表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
473/611

第473話 謎の多い施設

 アフリカで見つけた新型の試験体イーライを追跡し、俺達はブラジルでファーマー社の軍事施設らしき場所を発見した。シャーリーンの発信機は既に見破られていて、その信号は消えてしまっている。


 間違いなくここにいるはず。そして既に、敵は何らかの組織が接触して来た事を認識している。


 数百メートルの距離から基地を見ているが、認識阻害と隠形を施した俺に気づいたかどうか。今までの経験上は、それは考えられなかった。俺がやるべき事は、ここが間違いなくファーマー社の軍事施設だと確定させる事。外から見ては何の施設か分からないが、試験体が入った以上はファーマー社関連で間違いないはずだ。


「いくか」


 高い防壁が見えてくるが俺は止まる。


 なんだ?


 これ以上近づけば恐らく何かある。俺は小石を拾い上げて、親指で弾きだす。

 

 ピシっ!


 バシュ!


 石が消滅した。


 なるほど。


 それは、いつぞやの研究所で見たレーザーという奴だった。そして俺はその場所を離れた。


 スマートフォンに話しかける。


「ヘイオオモリ」


「どうしました?」


「レーザーだ。施設はレーザーで守られている」


「マジですか。僕らが行ったらヤバかったですね」


「絶対に近づくな」


「わかりました。もうファーマー社の施設と決定していいんじゃないですか? 試験体も入ったし」


「もしかして、で攻撃するわけにはイカンだろう?」


「まあそうですけど」


「俺が進入するが、スマートフォンは持ってて大丈夫か?」


「あ。電波が感知されるかもしれませんね」


「なら、置いて行く。しばらくは連絡が取れん」


「わかりました。ファーマー社だと分かり次第やっちゃってください」


「了解だ」


 俺は一旦、基地から距離をとった。離れた場所の木の上にスマートフォンを置き木に傷をつける。


「よし」


 基地まで数百メートル。


「結界。金剛。脚力強化、筋力強化、敏捷性強化」


 体が光り輝いて行く。バシュッ!


 土が大きくえぐれるほど踏み込んで、施設に向かって走り出す。最高の速度に達した時、一気に地面を踏みこんで空に舞った。基地の上空三百メートルまで上がり、俺は真下に施設を見下ろす。


 軍用のヘリコプター、戦車が動き出しているのが見える。


 警戒している。やはりシャーリーンの追跡の機械に気が付いたか。


 基地は既に臨戦態勢に入っているようだった。そのまま頭を真っすぐにして、基地に向かって急降下していく。あっという間に地面が近づいて来て、くるりと回って足で着地する。


 ドン!


 コンクリートが割れてしまい、大きな音をたててしまった。俺は縮地で近くの建物の壁に張り付き、迂回して周りをまわっていく。俺が落ちた場所に人が集まる気配がしているが、それを確認する事は無かった。


 どこにも無いな…。


 何処にもファーマー社のマークが無い。もしかするとカモフラージュの為かもしれないが。


 ヘリコプターが空を飛び回り始め、基地内が慌ただしく動き出した。


 なんだ? この建物は、なかなか入り口が見えてこないし窓も無い。


 その建物は日本で見た野球ドームぐらいの大きさがあり、何らかの格納庫のようだが窓も入り口も無かった。だが間違いなく内部におかしな気配はしている。俺の気配感知をすり抜けることは出来ないはずだが、どうやらこの建物の壁は特殊な素材で出来ているらしい。


 シュッ。


 その建物の屋根に乗ってみるが、屋根の上にも窓や入り口らしいところは見当たらない。


 これは何だ? 何の建物だ?


 ヘリコプターが戻って来たのでその施設を飛び降りた。地上ではまだ、俺の落下地点で騒いでいる。


 これ、斬ってみるか。


「断鋼裂斬」


 その特殊な壁を斬る。


 随分、分厚いな。切った場所を押し込んで内部に侵入すると、そこはただ円形の広い建物だった。何故入り口が無いのかは分からないが、その円形の中央付近に何かの設備がある。


 人もいないのか。


 俺がそこに行くと、どうやらガラス張りの部屋の中に、地下に続く階段があるようだ。


「乱波斬」


 ガラスが崩れ落ちた。


 どこもかしこも分厚くて厳重だ。


 カラスを飛び越えて螺旋階段を下りていくと、地下三階が底だった。


 だが、その床は鉄板で出来ているようだ。


 ゴン! 


 仕込み杖で叩いてみると、どうやら分厚い鉄の下に空洞があるのが分かる。


 これは…デカい扉か?


 この床は恐らく両側に開く扉だ。俺はその一か所を斬る。


「断鋼裂斬」


 開いた穴から飛び降りる。するとそこから地下深くに続くエレベーターのような物があった。俺はそのエレベーターの扉を開いて底を見る。だいぶ深いようだが、人が使っているような気配はない。エレベーターの中身が無いのだ。


 スッ。


 俺はその中に飛び降りた。どうやらこのエレベータはワイヤーで吊る構造ではなく、両側のローラーで動くもののようだ。


 俺は暗闇の中にただ落下していく。この穴はかなり深く、およそ百メートル潜る。ようやく底について、周りを見渡すがオレンジの非常灯が付いているだけ。そこから更に下り坂になっている。


 下ると、やたらと頑丈そうな扉が見えて来る。それも断鋼裂斬で破壊し更に奥へ進んで行く。


 随分堅牢に守っている物があるんだな。


 そしてその先にまた扉があり、破壊して先に進むと極端に温度が低くなった。冷気がその場所を支配しており、辺りが凍り付いているように見える。


 だが直ぐに分かった。


「なるほど…」


 俺の気配感知に薄っすらと伝わってくるのは、この中のどこかに生き物じゃない物が凍らされているという事だ。


 なんだ?


 地下百メートルより深い場所に突然広い空間が現れた。その部屋の中央に円柱の金属の塊がある。


 気配は円柱の中。この基地が守っている物はこれか。秘密基地ではなくコイツの保管庫という訳だ。


 だがその時、急に気配がしてきた。俺が下りて来た場所を通って、ここに誰がが向かって来ている。俺はすぐさま、機械の後ろに身を隠し気配感知を張り巡らせた。


 なるほど。


 この気配は…ゾンビ化兵と…イーライだ。


 どうやら奴の方からここに向かってきているらしい。地上の建物の破壊を見つけたのかもしれない。俺はただ気配を消して、その場所で静かに待つのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ