表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
384/610

第384話 ファーマ―社、フランクフルト支部潜入

 走る俺達の車の右手には、ファーマ―社の看板がでかでかと揚がった白い建物がある。建物はかなり巨大で、俺達はレンタカーでゆっくりとその周りを回った。そしてクキが言う。


「この辺だな、そろそろ行くか」


 皆が頷いた。


 ベルリンに派兵した奴らとの通信が切れた事に気が付き、警戒態勢が敷かれる前に進入する事にしたのだ。皆は既に武器と防具を身に着けており、いつでも出撃できるようにしている。


 ファーマ―社の女だけが、不安そうな顔で会社を見つめている。


「本当に侵入するのですか?」


「そうだ」


「あそこには…」


「分かっているさ。兵士もいるしバケモンもいるんだろ?」


「調べがついているのですね?」


 調べたのではなく、俺の気配感知で感じ取っただけだがクキは何も言わなかった。ただ建物に侵入するのに、この女を利用しようとしている。何故そうするかというと、社員の生体情報を読み取って開く扉があるらしいのだ。ならば先に大きな騒ぎを起こすより、秘密裏に侵入して出来るだけ内部情報を探ろうと言う事になった。


 道路脇の歩道に車を停め皆が速やかにおりる。それぞれがイヤーカフをつけて、連絡が取れるようにした。


「これでみんなと、はぐれません。会話が出来ますので、あとは訓練通りにお願いします」


 オオモリの言葉に皆が頷いた。道のわきには茂みがあり、俺達はそこをかき分けて入り込んでいく。するとその先にフェンスがあり、オオモリが立ち止まるように言う。


「侵入者が入ると警報が鳴る仕組みです。ちょっと待ってください」


 マナがリュックから機械を出して、スルスルとアンテナを伸ばしオオモリに言った。


「少し待って」


「はい」

 

「衛星をつかまえたわ。通信を開始するわね」


 俺達が待っているとマナが言う。


「リンクしたわ」


「了解です。ヒカルさん、フェンスを斬る準備を」


「ああ」


「電源供給を止めます…3、2、1」


 それを合図に俺は目の前のフェンスに穴を空けた。


「急いでください」


 皆がその穴から中に侵入し、少し経つと工場内の電気が灯る。


「電気を瞬断して、非常電源がつくまでに侵入しました。すでに警報回線は繋げましたので、再度電源供給を開始させます」


 そしてオオモリがパソコンを触り、全てが終わると周辺の建物の灯りも点いた。まだ暗くはなっていないが、建物の中が暗くならないように明かりをつけているのだろう。


 それを確認したマナが言う。


「衛星回線を切断したわ。行きましょ」


 するとファーマ―社の女が感心したように言った。


「やはり凄い組織なのですね…」


 誰もそれには答えず無視して先に進むと、軍服を着た歩哨が二人見える。侵入された事には気づいていないらしく、真面目に守りを固めているようだ。


「普通の人間兵だ」


 俺とタケルが二人に忍び寄り、死角から飛び込んで仕留めた。そのまま引きずってきて、ビルの脇の茂みに隠す。クキがファーマ―社の女に言った。


「おとなしく付いて来い」


「はい」


「皆は合図を待て」


 俺とクキが女を連れて、入口へと進んでいく。するとクキが俺に手で合図をした。どうやら入り口の天井付近に、監視カメラが仕掛けてあるらしい。


「刺突閃」


 ピシュッ!


 カメラを貫き機能を停止させる。そのまま入り口に行くと、クキが中を覗いて俺に監視カメラの位置を伝えて来た。すぐに女を連れて機械の前にいく。


「開けろ」


「はい」


 まず女は社員証を機械にあててから目を近づけた。すると機械から光が発せられて、女の瞳を読み込んでいるようだった。


 ウィィィィィィ!


 自動ドアが開いたので、俺が中に入り監視カメラを破壊する。それを見た皆が速やかに侵入してきて自動ドアが閉じた。そのまま内部に侵入するも、エントランスに人の気配は無かった。


「ここに人はいないのか?」


「そうです。もともと来客がある時は、アポを取ってくるのが普通だから受付がありません」


「そうか」


 俺達が内部に進んでいくと、人間の気配がしだしたので皆を止めた。


「そこから先に人がいるな?」


 するとファーマ―社の女が言う。


「この棟には一般社員しかいません。私が説明をすれば、他国の研究者を連れて来たと言う事で怪しまれないはずです」


「本当か?」


「本当です! 私は上級社員なので、ここにいる人達は従います」


「嘘なら死ぬぞ」


「嘘じゃありません」


 俺達が奥に入っていくと、そこには社員がいて俺達を見つけ慌てて出て来た。だが女が最初に言っていた通りに、研究者の見学だと言う。


「わかりました。それでは失礼します」


 女の言うとおり、全く疑いもせずに戻って行った。


「行ったわね」


「まずはクリアだな」


 その棟を過ぎて、奥に行くと再び生体認識の機械があった。そこに女が手を触れ顔をかざすと自動ドアが開く。その先はここまでの雰囲気とは違っていた。


 それを見たツバサが言う。


「ここからは、突然近未来の世界になるのね」


「この先は完全極秘、完全管理の研究棟です。選ばれた人間しか入れません」


 それを聞いてタケルが言う。


「おりゃ、選ばれたくねえけどな」


「す、すみません」


「ふん」


 そこに侵入すると後ろで自動ドアが閉まる。そして俺が言った。


「いったん止まれ。この先には人間とゾンビ化兵が混ざってる」


 するとミオが女に聞いた。


「この奥には、どういう立場の人がいるの?」


「もちろん普通の薬品を作ったり研究している人はいます。ですがそれは隠れ蓑のようなもので、その奥では一番のもうけを生むアレを作っているのです」


「ゾンビ化物質?」


「はい」


 そこからの想像はだいたいつく。俺達は日本でその研究を見て来たから。そこでクキが言う。


「第一目標は研究結果の奪取。第二目標はゾンビ因子開発の祖である、アビゲイル・スミスの居所を掴む事だ」


 それを聞いたファーマ―社の女が言う。


「アビゲイル…スミス…」


「所在を知っているのか?」


「いいえ。だけど、ファーマ―社でその名を知らない者は居ないです」


「そりゃそうだな。俺達はそいつをつかまえて、この事態の収拾方法を聞き出したいんだ」


「そうですか…。私も会った事はありませんが、もちろん私のような中間管理職が知って良い情報でもありませんので」


「そうか」


 そしてクキが皆に言った。


「さて。ここからが本番だ。情報収集をメインにするが、戦闘が始まったらそれを最優先とする。全員武器を構え、周囲を警戒し奥に進む!」


 皆が目を合わせた。


「俺が先を行く」


 そう言って、気配感知を張り巡らせながら奥へと進むのだった。最初の部屋を開けた時、白衣を着た中の研究員達が全員固まる。だが俺は訓練通りに、警告を発することなく剣技を繰り出した。


「刺突閃、十連」


 室内にいた白衣が一瞬にして眉間に穴を空けて倒れる。それを見ていたファーマ―社の女がガタガタと震え出した。


「なに! 今のは! 何を! 銃声もしなかった!」


「静かにしろ」


「ば、バケモノ!」


 そう言うと、タケルが女の襟首をつかんでぎろりと睨む。


「ひっ!」


「次、ヒカルの事をバケモンだ、なんて言ったら有無を言わさず殺すからな。ここまで侵入した事でお前はもう用済みなんだ」


「すみませんでした! しません! もうしません!」


 じょじょじょじょー!


 女は失禁しながらも震えて腰を抜かした。それだけタケルの殺気が鋭く、仲間達ですら苦笑してしまうほどの気配を発していた。この中でタケルが一番レベルが上がっているのだが、どうやら覇気を使いこなして来ている。そしてタケルは俺をチラリと見て、親指を上げてニヤリと笑う。それはどことなく前世のレインを思い出させた。


「オオモリ! マナ! 必要な情報を探してくれ」


「「はい」」


 そこからは二人がメディアに情報を収めていき、それをケースに入れてタケルやクキのリュックに収めていく。だがここにはありきたりな情報しかなく、俺達が必要としている物は無いようだ。


「次行くぞ!」


 クキが言い、俺が先に進んで部屋を出る。俺の気配感知には、通路を曲がって来るゾンビ化兵の気配があった。


「ゾンビ化兵を黙らせてくる。後からついてこい!」


 縮地で角まで行き、二体のゾンビ化兵を倒して皆に合図をする。


「来い」


 俺達は慎重に、ファーマ―社のフランクフルト支部の深部へ侵入を開始するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ