表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
361/615

第361話 都市破壊型ゾンビホイホイ

 名古屋市中を駆けまわり、俺と仲間達はもっと効率良くレベルを上げる作戦の準備をした。俺は実際にやったことはないが、前世で力のない冒険者達が知恵を絞って考え出した方法だ。本来はゾンビのような細かい魔物を倒すのではなく、大型の魔獣を狩るための罠だ。


 町中に鉄のワイヤーロープが張り巡らされており、ビルとビルの間のあちこちにスピーカーがぶら下げられている。ロープには電飾が飾られており、発電機でちかちかと光り輝いていた。そして電波で音を飛ばせる機械をツバサが持っている。


「もうすっかり日も暮れたし、音鳴らすよー!」


「「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」


 ぶら下がったスピーカーから大音量で音楽が鳴り始め、俺達はその脇の立体駐車場の屋上から下を見ていた。電飾が光っているために、皆にも下の道路が見えるようだ。


「あー、きたきた。チラホラ集まって来たよ」


 ツバサが言い、俺は皆に言った。


「それじゃあ適当にゆっくりしててくれ。その時が来たら俺が合図をする」


 するとタケルが、両手を枕にして寝転がった。


「あいよ。んじゃ、ちっと休んどくわ。頼むぜ相棒」


「ああ。みんなも休め。俺が責任を持つ」


「はーい」

「わかったわ」

「休みましょう」


 ずっとゾンビを狩り続けた後で、物資を集めまくった皆に疲労の色が見えていた。ここでいったん休んでもらうのが良いだろう。皆が本気で寝始め、俺は気配感知であたりを監視していた。するとそこにクロサキが来る。


「ん? クロサキも寝ておけ」


「こんな状況でですか?」


「皆は寝ているぞ」


「いや…良くすぐに寝れますよね」


「休む時に休まないと動けなくなるからな」


「慣れてるって事ですね?」


「まあそう言う事になるだろう」


 そうだ。最初の頃の皆は眠れずに、ほとんど朝まで起きていた事を思い出す。今では休む時はきっちり休み、動く時は動くがきっちりできていた。


 そこにクキが来た。


「黒崎さんよ。これがヒカルと一緒に行動を共にしてきた連中だよ。これで一般人って言うんだから笑っちまうよな。まあ俺や自衛隊などは戦いの中に身を置いて来たからすぐ馴染めるが、流石に公安の人でも無理があるだろ?」


 するとクロサキが言った。


「そうですね…、でも私も慣れるようにします。これでも一人で生き残って来たんですから」


「ふふっ、釈迦に説法だったか」


「全てヒカルさんにお任せして休みます」


 俺がクロサキに言う。


「ゾンビごとき絶対に大丈夫だ。とにかく安心して寝てくれ」


「はい」


 そしてクロサキとクキも、みんなと同じく回収して来たタオルを枕にして横になった。俺はその間も気配感知を巡らせ、ただひたすらにビルの下を覗いている。


 いい感じだな。このまま時間が経つのを待つとしよう。


 それから二時間ほどした時だった。少しずつ兆候が見え始め、俺はみんなを起こした。


「みんな、そろそろ起きてくれ」


 ムクリとタケルが起きて聞く。


「おっ! どうだ?」


「こっちに来てくれ」


 皆が壁際に来て金網から下を覗き込む。するとアオイが言った。


「何か動いてるね」


「音楽がうるさいけど、わさわさと音が聞こえるわ」


 そこで俺が言う。


「ミオ、遠隔で明かりをつけてくれ」


「わかった」


 手に持っているスイッチで、ビル下の壁に設置していたライトを点けた。そしてそこに現れた光景を見た途端、数人が後退り、タケルやクキそしてミナミが声を上げる。


「うおっ!」

「凄い事になっているな」

「まるで蟻塚じゃない…」


 そこに見えていたのは、ビルとビルの間に津波のように盛り上がるゾンビ達だった。空中のスピーカーと電飾を目指し、砂の山のように盛り上がっているのだ。


「凄い数…」


「気持ち悪いわ」


 ミオもユリナも鳥肌が立ったようで、腕を押さえていた。


 そして俺が言う。


「よし! 準備は出来た。みんな! ワイヤーを持て!」


「「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」


 皆が分厚いグローブをはめて、ワイヤーを持ち上げた。


「合図はタケルに任せる」


「あいよ!」


 そして俺は金網を乗り越えて、ビルのギリギリに立った。下には今にもここに届きそうなくらいのゾンビの山がある。地上八階ほどなのだが、かなりの数が集まってくれたらしい。


「大龍深淵斬!」


 その斜め対面にあるビルに向かって、斜め上にはね上げるように俺は剣技を放った。それは正面から入り込み、夜空に向かって抜けていく。


 するとタケルが言う。


「せーのぉぉぉ!」


「「「「「「「「「わっしょい! わっしょい! わっしょい! 」」」」」」」」」


 十数本のワイヤーを皆が引っ張り、俺が皆に声をかける。


「気合い入れろ!」


「「「「「「「「「わっしょい! わっしょい! わっしょい! 」」」」」」」」」


 すると正面のビルが、括り付けているワイヤーに引っ張られてずり落ちて来た。


「引け―!」


「「「「「「「「「わっしょい! わっしょい! わっしょい! 」」」」」」」」」


 大龍深淵斬で斬ったビルの断面は滑らかなはずだ。そろそろこの力に負けて…


 そう思った時だった。


 ずっずずずずずずず!


 目の前のビルがずれ込んで来たのだった。


「もうひと踏ん張り!」


「「「「「「「「「わっしょい! わっしょい! わっしょい! 」」」」」」」」」


 ずっずずずずず!


「よーしロープを放せ!」


 すると重力に引っ張られて、向かい側のビルがゾンビの山に向かって落ち始める。


 ドッドーン! と物凄い瓦礫が周囲に飛び散り、土ぼこりが黙々と立ち上ってゾンビの山を潰してしまった。


 その時だった。


「あ!」


 ユリナ、マナ、リコ、ユン、クロサキの体が光ったのだった。レベルの上がり具合がいまいちだった彼女らだが、ようやく一つレベルが上がったようだ。


「よし!」


「あがった!」

「あがった! あがった!」

「やったあ!」

「マジ?」

「またレベルが上がったんですね…」


 そいつらを見てタケルが言う。


「いいなあ…」


 それに俺が言った。


「お前は皆より、三つほど高いんだ。なかなか難しいだろう」


「まあ積み重なってはいるってこったろ?」


「そう言う事だ」


 そのレベルアップを見たミオが言う。


「じゃあ、次の仕掛けに移ろう! 全部やればみんな変わるかもしれないじゃない」


 そしてミナミが言う。


「そうだわ。少なくとも美桜と翼と、山崎さんは伸びしろがあるはずよ」


 それを聞いてヤマザキがいう。


「すまないな。我々のレベルアップに付き合わせてるみたいで」


「そんな事無い。みんなのレベルが上がれば、世界に出た時にかなり安全になるんだから」


「それもそうだな」


 そして俺は皆に言う。


「よし! それじゃあ次の仕掛けに映るぞ! 準備は良いか?」


「出来てるよ」


 そして俺達は同じ仕掛けをした隣り町まで移動するのだった。その間もゾンビを見かければ、皆で殲滅して少しでもレベルアップに貢献できるようにする。


 そしてそのあと、三カ所をやり終えた時、皆の予想通りにミオとツバサとヤマザキのレベルが上がるのだった。


「朝だ…」


 東の空が色づいて来ている。そしてクキが言った。


「仕掛けはこれで終わりだ。どうやら俺と武と南は残念だったな」


「レベルが上がってるってこったし、仕方ねえって」


 それを聞いて俺が言う。


「恐らく三人は試験体に挑戦するレベルなんだろう。いずれその時が来るから、その時までに出来るだけゾンビを狩っておけばいい」


「了解だ」


 名古屋の市街地は、まるで大型のドラゴンが暴れたような様相になってしまった。だが中心部のゾンビはかなり減ったはずだ。そして皆は今回の遠征で、かなり自信をつけたらしい。俺達が海外に遠征する準備は着々と進んでいるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ