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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
412/616

第412話 ファーマ―社の悪行を世界にばらす大賢者

 突然飛び出して来た試験体を見ても、人々はなにが起きているのか分からないでいるようだった。だが、ザ・ベールによって国連の敷地に集められたのは、インターネットやテレビ局の人間達。ハンジが言うには、彼らはこういった事件が起きると逃げずに撮影するらしい。 


 そして想定通りに一斉にカメラを向け始め、試験体とゾンビ化兵の戦いを撮影し始めた。こんなバケモノが出てきたら逃げるものだと思っていたが、ハンジが言ったとおり撮影を続けている。こともあろうに一度は逃げた一般市民や観光客までが、戻りスマートフォンを向けて撮影し始めた。


 その見物人の中に、俺と仲間達が紛れている。


 クキがわざと大きな声で言った。


「おいおい! あの軍服に記されたマークはファーマー社のものじゃないか? アイツらはいったい何をやっているというのだ!」


 やたらとハキハキしたクキの声に、ミオがまた大きな声で答える。


「本当だあ、何処から流れた情報か知らないけど、やっぱりファーマー社からバケモノが逃げ出したって言うのは本当だったわ!」


 更にクロサキが重ねて大きな声で言う。


「ファーマー社が、あんな化物を開発していたなんて信じられない! よりにもよって国連の本部を襲うなんて信じられない! 何を考えているのか信じられない!」


 クロサキは、ちょっと下手かもしれない。


 そして最後…本気のエイブラハムが言う。


「連中、本当にあんなバケモノをこさえとったのか。あれで一体何をするつもりなんじゃ」


 その声を聞いたテレビの奴らが、それこそ本気で話し始めた。


「研究所で大爆発があったと聞いて駆けつけたが、ありゃなんだ!」

「爆発事故でバケモノが逃げたってのは本当だったのか」

「うちの社もそうだよ! ガセだと思ったら、とんだスクープだ!」

「カメラ! 撮り逃すなよ!」


 そして一般市民達もざわつく。


「怪物がいるって…デマじゃないんだ…。しかもファーマー社?」

「流石にあんなのを見せつけられたら信じざるを得ないよな」

「なんで熊の頭が人間…。遺伝子手術ってデマじゃなかったのかよ」


  それを聞いてマナが言う。


「そうそう。ベルリンでもあのバケモノが暴れたらしいわ」


 ツバサが答える。


「生きた人間を使って人体実験してるんだって。それじゃ日本の二の舞になるわ!」


 すると、またテレビの連中や市民が言う。


「SNSでも、わんさかアップされてたけど、日本の情報もあっという間に見なくなったな」

「そういやそうだったな。それにベルリンの情報は、デマ動画だとか」

「まさかベルリンも日本もファーマー社がやったていうのか!」


 そして、マナが言う。


「インターネットの会社やらメディアは、金の力と圧力でファーマー社のウイルス情報を封印するように言われるらしい! まさかこの情報も消えちゃうの?」


 するとテレビの連中が言った。


「会社はどうあれ、こんなスクープ逃したら恥だ!」

「圧力がなんだ! 報道の力を見せてやれ!」

「絶対に伸びるぞ! すぐにLIVEで繋げろ!」


 火がついて来た。


 そしてぽつりとオオモリが独り言を言う。


「今度は僕が、消させませんよ…」


 するとようやくヘリコプターのライトが、試験体とゾンビ化人間を捉え始めた。その事で正体を見られては困るファーマー社のゾンビ化人間が逃げ出そうとする。


 俺は暗がりに身を潜めて剣技を繰り出した。


「刺突閃、十連」


 十体のゾンビ化人間の片足を粉砕する。そいつらを見捨てる訳にもいかず、他の奴らが引きずって行こうとする。だがもちろん試験体はそれを待たない。


「がぎゅるるるるるっぅぅぅl!」


 試験体がゾンビ化人間を踏み潰し始めるが…奴らはゾンビ化人間である。死ぬに死ねずに、這いまわりながら逃げている。それを見届けて俺が何食わぬ顔でクロサキの所に行く。


「ヒカルさん。見てくださいこれを」


 そう言ってクロサキが俺に画面を見せて来た。するとヘリコプターから映し出された、試験体とゾンビ化人間の戦いの様子が映し出された。ゾンビ化人間達は既に銃弾が底を尽きたようで、ナイフを手に飛びかかっている。試験体はそれを振り払うように激しく暴れていた。


「これは?」


「あれを見てください」


 視線の先ではマナが通信を繋げ、オオモリがパソコンを触っていた。


「アイツらがやってるのか?」


「ハッキングして、LIVE映像を次々にサーバーに転送しているみたいです。ファーマー社も国もこれには追い付けないみたいですよ」


「まったく…アイツはバケモノだな」


「いや…まあ…ヒカルさんに言われるとは思わないでしょうけどね」


 周りで撮影しているテレビや市民の撮影した映像を、オオモリが世界中に発信しているのだった

 

 すると俺達のイヤーカフに連絡が入る。


《これは愉快だ! どのチャンネルをつけてもネットもSNSも、ファーマー社の事だらけ! こちらでも、素晴らしい演劇が見れてます! 素晴らしい! 本当に素晴らしい方々だ! あなた方は!》


 ハンジが興奮気味に全員に伝えて来たのだった。


 すぐに俺とクロサキがオオモリの所に行く。


「オオモリ! どんな感じだ?」


「今、世界の国家やファーマー社やネット会社を相手に、サイバー戦をやっているところです。とにかく国や企業はこの情報を隠蔽したいようですが、僕のAIウイルスに対抗する術は世界のどこにもありません。止めれるなら止めて見ろって感じですよ。ひっひっひっひっ!」


「お前…」


 そばにいるマナとクロサキも青い顔をしてオオモリに言った。


「あんたね…怖いんだけど」

「国際犯罪を目の前にして逮捕しないのですから、私も共犯。もう公安じゃありませんね」


 だが俺は焚きつけた。


「ふふっ。オオモリ! 思う存分暴れろ! やれるだけやってやれ! 徹底的にな!」


「イエッサー!」


 オオモリが物凄いスピードでキーボードを弾いている。それを見てマナが言う。


「ヒカル。大森君って体術はまるでダメだけど、レベルは上がっているのよね? こんな人って前の世界には居た?」


「いた。こういうやつは賢者と呼ばれるんだ。世界を相手取っているのだから、オオモリは大賢者だ」


「大賢者…」


「大賢者は怒らせると怖いと相場が決まっている。俺がいたパーティーも、よくめちゃくちゃ怒られていたからな」


「ヒカルでも怖いの?」


「そりゃそうだ。大賢者様は世界を知り尽くしているのだからな」


「へえ…」


 そんな事を話していると、反対側の入り口から次々に戦闘車両が飛び込んで来た。テレビ局や市民達がそれを見て驚いている。


「な、なんだ! 装甲車だ!」

「ファーマー社のマークが入ってるな!」

「あのバケモノを制圧に来たんだ!」

「よし! それも撮影しろ! 撮り逃すなよ!」


 続々と突入して来るファーマー社の戦闘車両。市民を前にずらりと並び拡声器で告げた。


「集まっている者は、速やかに撤収せよ! この場はファーマー社が管理する。集まっている者はすぐに退去せよ! くりかえす速やかに撤収せよ!」


 するとそれに市民達が言う。


「隠蔽だ!」

「これを見られるわけにはいかないんだろう!」

「それよりもさっさとバケモノを始末してみろ!」


「イカン!」


 次の瞬間ファーマー社の戦闘車両から降りて来た兵士達が、無差別にテレビ局の連中や市民に発砲し始めるのだった。

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