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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第381話 尋問と押し返すドイツ軍

 ファーマ―社の女を捕らえた俺達は、再びベルリン大聖堂に籠り尋問を始めた。ファーマ―社の女は上層部の人間では無かったが、現場の全てを任される立場の一人ではあるらしい。


 尋問はクキが行っている。


「殺されたくなかったら、洗いざらい吐いてもらおうか、お前達は何をやっているんだ?」


「ゾンビ実装試験よ」


「どういったものだ?」


「私達が開発したゾンビ化する物質があってね、それのコントロール化を検証している」


「コントロール化?」


「あなた達は知らないかもしれないけど、私達はこのゾンビ化実験で以前失敗したことがあるのよ」


「どんな?」


「極東にある、ジャパンを知っているかしら?」


 なるほど、コイツはまだ俺達が日本から来ている事を知らないらしい。フランス人や中国人だと思われているようだ。もちろん正体はばらさずにクキが聞く。


「知っている」


「あの国は島国だからね。外に漏れないと踏んで、局地的に使用出来るかどうかを確認したのだけれど、アメリカ政府と日本政府の手違いで全国民にばら撒いたのよ。そのおかげで国は全滅しちゃってね、SNSで噂されている話は事実なのよ」


「ゾンビ化の薬で全滅したという事か?」


「そう。あれはデマじゃない」


 俺達の全員が知っている事だが、この女もその事実を知っているようだ。やはりファーマ―社の人間は知っているのだ。俺達は顔を見合わせながら、興味深く女の話を聞いた。


「まて。ファーマ―社が全部仕組んだことなんじゃないのか?」


「はあ? そんな訳ないじゃない。もちろん開発と金儲けには絡んでるけど、全部を我が社だけで出来るはずないわ」


「どういう事だ?」


「政府高官や、公的機関の上層部が絡んでいるの。もちろん巨額の金が動いているわ」


 なるほど…、クロサキ達の公機捜が調べていた内容に近いようだ。


「誰か分かるか?」


「具体的には下りてきていないけど、ファーマ―社CEOと米高官、医療機関が絡んでる」


「嘘じゃないな?」


 クキがギロリと睨むと、怯えながらも言う。


「もちろんよ。あなた達の組織もかなり大きいんでしょ? それなりに情報を掴んでいて答え合わせ出来てるんじゃないの?」


「まあ…そんなところだ」


 なるほど、俺達がなにかの組織だと判断したらしい。


 横からミオが聞いた。


「それであなた達は、何故ベルリンでこんなことをやっているのかしら?」


「ベルリンだけじゃないわ、あちこちで試験中よ。ゾンビを作りながらも、大きく拡大させないようにコントロールする実験をしている。あまりにも無差別に広がりすぎれば、軍用には使えないからよ。普通の人間の意識のままゾンビにするのは、手間と金がかかりすぎるし、金をかけないようにする為のゾンビなのに本末転倒でしょ」


 ガッ! とタケルが女の胸ぐらを掴んだ。


「ひっ!」


「やめろ。コイツは情報源だ」


「ちっ!」


 タケルがバッと手を放し、そっぽを向いて腕組みをする。そこでクキが女に言った。


「こいつらは特殊な訓練を受けていて、お前らが作るゾンビ化人間を制圧できる力がある。それはさっき知ったと思うが、不要と思えばすぐにお前を殺すだろう。だが洗いざらい話をすれば、どこかで解放してやる。その前に一つだけ言っておくが、言葉に気を付けた方が良い」


「わ、わかりました! すみません」


「まあいい」


 そしてミオが再び聞いた。


「ベルリン以外にはどこで?」


「はい。イスラエル、モルドバ、アフガニスタン、スーダン、コロンビア、インドネシアと聞いています」


「なかなかにきな臭い所だな」


「紛争などに紛れて行いますから」


「それなのになんでベルリンなんだ?」


「日本での失敗以降の、大都市実験を再開する為です。これまでの限定的な国では、ある程度のコントロール化が確認できています。まだ制圧しきれていない所もあるようですが、先進国でのデータが日本ではきちんと取れなかったため、ドイツに白羽の矢が立ったようです」


「いい言葉遣いだ。それで、ここでのデータはどうだ?」


「紛争地帯ではない為、ドイツ軍が制圧するのも時間の問題かと思います。ですので、我々はここを引き払って退却しようとしていました」


 ん?


 尋問途中で俺の気配感知に反応が来る。


「何らかの集団がこちらに近づいてきているぞ」


 それを聞いてクキが女に聞く。


「おい。ファーマ―社の私兵じゃないのか?」


「わかりません! でもここで取れたデータの半分は既に送信しています。こんなに早く私兵が動くとは思えません」


 俺が窓際にいき、ざっと外に出て屋根の上に飛ぶ。すると向こうから戦闘車両や兵士らがぞろぞろと進んできており、ゾンビ掃討しながら向かってきているようだ。俺はすぐさま部屋に戻って言う。


「ゾンビを掃討しながら進んできている。恐らくはドイツ軍だろう」


 それを聞いたマナが言う。


「えっ、って事は、私達が危なくない?」


「確かにそうよね」


 タケルがようやく冷静になったようで振り向いて言う。


「トンズラしよう。俺達がこれをやったと思われたら、ドイツ軍と戦う羽目になるぜ」


 それを聞いてクキがにやりと笑う。


「こっちにゃ大将がいるんだぜ。ドイツ軍が束になっても敵わないさ。まあもちろん矛を交えるつもりはないがな。ドイツ軍には何の恨みも無い」


 するとファーマ―社の女が聞いて来る。


「あ、あなた達は何者なのですか?」


 タケルがブチ切れそうな顔で言う。


「ああん? うるせえよ! ぶっ殺すぞ!」


「ひっ!」


 クキがタケルを抑えて、女に言った。


「ついて来てもらおう」


「わかりました。だから! 殺さないで!」


「あんたが言う事を聞いてくれたらな。ほかにゾンビ化人間とか試験体は持ち込んだのか?」


「そこまで知っているのですね? もちろん持ち込んでおりません。試験体は扱いが難しく、下手をすると我々が全滅してしまうのです。あとゾンビ化人間とあなた方が呼ぶ兵士は、作るのが高額過ぎる為一部隊に十数人しか与えられません」


「なるほどな」


 そしてオオモリが聞く。


「ここにある機器や、残ったデータはどうします?」


 クキが冷静に答える。


「ドイツ軍かドイツ警察に押収してもらおう。そうすればファーマ―社の痕跡が分かるだろ?」


「そうですね!」


「さすが九鬼さん。こういうの手慣れてんじゃねえか」


「お前の車ドロよりは上手くないさ」


「なんだか…複雑な褒められ方だぜ」


 そうして俺達は必要物資をリュックに詰め込み、ベルリン大聖堂を後にした。このまま都市部を抜ければ、ドイツ軍に遭遇してしまう為、俺達は川沿いに進んでボートを探す事にした。


 川沿いに進んでいくと、大きめの船が見えて来た。俺が振り向いてクキに言う。


「クキ、船だ」


「ありゃ遊覧船だな」


「分かった! んじゃ! 俺がアイツをくすねるぜ」


「ほら。やっぱり頼もしいじゃねえか」


「今は緊急時だからな!」


 そして俺達は遊覧船に乗り込んだ。鍵を壊して、タケルがあっという間にエンジンをかけてしまう。ファーマ―社の女は手と足を縛られ、猿轡をして床に転がされた。


「夜が明ける前に離脱するぞ。急げよ! 武!」


「わーってるよ!」


 俺が言わなくてもパーティーが動くようになってきた。やはりこいつらは頼もしい、まるでレインやエルヴィンを思い出させる。


「あちこちで戦っているな」


「制圧できそうだ」


 ボートが進むと、ドイツ軍の戦う音が都市の中心部に向かっているのが分かる。俺達がゾンビ化する部隊を潰したおかげで、押し返し始めたようだった。

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