表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
423/616

第423話 ローマの名所に潜む悪の影

 法王達がファーマー社のデータを確認している間に、俺達が平行してファーマー社のゾンビ隊を探し出す事にした。そこでタケルがジュリオに言う。


「博士と爺さんの他に仲間もおいて行く。わりいけど、あんたらで守ってくんねえかな?」


「俺達で役に立つのであれば」


「危なかったらヘリで逃げてもいいんだが、あのおっさんが逃げたくねえって言うんだよ」


「おまっ! おっさんて! あのお方は法王だぞ!」


「ホーローだかユーフォーだか知らねえが、驚異の前には無力だし簡単に死ぬ。いざとなったら首根っこ掴んで連れてけよ」


「わかった」


「あんたの親父は法王の言う事聞いちまうからな、そいつを無視しても無理やり連れてけよ」


「約束する」


「誰一人死なせねえで欲しいんだ」


「お前…いい奴なんだな」


「ファーマー社のせいで死ぬっつーのがムカつくんだよ! 死ぬなら寿命で死んでくれって話だ、俺も死ぬなら寿命かサーキットでって決めてんだ」


 するとジュリオが言う。


「サーキット? やっぱ…あんた。何か見た事あると思ったら、日本のタケル・オカダか?」


「なんだ、俺のこと知ってんのか?」


「バイクレースが好きなんだよ。ははっ…こんなところで会うとは思いもしなかったぜ」


「おっ! バイク好きなのかい? 趣味が合いそうだな」


「峠じゃ負けなしだったって話は有名だ。デビューからずっと表彰台だしな、話題のルーキーレーサーにこんなとこで会えるなんてよ! あとでサインしてくれよ!」


「おりゃ、字が下手だぜ」


「なんでもいい!」


「わーったよ。んじゃみんなをよろしく頼むぜ」


「任せておけ!」


 話が終わってタケルが俺の所に来る。そこで俺がタケルに言った。


「有名人なんだな」


「ってほどじゃねえよ。俺もまだこれからって時に、ゾンビ騒ぎになっちまったからな。そんでも、知ってくれている人がいるっつーのはありがたいねえ」


 俺達がクキの所に行くと、ミナミとクロサキに小さな声で話をしているところだった。


「南と黒崎。あんたらをここに置いていく理由は、万が一の場合を想定してだ。最優先は大森、愛菜、美桜、翼、アビゲイルを守れ。念のために言っておくが、優先順位は味方のみだ」


「わかったわ。とっととファーマー社を潰して来て」

「承知しております」


 そして今度は、オオモリが俺達にスマートフォンを出せという。俺達が画面を並べると、オオモリは説明をしながらデータを送って来た。


「SNSやWEB監視カメラ、警察の無線と監視衛星からの情報をAIで精査しました。ファーマー社らしき痕跡は、こことこことここで確認されています」


 それを見てクキが言う。


「トレビの泉周辺、真実の口周辺、コロッセオ周辺か」


「はい。何故か奴らは観光名所で目撃されてます」


「何故もへったくれもない。人が多く集まるからだろう」


「そうだと思います。ですのでこの地区をしらみつぶしにしてください。情報のデータは逐一更新しますので、情況に沿って確認し判断していただけるとありがたいです」


「了解だ。じゃあ行こう」


 俺とタケルが頷く。俺が二人の腕を掴んで、そのまま最上階の窓から飛び降りた。とにかく時間が惜しいので、いちいち遠回りする必要はない。


「流石に慣れたぜ」

「合理的だしな」


 そして俺達はそのままバチカンの東側に向かって走る。まだ内部にゾンビが侵入してきている形跡はなく、すぐに壁を乗り越えて外に出た。タケルが道路に停めてあった、車の窓ガラスを躊躇なく割る。


 キュイッキュイッキュイ! と警報が鳴るが、すぐに乗り込んで何かをし音を停めた。だがその音につられて数体のゾンビがこちらに向かってきている。それにクキがスナイパーライフルを向けるが、俺はそれを手で阻止して剣を振るった。


「刺突閃」


 数体のゾンビがその場に倒れた。


 チュチュン! ブゥゥーーーン!


「まったく、あんちゃんのそれは、いつ見てもお見事だよ」


「もしかしたら俺、これで食っていけるかもな?」


「馬鹿。まともな道で生きていけ」


「冗談だよ」


 俺達は車に乗り込み、石畳の狭い道を走り始める。俺はすぐに窓から身を乗り出して、前方をふらふら歩いているゾンビを始末し始めた。


「ヒカル! 落ちんなよ!」


「誰に向かって言っている」


 タケルが急ハンドルをきるが、もちろん俺が振り落とされる事はない。クキがオオモリのシステムを見ながら、タケルに指示を出し俺達は目的の場所についた。すばらしい彫像に囲まれた綺麗な水をたたえた場所だが、ゾンビだらけになっている。


「ひでえありさまだな。これがトレビの泉なんてよ」


 俺はそのまま窓から車を降りた。


「飛空円斬」


 一気に見える場所にいるゾンビを切り倒す。泉の綺麗な水に入っていたゾンビも斬れ、水を血の色で汚してしまった。


「こんな風光明媚な所でも、ゾンビが大量発生するとどうしようもないな」


 タケルが言う。


「本当なら由美とロマンティックなデートしたい所なのによ」


「で、どうだヒカル?」


「ゾンビ化人間の気配はない。だが今まで通って来た道でもここでも、室内に逃げ込んでる人達が結構いるようだ」


「むしろそのまま、軍が来るまでは出てこない方が良いんだがな…」


 クキが言うと、タケルがスマートフォンを取り出して通話し始める。


「大森!」


「どうしました?」


「ヒカルの気配感知で調べたらよ、どうやら町には部屋に立てこもって無事な人が結構いるらしいんだ。九鬼さんが言うにはイタリア軍が来るまでは、閉じこもっていた方が良いらしいぜ」


「なるほどです」


「お前、どうにかしろ」


「…わかりました。どうにかします」


「頼んだぜ」


「はい」


 クキが笑う。


「またお前はそう言う無茶ぶりを」


「無茶じゃねえ。アイツなら出来るって確信してるんだぜ、おりゃあよ」


「まあ…間違いなく出来るだろうな」


「だろ?」


 そして俺が言う。


「次の場所は?」


「迂回して、真実の口に向かう」


「よし。車を出せ」


 そして俺達は再びゾンビを切り落としながら、都市の中を走り続けた。


「くっそお。ローマの休日は俺の好きな映画なんだけどなあ、なんでゾンビだらけなんだよ」


 俺が処分し、かなりゾンビの数は減っていると思うがそれでも出て来る。ぞのゾンビを見てタケルが悔しそうに言っているのだ。


 だがクキが言う。


「次に由美と来る頃までに、平和を取り戻せばいいだけだ。その為に俺達は危険な思いをしてこうしている。そのときが来たら、お前お得意のバイクで町を連れまわしてやれ」


「そうするよ九鬼さん」


 そして俺が二人に言う。


「この先の建物の中だ。あの建物の中にゾンビ化人間と人間の反応がある」


「教会の中か?」


「そうだ」


 するとクキが言う。


「既にファーマー社の情報は不要だ。生け捕りの必要もない」


「んじゃ、心置きなくぶちのめして良いつうこったな!」


「そういう事だ」


 俺達は車を乗り捨て、距離を置いた場所から建物を監視する。


「ベルリンの時の教訓を生かせば、恐らく二階の奥に管理者がいる。先にそいつらをやろう」


「上から進入か?」


「あの塔の最上階にゾンビ兵の監視がいる」


 その建物には七階建てほどの高さの塔があり、その最上階に二人のゾンビ化兵がいた。俺が言うとクキが、スコープを覗き込む。そしてスナイパーライフルの引き金に指をかけた。


「俺に任せろ」


 パスッ! パスッ!


「よし」


 クキが一瞬で見張り二人を殺したらしい。弾丸にはゾンビ破壊薬が仕込まれているので復活は無い。俺の気配感知にも反応が無くなった。


「行くぞ」


 すぐに走り出し、俺は二人の首根っこを掴んで二階の開いている窓に飛んだ。


「刺突閃 二連」


 廊下に着地してすぐ二人のゾンビ化人間を殺し、すぐに部屋の扉を破って中に入った。


「な、なんだ貴様ら!」

「何処から来たの?」


 パスパス!


 クキが眉間を撃ちぬいていた。そのほかに四人のゾンビ化兵がいたが、俺が四人とも切り落としている。


「これで頭は取った」


「残りは?」


「二階の反対側通路にゾンビ化兵二人。一階に四人のゾンビ化兵と人間が六人」


「とっととやっちまおう」


 タケルの言葉に俺達が頷いた。


 すぐに反対側の入り口を開いて、警戒していた二人のゾンビ化兵を殺した。そしてそのまま階段を下りて一階に行き、ゾンビ化兵が気づく前に俺が仕留める。


「屍人刺突閃 二連」


 死ぬのを確認する事もせずに、一階の部屋の扉を破った。するとベルリンの時と同じように、いろんな機器を持ち込んだ奴らが監視していた。


 タケルが叫ぶ。


「はいはいー。悪さはそこまでにしてもらおうかな」


「な、なんだ!」


 俺はすぐに剣技を放つ。


「推撃」


 ドチャ!


 六人と機器は一気にまとめて壁にぶつかって潰れた。その音を聞きつけたゾンビ化兵二人が飛び込んで来たが、クキが眉間を撃ちぬいていた。


「終わりだ」


「次は実行部隊だな」


 だがタケルが俺達に言う。


「ちょっと真実の口を見てって良いか?」


「好きにしろ」


 タケルについて館内をうろつくと、壁に人の顔があった。


「これを由美と見に来てえんだよ」


「なるほどな」


「あいつらは、真実の口がある教会を占領して一体なにしてんだ」


「あんちゃんの言う通り。奴らがこの口に手を入れたら、全員嚙み切られるだろうな」


「ま、ここに手を入れる前に、ヒカルが斬るだろうけどよ」


「違いない」


 俺達はその教会を出て、すぐにタケルが車を盗む。


 それを見たクキが苦笑いしていった。


「あのなあタケル…。お前も、あの口には手を入れない方が良いと思うぞ」


「分かってねえなあ九鬼さん。こりゃ良い事なの! 世界を救う戦いなんだぜ? 神さんだって分かってくれてるって」


「だが法王をおっさん呼ばわりする車泥棒は、手が抜けなくなるかもしれん」


「知らねえよ。おりゃ由美との真実の愛の為にやるぜ」


「そうか…」


 そして俺達が乗る車は、次の目標であるコロッセオに向かうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ