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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第382話 ドイツを救った勇者

 ボートを進めつつ俺が周辺の気配を確認しているが、場所によってはドイツ軍が押されている場所があるように思える。どうやらゾンビの拡大が想定より早いようだ。クキが大丈夫だと言っていたが、恐らくその目算は狂ったかもしれない。


「クキ。どうやら場所によっては状況が酷いようだぞ。おかしな感じがする」


「ドイツ軍だけで、なんとかなると思ったんだがな…繁殖が早いのか? どうなってやがる?」


 するとミオがスッとしゃがみ、床に寝ているファーマ―社の女の猿轡を取った。


「ねえ。なにかゾンビがおかしいんだけど」


「え、おかしいって、なにがです?」


「ゾンビの繁殖ってこんなに早くはないよね?」


 すると女が言う。


「えっと、他でもゾンビを見たことがあるのですか?」


 ……。


 ミオが一瞬止まるが、考えて聞き直した。


「そう言う情報がうちの組織に入ってきているわ。従来の物はそうではないでしょう?」


「さすがは調べ上げているのですね。凄い組織だわ」


「ええ。そうよ」


「今回散布したのは改良株です。従来の物より感染スピードを上げるように作ってあります。噛まれたり血を浴びれば、三分から五分でゾンビ化するかと思います」


「そんなものを…」


「どうりで感染が早い訳だ」


 進む船の上で、ベルリンをどうにかしなければならないという話し合いになった。だがこのまま俺達がドイツ軍に捕まれば、脱出もままならないし日本に帰れなくなってしまうという結論になる。そこで俺が皆に提案した。


「俺が一人で行けばいい、皆は先で待っていてくれ」


 するとオオモリがパソコンを出して操作をする。


「ヒカルさんのスマホ下さい」


「ああ」


 スマホに繋いで何かを流し込む。


「これで僕らの居る場所が分かります。あとこの地図を見てください」


「ああ」


 オオモリが俺に画面を見せる。


「僕たちはこの川を進んだずっと先、このポツダムと言う所で待っています。終わったらここに来てもらえますか? 僕らの居る場所が、常に表示されるようにしたので分かると思います」


「わかった。お前達も気を付けろ」


 するとクキが言う。


「どうにかするさ」


「頼む」


 そして俺は船の上から陸地へと飛んだ。特にゾンビの気配を多く感じる方向へと走る。すると生きた市民とすれ違い、その先に大量にゾンビがいるのが分かる。ゾンビ達は生存者を求めて走って来ているのだ。


「飛空円斬!」


 視界に入ったゾンビは真っ二つになって転がった。俺はそのゾンビの死骸を踏み越えて、銃声の激しく鳴る方向へと走っていく。俺はすぐに建物をよじ登り、屋根から屋根伝いに進んだ。


 そして俺の目の前には、まるで東京で見たようなゾンビの数が目に入って来た。かなりの感染速度らしく、あっという間に市民がゾンビになってしまっている。しかも銃声を聞きつけたゾンビが、後から次々に押し寄せてきていた。ドイツ軍は兵士の銃だけではなく、筒から連続で出るミニガンとやらや、大砲も使っているようだ。しかしゾンビの数が上回っている。


「これはダメだな」


 このあたりに生存者はいない。群がるゾンビが積み上がっていき、今にもドイツ軍のバリケードを超えそうになっている。ここでもたもたしていると、他の地域が壊滅してしまう恐れがあった。


「多少無理してでも急ぐか…」


 俺はバリケードとの距離を測り、剣技で破壊される位置を想定する。とにかく急がねばバリケードが破られてしまう。もしかすると多少ドイツ軍にも影響が出るかもしれないが、それよりも数をどうにかする必要があった。


「剛龍爆雷斬!」


 俺の剣から火の玉がゾンビの群れに飛び込み、次の瞬間カッ! と光った大爆発を起こした。あっという間に大量のゾンビが焼け、盛り上がったゾンビ達が削り落とされる。


「結界! 金剛!」


 俺は対ドイツ軍砲撃用の身体強化をかけ、縮地でゾンビの群れに飛び込んだ。


「推撃! 十連」


 ビシャッ! ビチャ! グチャ! ビチャァ!


 熟れたトマトのように、ゾンビが潰れていく。それによりドイツ軍のゾンビの討伐速度が上がり、バリケードは死守できそうな状態になった。


「よし」


 俺はその場を去り、もっとひどい状態になっている場所へと進む。そこは兵士、市民、ゾンビの気配が入り乱れている。どうやらドイツ軍が市民を救出しようとして、ゾンビの群れに巻き込まれてしまったらしい。


「これは酷いな」


 この場所は一気に処理できない。俺はすぐに飛び込み、一般市民を救いつつ刺突閃でゾンビを一体一体潰していく。目の前に突如現れた俺に驚いた市民をつかみ、飛び上がってビルの上に連れ去った。そしてまた地面に下り、ゾンビを一体一体潰しつつ、生存者を見つけては安全な場所へと連れて行く。


「一人でも多く」


 俺は次々に生存者を安全な場所に連れ出し、ゾンビ討伐を繰り返す。ドイツ軍もゾンビから離れつつ銃撃をし始め、その銃弾が生存者にあたる前に俺は生存者を救った。三十分ほど繰り返し、三百人ほど救ったところでビルの屋上から地上を見る。


「よし。ゾンビしかいなくなった」


 しゅっ! とビルの屋上から地面に降り立ち、ゾンビに突入した。


「推撃 十連!」


 びちゃ! びしゃ! ぐちゃ! どちゃ!


 熟れたトマトのようにゾンビが弾け、俺はその場から離れる。その事でドイツ軍はようやく体制を整えられたようだ。


「次だ」


 俺は直ぐに、ドイツ軍がゾンビと交戦している方角へ向かう。


 そしてそれから三カ所の交戦地帯を回る頃には、夜が開けてあたりが明るくなってきた。ベルリン中を回ったが、もうドイツ兵だけでも対応できる状態になったようだ。


 俺はスマホを取り出す。


「みんなは、まもなくポツダムに到着するようだな」


 あちこちで銃声が聞こえるが、ベルリンの気配は既にドイツ軍が押しているようだ。ベルリンを抜けた場所の大通りに立ち、脚力強化を施して皆の待つ場所へ一気に走り出すのだった。

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