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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第485話 敵の海洋プラント

 俺とクキとシャーリーンがスイムスーツを着て、軍隊用ゴムボートから海原を見渡している。バハマを出発しバミューダ海域にでてから、既に半日が経過していた。そこでようやく俺の気配感知に、おかしな気配がひっかかる。


「クキ。気配感知に人間とゾンビ化人間の気配が引っかかった」


「下手なレーダーは要らないな。どっちだ?」


 俺が指をさした方向に、クキがボートを操作して進めていく。


 しばらく進んで行くと俺達の視界の先に、靄のようなものが海を覆っているところが見える。空は青いのに何故かその辺りだけ靄がかかり、真白な壁が出来ているようだ。


 クキが言う。


「なんだありゃあ。ずいぶん不自然だな」


 シャーリーンが答える。


「人工的なものでしょうか?」


「あんなものが作れるのか?」


 だが俺は、不穏な音を聞きつけ二人に言う。


「ボンベを咥えろ。飛び込んで水中スクーターを切り離せ」


 二人は特に聞き返すこともなく、ホースを咥えて水に飛び込んだ。俺も後に続いて、二人に下に潜るように身振りで指示をする。俺も水中スクーターを使うが、明らかに泳いだ方が早かった。


 グーンと音が聞こえて来て、白いもやがかかっていた方から船がこちらに向かっているのが分かる。俺が先を進み二人が俺について来た。船とすれ違って進み、靄の縁あたりに来た時に、親指を挙げて浮上するように指示を出す。


 三人が海面から頭を出して、乗って来たゴムボートの方を見ると、船から銃撃を受けて沈んでいるところだった。


「察知されたか」


「そのようだ。このまま水中を進もう」


「ああ」

「はい」


 三人は水中スクーターを使って、その先に進んで行く。しばらくすると建造物のようなものが見えて来たので、また二人に浮上するように伝えた。


 クキがそれを見て言う。


「洋上プラントだと。こんなところに海底油田でもあるのか? しかもデカい…三百メートルはある」


「油田?」


「石油が取れる場所だよ」


 だがシャーリーンが答える。


「バミューダに海底油田があるとは聞いてないですね。メキシコ湾ならばあるのですが、どう見てもあれは海洋プラントですね」


「だとすれば、あれは油田を模したカモフラージュだ」


 そこで俺が二人に言う。


「進入しよう。あそこからゾンビ化兵の気配がしている」


「さっきの船が戻ってきたぞ」


 そこでシャーリーンが言う。


「大きい船はプラントには接触しません。恐らく周辺の警戒をしているのでしょう」


 俺達はまた水中に潜り、水中スクーターで海洋プラントに近づいて行く。水中に太い柱が何本も立っており、俺達はその柱に到達する。

 

 そして俺が言う。


「波が激しくて、水中スクーターはここに置いておけないだろう。直ぐに見つかってしまう」


「自動運転で流してやりましょう」

 

 シャーリーンがピッピッと操作をすると、水中スクーター三機がプラントから離れて行った。


 クキが言った。


「問題はどうやって侵入するかだ。のんびり柱をよじ登っていたら見つかるぞ」


「俺に任せておけ。二人はその辺りに一緒に浮かんでいろ」


「わかった」

「はい」


 そして俺が酸素ボンベを外して捨てると、ボンベは海中へと沈んで行った。そのまま海中深くに潜っていき、しばらく潜ったあたりで海面に向け一気に超高速で泳いで行く。海上に浮かんでいたクキと、シャーリーンを抱き留めて空中に五十メートルほど飛び上がった。


 プラントの下の骨組みの所に着地して、二人を降ろす。


「ヤバすぎだろ、くらくらくるぜ。ていうか、シャーリーンが失神してるじゃねえか」


「起こす」


 フッと気合を入れると、シャーリーンが薄っすらと目をあけた。


「な、何があったのです」


 クキが言う。


「下を見ろ」


「えっ…いつのまにここまで?」


 それには俺が答えた。


「飛んだ」


「飛んだ? 海上からどうやって?」


「泳いで掴んで飛んだ」


「ま…まあ詳しくは聞かなくても良さそうです」


 そして俺が周辺を伺う。


「この上に銃を持った奴らがいる。ボンベをここに置いて行こう」


 二人が酸素ボンベを置いた。俺達が柱の骨組みを縫って進むと、上に続く階段が見えて来る。


「俺が先に行って制圧する。遅れて来い」


 俺がそう言って階段を昇ると、銃を携えて歩いている奴が二人いた。認識阻害と隠形を施しているために、俺に気が付く事は無く海上を見ている。


「刺突閃」


 二人の頭を刺して、スッと走り寄って倒れる前に横に隠した。遅れてクキとシャーリーンがやって来る。そこでシャーリーンが言った。


「構造的には、前側がおそらく居住区になっています。石油のプラントでは無いとすれば、後ろ側は恐らくファーマー社の基地になっているのではないでしょうか」


「ならば居住区の方が無防備だろう。先にそちらを片付けるぞ」


 三人は一気に居住区だと思われる方向に向かい、建造物の陰に隠れて先を見る。


「監視塔のようなもんがあるな」


「こちらは見ていないようですね」


「行こう」

 

 俺達が壁に張り付き、入り口を静かにクキが明けて俺が中に入る。狭い通路があり、その奥に人の気配が多数あった。俺が先を歩きドアにへばりつく。クキとシャーリーンもその反対側に座って、中の様子を伺っている。


 聴覚強化。


 中の会話を聞いた。


「なんだと? 軍用ゴムボートだけだった?」


「らしいぞ。きっと漂流して来たんだろうって言ってる」


「なんだって、軍用のデカいゴムボートが漂流してくんだよ」


「俺が知るわけねえだろ」


 どうやら俺達が乗って来たゴムボートの事を言っているらしい。そしてシャーリーンがある部分を指さした。こっちには向いていないが、監視カメラが設置してある。クキが銃を構えるが、俺はそれを制して剣技を繰り出した。


「刺突閃」


 カメラの付け根のワイヤーを切り、二人に目配せをして奥に進んだ。二人は指示をされなくても、どう動いたらいいのかが分かっている。下に降りる階段が出て来たので、三人はそのまま階段を下りた。


「下に人の気配がある。やはり人間の居住区らしい」


「なら、さっさとやっちまおう」


「ああ」

 

 俺達が武器を構えて最初の部屋を開けると、そこには寝転がってスマートフォンを触っている奴と、食い物を頬張っている奴がいた。俺達を見てきょとんとしており、シャーリーンの手に持った銃を見て慌てて壁の電話を取ろうとした。


 シュッ! パス!


 俺とクキの攻撃で二人は絶命する。そしてクキがシャーリーンに言った。


「躊躇しなくていいぞ。ここは完全なアウェイで、俺達は危険な状態にあるんだからな。ヒカルがいるとはいえ、自分の身は自分で守る事も考えた方が良い」


「ふふっ。躊躇はしていません。ただあなた方の攻撃が、私の意識より速かっただけです」


「よし」


 そして俺達は、居住区の蹂躙を始めるのだった。

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