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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第377話 ベルリンゾンビに遭遇

 川を進んでベルリンに入り二つ目の橋を潜っても、ゾンビの気配はまだ感じなかった。避難しようとした人たちなのだろうか、橋の上には車が並んで停まっている。歩く人々もいるようで、あてもなく彷徨っているようにも見えた。


 俺達のボートはそのままその橋を通過し、夜の川辺を滑っていく。ちゃぷちゃぷと水の音が聞こえ、周りは全く騒がしく無かった。


「このあたりは大丈夫みたいね」


「まだ生きている人がいる」


「それほど焦ってもいないみたい」


 ボートを操縦するタケルとそばにいるミナミが話をし、他の仲間達はあたりを警戒しつつ静かに見守っていた。川べりには閑散と建物があり、森林地帯の中に建物がぽつぽつあるような場所だった。しかも避難をしていないのか、焚火をして人が集まっているところもある。


 それを見たミオが言う。


「分かるわあ。日本でもこんな感じだった。恐らく暴動なんてすぐ収まるだろうし、局地的なものだろうと思っていたわ。誰でもそう思うだろうし、さらに軍隊が出たと知ったら鎮圧されると思うのよね。私達が自衛隊が出動したと聞いた時のようにね」


 その言葉を聞いてツバサが頷いた。


「そうよね。私もそうだった。きっと黒崎さんと九鬼さん以外はそうだったんじゃない?」


 それを聞いた皆が頷く。


 日本も始まりはこんな感じだったらしい。確かにこのあたりは、停電以外には平和な感じしかしない。だがあちこちで煙が上がっているという事は、違う場所では何かが起きているのは間違いない。


 船が更に進んでいくと、また橋が出て来て同じように車が並んでいる。それを見てクキが言った。


「大森、地図だ」


「はい」


 オオモリの端末で確認してクキが言った。


「さっきの橋と同じだ。車は同じ方角に向かっている。という事は中心部から外に逃げているな」


 皆がそれを覗き込み確認した。


「このまま行くと、すぐに二本の橋があります。先で川が分かれますので、それを右ですね」


「だな」


「武さん! 間もなく川が別れます。それを右に入ってください」


「了解だ」


 先に進んでいくと分岐が見えて来た。タケルが分岐を右に入っていく。


「遠くで火が上がっている」


「いよいよだな」


 すると唐突に銃声が聞こえて来た。どうやらあちこちで発砲しているらしい。俺達のボートがそのまま川を進んでいくと再び橋が見えて来た。銃声が激しくなってきており、俺達はその橋で何が起きているのかを知った。


 俺達から向かって橋の左側に軍隊がおり、右側から来るゾンビを堰き止めていたのだ。銃撃を繰り返しゾンビが倒れている。それほどゾンビの数は多くないようだが、後から後からやってきているようだ。


 その橋の下を通ろうとした時だった。


「ゾンビが降ってくるぞ!」


 俺は日本刀を引き抜いて、そのすべてを斬り捨てる。


「乱波斬!」


 細切れになったゾンビの破片が、ボトボトとボートに落ちて皆がそれを振り払った。


「武! 右に接岸だ!」


「了解」


 俺達の乗ったボートが川べりに着岸した。そのまま皆が荷物を持って、岸に飛び降り橋の方を見上げる。


「ここはまだそれほどゾンビは多くないわ」


「先に進もう」


 砂利道を進んでいくと道の奥に門があり、それを開いた先にチラホラと住宅が見えた。さらに歩いて行くと集落が見えて来る。俺は気配感知を働かせて、先の状況を探った。


「直にここにもゾンビが来るだろう」


「皆避難してるのかな?」


「いや、チラホラと民家の中に人間が残っている」


 それを聞いてマナが言う。


「やっぱりそうなんだ。あの頃の日本と同じね、そこまで深刻に考えていない人がたくさんいる。気が付かないうちにゾンビに襲撃されて死んじゃう…」


「向こうにいる」


 俺が先に進むと太い道路が見えて来て、道路の上とその向こうにゾンビの気配があった。


「みんな戦う準備をしろ」


 俺が言うと、タケルが言った。


「よっしゃ準備運動」


 そしてストレッチとやらを始め、ミナミや他の仲間もそれに習っている。そしてタケルが言った。


「じゃあ、いきますかあ!」


 皆は自分の得物を持ち、一気に走り始める。道路の土手を駆け上ると、ゾンビが右から左へと流れるように歩いていた。


「飛空円斬」


 視界に入っているゾンビが全て切断されて崩れ落ちる。


「こっからだ。気合い入れろ!」


 タケルの掛け声に、皆が道路の反対側の土手を下り、目に見えるゾンビを削り始める。生存者との区別をつけて攻撃する為に、俺は刺突閃を使い、離れたゾンビを一体一体慎重に仕留めていく。するとマナが叫んだ。


「ゾンビぃー! こっちこっちぃ!」


 するとマナの特殊能力であるゾンビのヘイトが集まり、ゾンビ達が一気にマナに群がって来た。俺はすぐにマナの前に立ち剣技を繰り出した。


「推撃!」


 ゾンビは熟れたトマトのように弾け、周囲五十メートルが綺麗になる。皆が俺の側に集まってきて、クキがみんなに言った。


「すでにパンデミックは始まっている。だがこの広がり方は間違いなく意図的なものだ。どこかにファーマ―社がいる。そいつらを阻止すれば、まだドイツ軍だけで事態を収拾できるかもしれん」


「何処に向かう?」


「恐らく最も人口の多い場所でばら撒いたんだろう。目指すなら…」


 それを聞いていたオオモリがパソコンを見ながら言う。


「ブランデンブルグ門を目指しましょう」


「よし!」


 そして俺達はゾンビを潰しつつ、ゾンビパンデミックが起きたであろう中心地に向かって進んでいくのだった。

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