエレベーターが目の前で止まった。扉はしまっているが、俺達の位置をしっかりと把握しているらしい。


「俺達のいる場所が分かったようだ」


 シャーリーンが言う。


「恐らくは赤外線センサーが巡らされていたのでしょう」


「来るぞ!」


 エレベーターの扉が開くと、そこには機械で出来た、サルのような試験体が三体ほど出て来た。


 そしてクキが目を見開いて言う。


「ロボットか?」


「気配は試験体だ」


「鉄の外骨格を着せています。あれはロボットではなくゾンビです」


 そいつらは赤い目を光らせており、体中に武装を施された試験体だった。


「見た目上の気味悪さはないが、あれが試験体だと思うとぞっとするな。まるでメカ軍団が襲ってきたようだ。ロボットと称して売るつもりか?」


「撃ちます」


 シャーリーンが銃を構えようとするが俺が手で制し、刀を抜いて剣技を繰り出す。


「屍人鉄鋼斬! 三連!」


 ガン! ガコン! ガガン!


 三体の鉄製の試験体が崩れると、中からぐずぐずのゾンビ細胞が現れて死んだ。


 それを見てクキが言う。


「ヒカルが見た、ゾンビ化スライムの正しい使い方って訳だ。こりゃマズいな、こんなものまで出来たのか…」


 そしてシャーリーンが言う。


「航空機の目的は爆破ではなく、これの回収ではないでしょうか?」


「あいつらが自分達で爆破しないなら、俺が破壊するまでだ。このまま下に降りるぞ」


「ああ」

「わかりました」


 俺達は螺旋階段を使って、更に下へと潜っていくのだった。

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