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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第411話 主演を舞台に運ぶ

 地上では銃声が鳴り響いており、俺達が潜んでいる階段の踊り場まではっきり聞こえてくる。俺は地上に上がるタイミングを見計らっており、気配を読みながら皆に伝えた。 


「よし。上がるぞ」


 俺が先に進み、ビルの一階に上がって壁際から騒ぎの起きている方角を見ると、そこでは試験体に向かって銃を撃ち込んでいる奴らがいた。全滅していないのは、ゾンビ化兵が混ざっているからだろう。誰もこちらに意識が向いておらず、今なら仲間を脱出させられる。


「いまだ」


 俺が見張り、仲間達が騒ぎの反対方向へと走って行く。皆の後ろをついて行き、行き止まりのガラスに向かって剣技を繰り出した。


「真空乱斬」


 パキッ! パラパラパラパラ! とガラスが崩れ落ちた。


「みんな壁の後ろに隠れろ!」


 皆が壁の後ろに隠れたので、開いた穴から更に剣技を繰り出した。


「剛龍爆雷斬」


 俺の剣から小さな火の玉が飛び出し、広い敷地に飛び出して大爆発を起こした。


 バッシャアアアアアン!


 全面のガラスが割れて飛び散り、戦っている兵士達と試験体に突き刺さっていく。突然の爆発に、ゾンビ化兵らがパニックになっているところで皆に告げた。


「いけ! 国連で落ち合おう」


 皆が頷き、ミオが俺に言った。


「ヒカルも…気を付けてね」


 俺はニヤリと笑って親指を突き立てる。タケルがいつもやっている通りに。


 そして仲間達は爆発の煙の中に飛び込んで行った。


 よし。俺は俺の仕事に取り掛かるとしよう。


 回れ右をして、試験体と戦っているゾンビ兵達の元へと走っていく。


「結界。金剛」


 身体強化を施しつつ近づいて行くと、俺に気が付いた兵士が叫んだ。


「誰だ!」

「止まれ!」


 俺はあえて両手を上げて近づいて行く。


「と、止まれ!」


 バシィィ!


 俺に銃を向けていた奴が、突然試験体の触手に吹き飛ばされた。とにかくファーマー社は試験体を外に出したくないらしく、ここで必死に食い止めているようだ。必死に攪乱を続けている。


 次の瞬間。入り口の方から戦闘車両が飛び込んで来る。


 バリン! ガリガリガリガリ!


 キュィィィィィィィィィィィ!

 ガガガガガガガガガガガガガガ!


 車体の上の筒のようなものが回転し、連続的に銃弾が試験体に打ち込まれた。体を破損させながらも、試験体が逃げ回り始める。しかもそこらへんにいるゾンビ化兵を、次々につかみ上げて戦闘車両に放り投げていた。空中でその射線に入ってしまったゾンビ化兵は、腕や足を四散させて転がる。それでももぞもぞと動いているので、死にはしていないようだ。すると戦闘車両の脇に筒を持った奴らが現れた。


 バズゥン! バズゥン! バズゥン! バズゥン!


 射出された弾は大爆発を起こすが、試験体に致命傷を与える事が出来ないでいる。


 そこで俺は試験体ではなく、戦闘車両と筒を持った兵士に向かって剣技を振った。


「冥王斬!」


 車両ごと全てが両断され、試験体を攻撃する者が居なくなる。隊列を崩してしまったゾンビ化兵を次々に襲っていく試験体。


「さて。行こうか」


 俺は正面玄関に向かって剣を振るった。


「大地裂斬!」


 俺の目の前から外に向かって、大きく深く地面が割れて行く。車両も兵士もその割れ目に落ちて行き、このガラス張りの研究所も内側に崩れて地中に沈んでいく。


 俺は試験体に向けて刺突閃を放った。小さな穴を穿つだけだが、その事でゾンビ化兵よりも俺の方に意識が向いたようだ。崩壊していく建物の中で俺は試験体に叫んだ。


「来い!」


「がぐるぅぅぅ!」


 俺に飛びかかって来たので、崩れ落ちてくる瓦礫を縫って割れた大地の底へと飛び降りていく。すると試験体と共に数体のゾンビ化兵も落ちて来た。どうやら何が何でも、試験体を外に出してしまう訳にはいかないらしく、必死に銃を撃って意識をひきつけていた。


「飛空円斬」


 見えているゾンビ化兵の足を斬り落とし、その追撃を遅らせる。試験体が俺に突進して来たので更に剣技を振るった。


「推撃」


 ズン!


 見えない剣撃に半分潰されながら飛んで行く。試験体が復活するのを待ちつつ、割れた大地の底を走り始め行き止まりに到達した。


「来い!」


 すると土煙の中から試験体が出て来た。奥から復活したゾンビ化兵もついて来ている気配がする。怒っているのか、試験体からは憎悪のようなオーラが上がっていた。


「良い面構えするじゃないか」


 そうして俺は試験体を引き連れつつ地上に出た。既に陽が落ちてあたりが暗くなっている。雑木林をゆっくりと歩き、ついて来る試験体とゾンビ兵を引き連れていく。そして俺は国連ビルのある敷地に足を踏み入れるのだった。


 するとようやく、ハンジの声が耳に入って来た。イヤーカフの無線が繋がる所まで来たらしい。


「こちらベール。アルファ、プレゼントはどうだ?」


「運んで来た。準備は出来ているか?」


「既に役者はそろっている」


「わかった」


「成功を祈る。オーバー」


 舞台の準備はもう出来ているらしい。予定外の特大のおまけを引き連れて、俺はそこにお届け物をするだけ。すると先に人の気配がしてきた。どうやらザ・ベールはきちんと仕事をしたらしい。後ろの試験体が俺を見失わないように、刺突閃を打ち込んで引き付け続ける。


「雑魚は飽きたろう? 俺が階層ボスだ。早く喰らいに来い」


「がぎゅるるるる! ふしゅるるるる!」


 試験体は毒々しい叫び声をあげながら、俺に飛びかかって来る。俺がギリギリのところで走り出すと試験体がついて来た。空中にはヘリコプターが飛び、地上を照らしているようだ。


「舞台が見えた」


 視線の先には大勢の人が集まっており、俺はそこ目指して走り出す。


 そこで俺は突然、縮地で姿を消した。


 目標を失った試験体が止まる。するとゾンビ化兵が追い付いて来て、試験体に銃を撃ちまくり始めた。


「うわ!」


 銃声を聞いた人々が伏せたり、逃げたりし始める。


 だがその中でも逃げずにカメラを回す人らがいた。どうやらそのカメラたちは、試験体とゾンビ化兵の戦いに気が付いたようだ。自分らが撮られている事も知らずに、ゾンビ化兵は試験体との戦いを繰り広げ始めるのだった。

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