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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第311話 新たなる門出

 俺はヤマザキに面白い事を聞いた。


 世界にはガラパゴスという、独自の生態系で進化を遂げた島があるのだとか。それに似て日本の技術は独自の進化を遂げていたらしく、島の名になぞらえてガラパゴス化していたという。だが独自進化してしまったが故に、世界の標準からかけ離れてしまい、国際競争から取り残されてしまったのだとか。本来ガラパゴス化は悪い意味でつかわれる言葉らしい。


 俺に詳しい事は分からないが、現在の日本は世界が知らないうちに劇的な進化を遂げている。


 子供に魔法使いが出現し、大人も元々の能力が驚異的に発達してきた。この世界の人間の基準でいえば、超人的な力を身につける事が出来ており、その力を持って防衛や攻撃の準備が出来ている。それにも増して凄いのは、この究極の壊滅状態から急速に復興してきている事だ。人間が進化したことで、個々の能力が格段に上がりそのスピードが上がってるらしい。生存者の数が増えるたびに、日本は進化しているのである。


 それを皆が、いい意味でガラパゴス化していると言っているのである。世界が知らないうちに日本で新しい技術が生まれ、食料の生産体制も急速に整った。そのおかげで生存者達は自給自足が出来るようになり、野生化していた家畜を集め農業を始める者もいた。また水や土壌や空気が綺麗になっており野菜の栽培もはかどるらしい。


「おもしろいな」


「まさかこんな終末世界で、いい意味でガラパゴス化なんて言葉を使う事になるとは思わなかったよ」


「新たな進化を世界が知らないのだから、真の意味でガラパゴス化しているのだろう?」


「まったくそのとおりだな。もともと独自進化が得意な日本がゾンビ化するとこんな風になるとはね」


「つくづく日本って国は面白い」


 さらに薬品製造工場の機械なども、改造する事によって効率化したらしい。それにより生産能力の向上が見られ、太陽光発電でも充分に稼働できるように省電力に成功した。各業界の人間が発見された事で、すべての生産能力が十倍以上になったのだ。日本人が特殊能力を身につけると、恐ろしい効果を生み出す事がわかった。面白い国民性だとつくづく感心する。


 ユリナが言う。


「世界はきっと思い知るわ。ゾンビに関して我関せずを突き通した結果、どのようになるのかを」


 タカシマ教授がそれに大きく頷いた。


「ファーマ―社は自分達の技術力に酔い知れているだろうが、必ず破綻するのは目に見えている。そのときに世界は本格的に滅びに向かってしまう」


 それを聞いてミシェルが言った。


「タカシマ先生。我々は世界の破滅を阻止できますか?」


「わからん。だが恐らく我々の想像よりも遥かに早く、破滅の道に進むと予想しているよ」


 するとクキが皮肉たっぷりに言った。


「一年後は日本だけが生き残ってたりしてな。笑えねえけどよ」


「その可能性も大いにあると思っておいた方が良い」


 その話を聞いて俺が言う。


「どこかの国がファーマ―社のターゲットになる前に、我々は事を起こさねばならん」


「で、今日は潜水艦の連絡が来る予定日だろ?」


「ああ、朝からずっと待っている」


 俺はまた世界を股にかける冒険をする事となった。今度の敵は魔王ではなく、人間の社会そのものだ。だが俺は前世でこんな戦いを死ぬほどやってきた。パーティーメンバーも十四人に増え、不謹慎ながらもワクワクしてしまう俺がいる。


 何も知らない他国の人間が真実を知った時、今までの常識は全く通用しないと知るだろう。そうなれば時すでに遅し、ファーマ―社の毒牙が深く突き刺さっているという事だ。その国は日本と同じ運命をたどる。それだけはなんとしても止めなければならない。


 そして、予定通り自衛隊が俺達を迎えに来たのである。


「ヒカルさん。潜水艦らいげいの準備が完了しました」


「わかった。では皆に通達を」


「はい」


 そして俺は皆を食堂に集めた。皆は既に呼ばれた意味を分かっているようで、真っすぐに俺を見つめ耳を傾けていた。


「いよいよ潜水艦の準備が出来た」


 タケルが言う。


「いよいよか」


「ああ」


 それを聞いて皆は引き締まった表情になる。


「過酷な訓練をよくぞ耐え抜いてくれた。これからその能力を存分に発揮し、世界に知らしめなければならない。現在日本の防衛体制は、タカシマの試験体破壊薬とオオモリのゾンビコントロールによりかなり堅牢になった。俺達は思う存分、世界で暴れる事が出来るだろう」


 そこで俺は言葉を切り、皆に改めて聞いた。


「今一度聞く、日本に残りたい者は挙手を」


 だが誰も手を挙げなかった。


「わかった。明日いよいよ出発となる、今日の為に沢山の料理を作ってくれたそうだ。日本からしばし離れる事になるから、充分に堪能してくれ」


 そしてミオが皆に言った。


「みんな、がんばろうね! そして生きて日本に帰って来よう!」

「そのつもりよ!」

「俺もだ」

「私もそのつもり!」


 そして俺が言う。


「誰一人欠ける事無く帰ろう。そしてまた美味い飯をみんなで食うんだ」


「「「「「「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」」」」」


 どうなるかは分からない。だが小さなアオイに至るまで、覚悟を決めた表情をしている。俺は仲間達の覚悟を絶対に無駄にはしない。俺はレインやエルヴィン、エリスに笑われないような冒険をすると誓うのだった。

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