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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第324話 敵同士を衝突させ破滅させる

 仲間と別れてから、何度か敵の航空機がこの海域の確認をしに来ていた。恐らくはこの船が発している救難信号をキャッチしたのだろう。だが直ぐに攻撃してくる気配などは無さそうだ。


 俺は悠々自適に海パン一丁で甲板に寝ころび、艦内にあった冷たい食い物を食っていた。凍っているようで柔らかく、食べてみると甘さが口いっぱいに広がる。しかも口の中に入れているだけで溶けてなくなるのだ。そして早く食べないと溶けてしたたり落ちて来る。


「こんな食いもんがあるんだなあ」


 何処か乳の香りがする。暑い空の下で青い海を見ながら食っていると、なんだが楽しい気分になる。酒にはあわないが、暑い海ではこの食べ物は最高だった。


 するとまた海猫がやってきて俺の前に降り立ち、じっと俺が食っているものを見ていた。


「食うか?」


 その食い物の皿を海猫に差し出すと、そいつはちょんちょんとその白い食い物をついばみ始める。


「美味いか?」


 もちろん鳥は何も答えないが、俺を恐れる事も無くその食い物をついばんでいた。


「早く食わないと溶けるぞ」


 するともう数羽の海猫が降りて来る。そしてあっという間に皿に群がり、俺が食っていたそれをついばみ始めた。


「涼しくなるだろ?」


 海猫は話しかけても答えはしないが、ずっと一人でいるのが退屈になってきたのだ。すると皿の食い物が全て溶けてしまって、海猫達はきょろきょろとしている。


「おまえら海には降りない方が良いぞ。サメがうようよいる」


 そう。俺は空母内の敵兵の死体を全て海に放り込んだ。そのおかげで、この空母の周りにはサメがうようよ泳いでいる。海猫が降りてしまえば、サメの餌になってしまうのは間違いない。


「あ、来た。お前ら退散したほうがいいぞ」


 俺が溶けた食い物の皿を海に放り投げると、海猫達も食べ物が無くなったからか飛んで行ってしまった。そして俺は南西の海をじっと見つめる。数隻の船が近づいてきており、どうやら攻撃しては来ないようだ。恐らくは偵察機の情報を聞いて、この船の救援に向かってきているのだろう。


「じゃあ隠れるか」


 俺は艦内に隠れて、じっとそいつらが来るのを待つことにした。今度はこちらから攻撃する事は無く、とにかくこの船に近づいてもらわねばならないのである。それが今回の作戦の最大の鍵になるのだから。


 じっと息を潜めていると、ようやく近づいて来た艦艇から大きな音が聞こえて来た。どうやら警告音を鳴らしているらしいが、俺は急いで艦橋に登り機械の前に行く。案の定、敵の船がこちらに話しかけて来たので、俺はオオモリに言われたとおりに機械の発する音声のスイッチを入れた。


「どうか?」


 もっと近づいてもらわねばならないし。他の船との距離も縮めねばならなかった。


 だがオオモリの仕組みが勝った。


 じきに敵の船舶がこの空母に近づいて来たのだ。恐らくは接近して兵隊を乗せて来るだろうとクキが言っていたが、その前に俺が乗っている空母は動くはずだ。想定通りに、ズズズと俺が乗る空母が動き始める。すると近づいて来た船舶から警報と拡声器での呼びかけが始まった。


「流石だなオオモリ」


 この空母が進むと、もう一隻のゴースト戦艦もついて来る。そして俺が甲板に出て新たにやって来た船達を見ると、次々にこの空母についてきているのが分かる。


 俺にはよくわからんが、軍艦は全て電子制御でコンピューターが操作するらしい。もちろん手動でも動かせるらしいのだが、オオモリのAIはその主導権を奪い、自動操縦を解除できなくするらしいのだ。自衛隊の人間もそんな事が出来るのか? と疑問だったようだが、間違いなくオオモリの考えた通りに稼働している。


「帰ったら褒めてやるか…」


 そして俺の乗る空母と、やって来た艦隊が沖縄の南を通過し東へと向かい始める。


 俺の空母を先頭にした艦隊が東へと向かっていると、また別な艦隊が前方の海上に見えて来た。


「いたいた。あれが大陸の艦隊だな」


 俺の空母とそれに引きずられた同盟国の船達は、大陸の艦隊へと真っすぐに向かっていく。すると敵の飛行機が上空を飛び、前方の艦隊から警報が鳴り警告の言葉が鳴り響いた。


「よし」


 俺はミサイル発射のボタンを押す。すると鉄の箱から次々にミサイルが発射され、大陸の艦隊に向かって飛んで行った。それは自動で敵艦にあたると言っていたが、言葉通りに勝手に命中してくれた。


「クキの言うとおりだな。便利なものだ」


 すると敵の船からもミサイルが次々にこちらに向けて飛ばされてくる。俺が乗っている空母にも被弾し始めるが、それをみた同盟国の船も反撃してミサイルを撃ち始めた。


「こいつを沈められると、また泳がなきゃいけなくなるからな」


 俺はこの空母を狙ってくる砲撃を剣技で撃ち落とした。他の船は被弾しているが、俺の船だけ敵艦隊を抜いて先に進んでいく。


 するとスピーカーから声が聞こえて来た。


「ハッキング解除」


 オオモリのシステムが支配を解いたらしいが、それでも戦いは止まらない。お互い至近距離から砲撃をし、緊急で航空機を発進させている。海では激戦が繰り広げられ、両国は必死に防戦していた。


 だが俺が乗る空母だけは、その戦域を離脱して東へと向かい続ける。


「追ってくる奴がいるな」


 どうやら空母を発した航空機がこちらに向かってきていた。


「空接瞬斬!」


 俺はその飛行機を斬り落として追手を振り切った。それからしばらく単独で進んでいくと、俺の目の前の海域に別の戦艦が待ち受けていた。そいつらが一斉にこの空母めがけ、ミサイルを発射して来る。


「魔気! 次元断裂! 十連!」


 まずは飛んで来たミサイルと砲撃を全て異空間に消し去る。そしてすぐに空母の甲板から、一気に上空に飛び上がって全ての艦艇を視野に入れた。


「大剛龍爆雷斬! 十連!」


 次々と敵艦艇に火球が降り注いで、海の藻屑と消えて行った。空母の甲板に着地をして俺は沈む艦隊の中を進んでいく。


 それから数時間後。


 港が見えて来てそこに多くの艦艇が接岸しているのが見えた。


「あれが敵の海軍基地か…悪く思わないでくれよ。あんたらが日本でやった事の報いだ」


 そして俺は精神統一を始め、自分の魔力を最大限に練り上げる。恐らくこれで日本刀を一本ダメにしてしまうだろう。俺は全身全霊をかけて気を練り上げた。


「究極奥義の一つを使わせてもらう」


 俺は空母の船首に立ち、日本刀を自分の頭上に向けて真っすぐに突き立てた。そして魔力が頂点に来た瞬間に、それを発動する。


「天空流星斬!」


 すると次の瞬間、空の雲を割って巨大な石が落ちて来た。それは赤々と燃えており、あっという間に地表に激突して巨大な爆発を起こすと爆炎と雲がキノコの様に舞い上がり、その爆風が俺の所にまで届いて来た。


「また泳ぐかしかないな」


 その爆風が起こした大波は、俺が乗っていた巨大な空母を転覆させてしまう。それだけ大きな衝撃だったのだ。そして俺は仕方なく海中に身を投げる。


「さてと泳ぐか。まずはこれをつけるんだったっけ?」


 俺は防水バッグから、自衛隊に渡されていた救助用ビーコンとやらを取りだしてつけた。このビーコンはオオモリが細工を施したやつで、敵には察知されないらしい。俺がスイッチを入れると、光を点滅させ始める。それを再び防水バッグに入れて、俺は海中に潜るのだった。

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