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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第378話 ファーマ―社の先兵

 ベルリンは日本とは全く違う町並みで、美しい景観の建物がたくさん建っていた。だがあちこちで火が上がり、ゾンビがうろついていて、その見事な景観が台無しだった。しかも、なりたてのゾンビはまだ筋力が強いためか、その行動速度が速く走り回っている。


「刺突閃 十連」


 逃げ惑う人々の間を縫って、後ろのゾンビに向かって刺突閃を撃つ。先頭のゾンビが転げ、後ろのゾンビ達がそれに躓いた事で、どうにか逃げている人間との距離が開く。そこでマナが大声をあげた。


「ゾンビさーん! こっちこっち!」


 するとゾンビ達は一気にこちらに向かって走って来た。マナのヘイトがとにかく強力だった。向かって来たゾンビに向かい、俺が剣撃を放って処理をする。


「炎龍鬼斬!」


 一気に切り捨てて、皆が周りを警戒する。オオモリが地図を見て言った。


「もうかなり中心に入って来てると思いますね」


「生存者をどうにか逃がさないと、全滅してしまうな」


「確かに、生存者がいるうちに何とかしたいですよね」


 そんな話をしている間にも、空にはヘリコプターが行き来していた。それを見てクキが言う。


「ドイツ軍はどうにか生存者を助けようとしているようだが、着陸出来ないんだよ。あれを見てみろ」


 クキが指さす方向では、ビルの屋上にヘリコプターが着陸しているところだった。


「ビルの屋上に逃げた人らを、辛うじて助けているに過ぎない。だがビルの中にもゾンビが入り込んでいるだろうからな、屋上にたどり着く前にやられてしまうだろう」


「とにかくよ! ファーマ―社を見つけ出すしかねえぜ!」


「そうだな」


 するとクキが言う。


「恐らくだが、ファーマ―社は一か所に留まっていない。あちこちで人間達をゾンビに変えている」


「ほんっとクソだよな」


「それがファーマ―社のやり方だ」


「車か何かで移動しねえと、ファーマ―社の奴らもゾンビにやられるよな?」


「恐らくはそうだろうな」


 するとツバサが言う。


「じゃあ私が見つけられるかも」


 ツバサが目をつぶった。俺達はツバサにゾンビが群がらないようにし、何かを見つけるのを待つ。ヘリコプターの音と銃声、人の悲鳴と爆発音が鳴り響いている。あちこちでゾンビが動き回る気配がして、人間達が逃げ惑っている感覚は伝わってきていた。だが何処にファーマ―社がいるかまでは判断がつかない。


 するとツバサが言う。


「車の音…多分、こっち」


 そう言って指を差した。


「よし! 行くぞ!」


 この音の中から、特定の音を聞き分けたらしい。ツバサを先頭にして、俺達がそれについて行くと俺の耳にも車の音が聞こえて来た。


 俺が言う。


「よく分かったな」


「他のエンジン音と微妙に違う。動いたり止まったりしてるし」


 そしてビルの角を曲がった時だった。道路の中央に黒い大きめの車が停まっている。その窓が薄っすらと開いており、中から誰かが外を監視しているようだ。


「あれか?」


「でも。あれがファーマ―社かまでは分からない。一般の人かも」


 それを見たタケルが言う。


「ドイツで、レンジローバーか。まあ別におかしくはないが、確かに他とは雰囲気が違う気がするな」


 するとその周辺に逃げ惑う人が走って来た。俺達が様子を伺っていると、車内から人間が降りて来てホースのようなものを構えていた。


 プシュッーーーーー!


 逃げ惑う人らに煙がまかれ、全ての人間がそこに倒れてしまった。


「あれがファーマ―社だ。みんなは来るな」


 俺がシュッと縮地でその車に寄る。白い煙は恐らくゾンビ因子であろうが、俺に効かない事は東北大の研究者たちが確認済みだ。


「冥王斬!」


 ジュキン! 


 煙を撒いている人間はもちろん、車ごと乗っている人間も真っ二つに斬った。車は沈黙し、あたりに静けさが漂う。だが白い煙を浴びた人間らがムクリと起きだした。


「手遅れか…」


 その煙の効果は、日本で確認した感染力の非では無かった。既に全員がゾンビになり、俺に向かって飛びかかって来る。


「蘇生斬」


 なりたてのゾンビ達が斬れて地面に落ち、みるみる人間の死体に変わる。念のため試験体やゾンビ化人間の対策をしたが、特に動き出す様子は無かった。


 そして俺は真っ二つになった、ファーマ―社の車の上を掴んで剥がす。体が半分になりながらも、生きていた奴がいたからだ。そいつの胸ぐらをつかんで言う。


「お前はなんだ」


「なっ! なんだお前は!」


「俺が聞いている」


「言葉が分からない」


 するとそいつの斬れた体の部分が、くっつき始めた。そしてそれはそいつだけじゃなく、周りのファーマ―社の連中も繋がり始めたのだ。


 バッと数人が飛びかかって来た。


「死ね!」


 なるほど。こいつらはファーマ―社が送り出したゾンビ人間兵だった。


「屍人斬」


 飛びかかってきた奴らは分裂して地面に落ちる。屍人斬により再生は叶わず、そのまま崩壊していった。俺は胸を掴んだ一人だけを睨む。


「くそ! 離せ! 離せ!」


 恐らく人間にしたら物凄い力だろう。恐らくは日本で戦ったクマか虎くらいの力がある。ゾンビ人間化する事で力が何倍も倍増するらしい。


「お前らは何をしている」


「くそ! なんでほどけない! 俺の力はこんなはずじゃ…」


 ゾンビ化の煙が風で流れて行き、そこに仲間達が走り込んで来た。


「ヒカル!」


「ミオ。コイツの言っている事を聞いてくれ」


 そしてミオがそいつに話す。だが叫ぶだけで何も答えない。ミオが俺達に説明する。


「我々ファーマ―社に手を出してタダで済むと思うなよ。お前達など我々の組織にかかったらすぐに殺される。ですって」


 俺は日本刀をそいつの肩に深々と貫通させる。


 ズズズズ!


「ぎゃあああああああああ!」


「お前は何をしていた?」


 それをミオが通訳した。その時そいつの目が一瞬動くのが分かった。


「オオモリ。その端末を見てくれ」


 車の足もとに転げ落ちている端末を見てオオモリが言う。


「…試験中だそうです。大都市圏におけるゾンビパンデミックと、その収束に向けての試験。と表記されていますね。この騒ぎは…ファーマ―社の試験です…」


「くそが!」


 タケルがボゴンと! ファーマ―社の頭を殴ってしまい。頭蓋が飛び散って死んでしまった。


「あ、やっちまった…」


「どうでもいいさ。それよりオオモリ、情報は取れそうか?」


 するとオオモリが言う。


「こいつらの携帯と積んである端末は全て回収しましょう」


 クキが皆に指示をする。


「聞いた通りだ! とにかく集めて離脱する!」


「「「「「「了解」」」」」」


 みんながファーマ―社のデーターを拾い集め、車から離れたところで俺が言う。


「後ろのゾンビ化タンクごと焼き払う。皆は離れてくれ」


 そして皆が俺から離れる。


「フレイムソード」


 大きな火炎が車とファーマ―社のゾンビ化人間を包み込んで焼いた。跡形もなく消え去ったのを確認し、俺達はその場所から離れる。


 そして近くのビルに入り、俺達は一つの部屋に入り込んだ。集めたファーマ―社の端末やスマホを並べ、オオモリがひとつひとつ開いてチェックし始めた。その間も俺達は話し合う。


「あの一台だけか?」


「とは限らんだろう。この都市は大きいからな、少なくとももう一台はどこかにいそうだ。もしくは本部があるかもしれん」


「そいつが見つかると良いんだがな」


 クキとタケルが話をしているところで、オオモリがあっさりという。


「本部を確認しました。今地図に反映させます」


「…お前…凄すぎるな」


 タケルが感心している。オオモリが開いた地図には、その位置が記されていた。


「信じられない」


「神を冒涜しているわ」


 俺がミオに聞く。


「どこにいるんだ?」


「ベルリン大聖堂。大きな教会よ」


「すぐに行こう」


 そして俺達はビルを出て、ゾンビを倒しながら大通りを進んでいく。ニ十分ほどでベルリン大聖堂が見える場所に到着した。ベルリン大聖堂は、とても立派な歴史を感じる建物だった。至る所に銅像が置かれており、壁にも彫刻が施されている。


「こんなところに隠れてるとはな」


「なるほど。内部には人間が潜んでいるようだ」


 俺達は離れた建物から道向かいにそこを見ている。


「銃を持った人間がウロウロしてるな」


 クキが言う。


「どんな奴らだ」


「まあ…あの佇まいはプロだな」


「ならば、暗がりがら忍び寄って全てを仕留めよう」


 皆が頷いた。そしてクキが皆に言う。


「訓練通りに」


 俺達は暗がりに潜み、ベルリン大聖堂に近づいて行くのだった。

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