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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第444話 殺し屋組織への偽装工作

 このあたりには沢山の高層ビルがあるが、この塔はそのどれよりも遥かに高くそびえ立っている。


 監視者の目的が何か分からないが、明らかにジョーイを的にしている事が分かる。遠距離から見ているから別人と気づかないのか、俺がスマートフォンを持っているからついて来ているのか分からない。


 そんな事よりも…この塔には入り口が無かった。


 どういうことだ?


 そして俺は、オオモリのスマートフォンを取って言った。


「ヘイオオモリ」


「はいはい。なんですか?」


「ここに高くそびえる塔があるんだが、入り口が無い」


「あ、ブルジュ・ハリファに行ったんですね」


「高い塔だ」


「ちょっと待ってください」


「ああ」


 するとオオモリが言う。


「そこからは入れないようです。先ほどの駐車場のある場所に戻ってください」


「戻るのか? それだとお前達がいる」


「僕達はもういません」


「そうか。戻ったらまた連絡する」


「はい」


 今来た道を逆戻りして、再び先ほどの所へと戻って来た。


「ヘイオオモリ」


「はいはい」


「地下に来たぞ」


「では経路を流します。画面に点滅しているのがヒカルさんです。まずは地図の通りに進みます」


「わかった。ならまたかける」


「はい」


 俺は少しの間、その地下で監視者を待っていた。地下では普通に人が行き来していて、時おり俺をチラリと見るやつがいたが、直ぐに目を逸らして通り過ぎて行ってしまう。すると監視者が地下に入って来た気配がしたので、俺は視認されるまでそこで待つことにした。


 来たか。


 そいつが俺の姿を見たのを確認し、そのまま入り口から中に入っていく。建物の中にも結構人がいて、俺は市民の間を抜けて歩いて行く。認識阻害や気配遮断を使ってしまえば確実に俺を見失うので、俺はあえて気を強く発して歩いていた。


 人ごみの中を進んで行くと、そいつは一定の距離でついて来る。


 それなりに訓練をしているのか。


 俺は歩きながらスマホを出す。


「ヘイオオモリ」


「塔の上に登れそうな所に到着しましたね」


「そうだ」


「ハッキングで予約を取ってあります。窓口に行ってチケットを買ってください」


「わかった」


 窓口らしきところに行って俺が携帯をかざすと、店の女が俺にチケットを渡して来た。既に決済は終わっているらしく、先に進んでいいと言われる。先に進むと、広いフロアに多くの人達がいた。俺はそれに並び、到着したエレベーターに乗り込む。どうやら乗れる人数が決まっているのか、追跡者は一緒に乗っては来ないようだ。


 各階層で次々に人が降りていき、百五十四階の最後の階層のランプがついた。降りて周辺を見渡すと、そこはラウンジになっているようだ。俺はそのまま進んで、入り口にいる店員に話しかける前にスマートフォンに言う。


「ヘイオオモリ」


「はいはい」


「ラウンジに来た」


「会計はスマホで出来ます。適当に頼んでもらっていいですよ」


「わかった」


 そして俺がラウンジに入ると店員が声をかけて来て、先に会計を済ませるように言われる。スマートフォンで支払うと告げると、何かの機械にかざすように言われた。それで会計が済んだようで、俺はそのまま連れられて席に座らせられる。とりあえずコーヒーと告げると、少ししてコーヒーが運ばれてきて何やら壁際を指して言っている。どうやら食べ物は、あそこから自由に取って良いようだ。


 見晴らしのいい景色を見てコーヒーを飲んでいると、監視者は来た。


 俺はすぐに立ち上がってラウンジを後にする。そのまま部屋を周りこんでいくと、一般人が入れないような場所に出たので、柵をひょいっと飛び越えた。そして鍵のかかった扉を力でこじ開けると、そこには階段があった。俺はその階段を更に上に登っていく。


 どうか?


 少し待っていると、追跡者が俺が壊したドアを入って来た。


 よし。


 そのまま上に登っていくが、追跡者は諦めずについて来るようだ。すると二百九階で階段が終わり、その先に今までとは違う階段が見えた。登っていくと、煙突のような構造と中にハシゴが見えて来る。


 俺はそのままハシゴをよじ登り、てっぺんの蓋まで辿り着く。そのまま力任せに開くと、扉がちぎれて外に出れるようになった。外に出ると、更に上に登るハシゴがあり俺はそれをよじ登っていく。


 ここがてっぺんか、なかなかに絶景だな。


 俺はそこで、ジョーイのスマートフォンの電源を入れ足元に置く。


 下からは追跡者が登ってきているようだが、俺はそのまま無造作にそこから飛び降りた。俺は追跡者のすぐそばを落下し、そのまま地上に向かって落ちていく。サングラス越しに見ると、目玉が飛び出るほど俺をみていた。銃を持っていたので、そこでジョーイを殺すつもりだったのかもしれない。


 何度かビルの出っ張りに着地しながら、トントンと下に向かって落ちていく。あっという間に地上に降りて、俺は縮地で姿を消したのだった。


「ヘイオオモリ」


「はいはい。どうなりました」


「一番高い塔のてっぺんに、ジョーイのスマートフォンを置いて来た」


「えっ! てっぺんって! あの先っぽまで行ったんですか!」


「ああ。恐らく追跡者は俺が死んだと思ってるだろう」


「なんでです?」


「てっぺんから飛び降りたからな」


「えええ! ブルジュ・ハリファのてっぺんから飛び降りた?」


 すると電話の向こうで、皆が声をそろえていた。


「「「「「「「「ええええええええ」」」」」」」」」


「なかなかに絶景だったぞ」


「は、はは。皆腰抜かしてますよ」


「マネはしない方がいいかもしれん」


「誰もしないと思います」


「ジョーイを殺しに来たようだった」


「やっぱりそうですか」


「まずは俺の仕事は終わりだ」


「こっちから行こうと思ってたんですが、殺し屋がいるんじゃ行けないですね」


「どうする」


「昼間のファーストフードに来てくださいだそうです」


「わかった」


 そして俺は走り出した。ひとまず殺し屋組織からの時間稼ぎはこれで出来ただろう。


 俺が昼間の店に到着すると、やたらと長い車が止まっていてその脇にタケルが立っていた。


「また随分長い車だな」


「リムジンだよ。中に乗ってみな! すげえぞ」


 タケルに言われて俺が車に乗り込むと、そこはまるで部屋の中のようだった。皆が俺の顔を見てホッとしたような表情をしている。


 そして俺はオオモリに言った。


「助かった」


「お安い御用です。それよりも無事でよかったですよ」


「これで多少の時間稼ぎは出来ただろう」


 そして下着姿で縛られているジョーイに向かって言った。


「お前は命を狙われているようだぞ」


「そうですか…。リモートで電話を繋がれた段階で、ダメかとは思っていましたが」


「たぶん。死んだと思っているだろうな」


「どういうことです?」


「俺が偽装した」


「そ、そうなんですね」


 リムジンは滑り出すようにして、再びドバイの町を走り始めた。


 そして俺が言う。


「クキ、そいつはどうするんだ?」


 するとクキが答えた。


「死んだように偽装してくれたんだよな?」


「そうだ」


「なら決まりだ。ドン・サルバトーレに引き渡す」


「そうか…依頼したのはサルバトーレだからな。それが良いだろう」


 するとジョーイが慌てて言う。


「まってくれ! そ、それだけは!」


「残念だが、それで決まりだ」


「そんなぁぁ!」


 ジョーイはガクリと項垂れた。後はサルバトーレの判断だ。依頼したのはサルバトーレなのだから、彼にコイツの処遇を決める権利がある。この世界のマフィアが、裏切者に対してどんなことをするのかは知らないが、これでサルバトーレもスッキリするだろう。


 クキはすぐにサルバトーレに連絡をするのだった。

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