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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第325話 世界を動かした男

 俺が一晩中泳いで海を漂っていたら、救難信号を察知した自衛隊の潜水艦らいげいが駆けつけて来てくれた。なかなか小さい個体を見つけるのが大変なようだったので、俺の方から近づいて空中に向けてフレイムソードを放つ。するとその炎を見つけて、ようやく俺を拾い上げる事が出来たのだった。


 今は海中を進む潜水艦の中で、仲間や自衛隊と共に話をしていた。


 カブラギが言う。


「すみません。遅くなりました! 戦闘区域に入るのは危険でしたので、救難信号が戦闘区域を離脱するのを待ってました。ヒカルさんの救難信号の進む速度が、物凄いスピードで、まるでパワーボートかと思いましたよ」


「それでいいんだ。俺を救助しに来て船が沈められたら意味がない」


 すると後ろからクキが言う。


「鏑木二佐。これは作戦通りだよ。ヒカルの身体能力は俺達が良く知ってるからな」


「とにかく無事でよかった。すぐに急速離脱いたしますので、まずはゆっくりしてください!」


「わかった。そうさせてもらう」


 するとミオが俺に差し出してくるものがあった。


「シャワー浴びたらこれを着るでしょ?」


「ああ、気が利くな!」


「だって、ヒカルと言ったらル〇ヴィ〇ンのスーツだもん」


 するとそれを聞いていたタケルがいたずら顔で言った。


「とかなんとか言って、女のお前らはヒカルの肉体美を見てるのも悪くねえんじゃねえのか?」


「なっ!」


 ミオの顔が瞬く間に赤くなってきた。するとユミがタケルの頭を叩いた。


 スパン!


「馬鹿じゃないの。武、ちょっとはデリカシーもちなさいよ」


「冗談だよ、冗談」


「「「「「「ハハハハハ」」」」」


 ようやく和やかなムードになり、俺はシャワールームに向かうのだった。ずっと塩水に浸かっていたので、体中がべたべたで髪の毛もゴワゴワだった。


「ふう」


 俺は備え付けてあるシャンプーで髪を洗い流し、石鹸で体の塩を落として行く。潜水艦の水は貴重なのでテキパキと洗い、シャワーを出てタオルで体をふいた。用意してくれた下着をつけて、久しぶりに白いシャツに手を通す。


「やはりいいな」


 そして、ミオが持って来てくれたスーツのズボンをはいてベルトを締め、スーツの袖に手を通して鏡を見る。髪が濡れているので、デバフ魔法をかけて体温を上げて乾かす。


「戻った」


 そうして俺がシャワールームを出ると、皆が出迎えてくれた。そしてタケルが言う。


「やっぱヒカルはスーツよな」

「うん。ヒカルはこれだわ」

「だね」


 そして俺はオオモリを探す。するとオオモリはノートパソコンとにらめっこしていた。


「オオモリ!」


「ヒカルさん! お帰りなさい」


「おう。オオモリが開発したシステムは全て正常に稼働したぞ」


「ホントですか! 良かった…。僕の失敗でヒカルさんに何かあったら、どうしようかと思ってましたよ」


「そのおかげで、今、敵同士戦ってくれている」


「想定通りです」


 そしてマナが言った。


「今ごろは敵味方の回線を通じて、大森君のAIが感染してると思うわ。そうなればもう間もなく、日本からでもいろいろと傍受する事が出来るはず」


「そうか」


 完全に孤立していた日本の通信網だったが、衛星を介して各国に侵入できるようにする事も作戦の目的の一つだった。今回の戦闘で戦艦からAIウイルスが、次々に伝播して広がって行く予定なんだそうだ。


「戦闘で通信を行うたびにそれが広がります。暗号化しようが何だろうが、通信を行えばその先にAIウイルスは移動するんです。一般の人々のネットワーク回線よりも、更に軍の回線の方が深くに潜れるはずです。恐らくは既に、両国の基地まで到達している頃だと思います」


「各地で紛争が起きるたびに、次々に伝播していく作りになっているわ。私もなぜそんな事を理解して、一緒にシステムが組めたかいまだにわからないんだけど、なぜか全てを理解しているの」


 そこで俺がマナに言う。


「思考加速だ。さらに使われていなかった体の領域を使っているはずだ」


 するとそれを聞いたユリナが言う。


「もう私達は従来型の人間じゃなくなっているのよね…。まさかこんなことになってしまうとは夢にも思わなかった。特に子供は魔法が使える子も出てきているし、葵ちゃんだって魔法の一種が使えるようになった」


 クキが苦笑いして言う。


「かくいう俺も異常なほど、察知能力と狙撃能力が高まっているからな。今回の作戦はヒカルが一人でほとんどやったが、我々も相当な事が出来るようになってるはずだ」


 するとそこにハルノ三尉が入って来た。


「大変です。もう一つの国が戦闘に参戦して来たようです」


 クキが聞く。


「どこだ?」


「半島です」


「やはりそうか」


「おそらくこれで、戦火は大きく拡大すると思われます。まさに九鬼特殊作戦群隊長の想定通りに動いたというわけですね」


「元…な。いずれにせよ、これでしばらく日本はほったらかしにされるだろ。今のうちに国内を整備して、有事に備える必要がある」


「ですね」


 今回の作戦により、周辺国家はおろか世界の戦局が大きく変わる事を意味していた。クキが言っているのは、この戦火は世界に拡大していくという事だ。小国同士の小競り合いとは違い、大国同士がぶつかった場合、同盟国や関係の強い国はどんどん巻き込まれていくらしい。


 そして俺が言う。


「クキ。始まった、と理解していいんだな?」


「そう言う事だ。お前さんは、たった一人で世界情勢をがらりと変えた事になるな」


「いや。みんなの協力があってこそだ」


 そして自分達がひいた引鉄の事をそれぞれが自覚し、皆が緊張した面持ちでハルノからの伝達事項を聞くのだった。

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