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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
339/615

第339話 元凶に繋がる手がかりを

 俺が軍事衛星を墜としたおかげで、日本の監視衛星があちこちを集中して監視できるようになる。それで分かった事は、まだ世界で核弾頭が使用された形跡はないという事だ。局地戦はあちこちで行われているようだが、その規模はそれほど大きくはない。また衛星が無くなったおかげで、各国の軍隊が世界で孤立している様子も見受けられた。


 そして自衛隊は、各国の核ミサイル基地や施設の位置を確定させていた。大国の核ミサイル基地では活発な動きがみられたようだが、衛星を無くした事でそれを使用するには至っていないらしい。


 だがカブラギは、その戦いの中で異変を見つけたという。


 自衛隊の説明を受けながら、俺達は画面を見ている。


 そしてクキが言った。


「人が追われてるな」


 それを聞いてヤマザキが頷く。


「日本は始まりだったと言うことか?」


「そうなのかもしれん」


 衛星で見せられている映像では、どうやら市民が、何かに追われ襲われている様子が映し出されている。それを見て俺が言う。


「ファーマ―社が動き出したという事か?」


 カブラギが眉間にしわを寄せて答える。


「そのようです。時間の問題かと思われましたが、局地戦をやっている場所で試験をしているようですね」


「映っているのは何処の国だ?」


「この動きが確認されているのは二カ所。中東の国の一つと、ヨーロッパの国の一つです。どちらも日本がゾンビで壊滅する前から、戦争をしている国ですね」


「何故そこが狙われたんだ?」


「戦闘で人が死ぬからカモフラージュの為なのか、何らかの条件があってテストしやすかったのか、私達では推測がつきません」


 ドン!


 タケルが机をたたいて言う。


「ファーマ―社は、世界を滅ぼしたいのかよ!」


「実験のつもりなのかもしれませんが、既に日本はデータが取れなくなったので、日本から距離のある、このあたりを選んだ可能性もあります」


 そう。俺達が見ている映像では、生きた市民が何かに追われて右往左往している様が映し出されていたのだった。今まではこのような映像は見られなかったが、俺達が衛星を破壊した事で、ファーマ―社が次の動きに出たようだ。


 だが俺はある事に気が付く。


「なにかおかしいな」


 するとカブラギが言った。


「なにか気が付きましたか?」


 俺はじっくりとそれを観察して、自分の推測を述べる事にする。


「何か示すものをくれ」


 するとハルノが俺にペンのようなものを渡す。


「ポインターです。赤いライトが照らしますので、それで説明をお願いします」


「わかった」


 俺はポインターを使って皆に話し出す。


「恐らくはこれがゾンビだな。だが普通のゾンビじゃなく変身ゾンビか試験体だ」


 俺は赤いライトでゾンビだと思われる影を追った。するとヤマザキが言う。


「なぜ、それが変身ゾンビか試験体だと分かる?」


「建物や遮蔽物を回避していない。恐らくは立体的に動いているんだ」


「なるほど」


「そして、恐らくは変身ゾンビだろう」


「それは何故?」


「恐らくは思考している。追っているゾンビの周りに銃を持った人間が、編成を組んで囲んでいるのが分かる。ただのゾンビや試験体なら、無差別に銃を持った人間を殺すだろう」


「確かに」


「そしてここを見てくれ。変身ゾンビが倒した人間を、蘇る前に軍隊が処理をしているんだ」


 俺は赤いライトでその部分を指し示す。


「…酷い事を」


 それを聞いたカブラギとハルノが、顔を合わせて頷いた。


「さすがはヒカルさんです。この映像を見ただけでそこまで分かるんですね。恐らくこれは実戦にゾンビを投入しています。変身ゾンビとやらが効率よく敵を殺し、目撃した一般市民も始末していると推測しました。ゾンビ化するまえに、処分して感染拡大しないようにしているようです」


 それを聞いてヤマザキが言う。


「随分と計画的にやったもんだ」


「はい。恐らくは実戦で、どれだけの戦果をあげられるかの実験ではないでしょうか? 非常に効率がいいので、恐らくは訓練された兵士の動きのように見えます」


 タケルが不貞腐れたように言う。


「胸糞わりいな」


「ですね。日本で散々実験した成果を、他国で、しかも実戦で使うなんて許せません」


 それを見ていたミシェルが言う。


「自分がいた会社だなんて思いたくない」


 それにユリナが言う。


「ここにいる誰もが、ミシェルさんがファーマ―社だった事で恨んだりしていないし、むしろファーマ―社にいたことで新しい薬の知識が生まれた。だからあまり悔やまないでほしいわ」


「ありがとうユリナ。だけどファーマ―社がこんな危険な事をしていたら、いつか世界にゾンビが蔓延してしまう気がするわ」


「間違いないでしょうね」


 衛星がとらえた映像は、俺達に不幸な未来を想像させた。俺達の手の届かないところで、罪のない人達が殺され、更にファーマ―社はそのデーターを得て改良を重ねるつもりだろう。


「ファーマ―社を止めないとだめだ」


「そうねヒカル。なんとかしないといけないわ」


「どうにかならんだろうか?」


 するとミシェルが言う。


「ファーマ―社は世界各国に支部があるの。何処にどんな拠点があるか分からないわ」


「世界にか…」


 それを聞いたオオモリが言う。


「全て確定させましょう。時間はかかるかもしれませんが、監視衛星を使って徹底的に調べるしかないと思います」


 そこでヤマザキが言う。


「待ってくれ。そう言えばファーマ―社は、羽田空港に軍を駐留させていたはずだ。核で焼けたとはいえ、何か手掛かりが残ってるかもしれんぞ」


 カブラギが答える。


「では部隊を編成して向かいましょう。微かな望みがあるならそれにかけましょう」


「よっしゃ! んじゃ俺達もいくか!」


「そうね!」


「そこで見つからなくても、日本中に痕跡はあるはずです」


「だな」


 テーブルの上にミオが地図を広げ、その上にミシェルがペンで丸を付けていく。


「覚えている限りの拠点を書くわ」


 各地にあるファーマ―社の事務所がある場所に、丸をつけながらミシェルは言う。


「ただの事務所かもしれないけど」


「とにかく出来る限りの情報を集めましょう」


 俺達はまず、国内で集められる僅かな手掛かりを集める事にしたのだった。

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