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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第五章 救世主編
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第307話 防衛機能の復活と離島の救出作戦

 潜水艦の出航準備が整うまでは、もう少し時間がかかるようだ。潜水艦は間違いなく動くらしいのだが、どうやら乗組員に対しての訓練をしないと動かす事すら出来ないのだとか。また大量のゾンビを駆除する事に成功した自衛隊員達は、日本中にある石油の貯蔵庫のエネルギーを確保する。その事で電力の供給が更に安定し、防衛する為の機械が動かせるようになった。


 俺達はヨシズミ一尉に呼ばれ、京都の舞鶴基地へと来ている。そこで見せられたのは様々な機械で、それをもってすれば敵の動きがある程度わかるというのだ。


 ヨシズミは言う。


「各地のレーダーが復活しました。これによって近隣を飛ぶ航空機や船舶を捉える事が出来ます」


「そいつは凄いな。守るのに敵の動きを知る事は重要だ」


「はい。おかげで我々も大分動きやすくなりました」


 そして更にヨシズミが俺に見せたものは、画面に映った地図のようだった。


 それを見たクキが驚いたように言う。


「衛星をつかまえたのか?」


「はい。日本の防衛用の衛星が生きていました」


「それはかなりデカいぞ。レーダーの復活より更に使える」


「ええ。これからあなた方が世界にうって出るのならば、これほど強い味方は無いと思います。衛星通信も可能となりました」


「でかした。流石は第一航空師団だな」


「特殊作戦群の隊長に言われると嬉しいですね」


「元、な」


「伝説です」


 そしてクキがヨシズミに聞いた。


「てことは離島に行けるな」


「はい。現在、隣国の哨戒パターンを読んで、出撃のタイミングを計っていました。そこでお声がけした次第です」


「つーと、どんな感じだ?」


「夜間には哨戒機は飛ばず、艦艇も近づかない時間帯があります。その時間を利用して作戦を進めましょう」


 俺がヨシズミに聞いた。


「あまり時間もない。それに俺達は既に準備も終えて、仲間は銃火器の使い方も覚えた。いつならいける?」


「今夜にでも」


 それを聞いて仲間達が顔を見合わせた。そして俺がみんなに聞く。


「今夜決行する。参加する者は申告してくれ」


 聞くだけ無駄、十三人全員が挙手をした。


「わかった。すぐに準備に取り掛かろう」


 するとヨシズミが言う。


「装備はこちらで用意しました。皆さんの格好では動きづらいかと」


 そう言って濃い緑の、自衛隊員達が着ている服を見せて来る。


「いや…俺はこれでいい」


 いつものル〇ヴィ〇ンで行く事を告げた。


「まあ黒ですから問題ないかと。出来れば中のシャツを黒にする事を提言いたします!」


「中のシャツは変えてもいい」


「わかりました。他の人達は?」


 するとユリナが言った。


「さすがに用意していただいたものを着るわ」


 それに全員が同意する。皆が着替えて出てくると、遠目では自衛官と見分けがつかなくなりそうだった。


「ではウォーペイントをします」


「なんだそれは?」


「顔を黒や緑に塗って、闇に同化する化粧です」


「それは俺もやってみよう」


 そして俺達は自衛隊員から、顔を塗られ皆が緑と黒の顔になった。九歳のアオイも多分に漏れず、同じ化粧をしている。


「なるほど。視覚的に誤魔化せるわけか」


「はい」


 準備が終わり自衛隊から作戦を聞いた。夜間の敵軍が動かない時間帯を確認した俺達は、鳥取県まで移動し整備し直した敵の上陸用舟艇にて待機する。すると船に無線が入って、ヨシズミからの指示が入った。


「作戦開始です」


「了解」


「御武運をお祈りいたします」


 船舶はユミが操舵する。ユミは元々船の操縦が出来たのだが、俺が書き換えてからはその能力に磨きがかかったらしい。さらにユミは星を読み取って方角を正確に知り、更には風を読み取る力を手に入れていた。それによって海上の違和感をいち早く察知する事が出来るようになった。


 俺達の船は夜の海を進み、正確に隠岐の島周辺にたどり着く事が出来た。これもユミの能力のおかげだという。


「知夫里島が見えたわ」


「上陸準備だ」


「「「「「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」」」


 俺達は先に隠岐の島のそばにある知夫里島の岸壁に上陸した。そして闇の中を走り村に向かって進む。ここには六百人からの島民がいるらしいが、果たして生き残っていてくれているだろうか?


 すると街の奥の、岸壁の方に人の気配を多数感じた。


「人がいるな。固まっている、だがゾンビがいない」


 それにクキが答えた。


「恐らくは敵国が駆除したんだろ」


 するとミオが言った。


「灯りが見えるわ」


 見ると岸壁の方に灯りが見えた。


「ありゃ軍人だな」


「行こう」


 俺達がヒタヒタと忍び寄り、船舶が止まっている場所に行く。


「皆は待っていてくれ。敵兵を制圧してくる」


 ヤマザキが言った。


「ヒカル。皆殺しにはするな、聞かねばならない事がある」


「わかった」


 そして俺は軍人達がいる場所へと向かった。どうやら敵が来るなど夢にも思っていないらしく、談笑しながら遊びに興じているようだ。俺は視覚に入っていない、海に小便をしている奴に刺突閃を繰り出す。するとそいつはぐらりと倒れ海に落ちた。座っている奴らが、そちらを気にする素振りをするが、また談笑を始めた。


 ヒタヒタと近づき、そいつらから三メートルの距離に潜み様子を見る。そして気配遮断魔法をかけて、そいつらの真後ろに立った。そこで俺が日本語で声をかけた。


「何をしている?」


 突然の日本語にそいつらは慌てて振り向くが、次の瞬間ごろりと全員の首が転がった。俺はそのままそいつらからはなれて、そばにある大きめの天幕に侵入する。そこには機器が並び、中には数名がいて話をしていたところだった。俺は機械を壊さぬように、そこにいた全員を静かにさせる。


 そのまま天幕を出て港にいる軍艦に向かった。軍艦も特に警戒はしていないようで、すぐに侵入する事が出来た。艦内に人の気配がするが、そのひとつひとつを潰して行き、クキに言われた通り最後に艦橋に入り込んでいく。そこで俺は乗組員に声をかけた。


「随分余裕があるな」


 そいつらは驚いて振り向いた。何やら俺に叫んで銃を構えようとするが、縮地でそいつらの側に近づいて意識を刈り取っていく。人の気配はそれで全部だった。俺は甲板に出て、懐中電灯を取り出し仲間に向かってクルクルと回した。しばらくすると仲間が船の階段から登ってくる。


「これで全部か?」


「そのようだ。後は静かにしてもらった」


「そうか」


 そして仲間達はロープを持って来て、そいつらを後ろ手に縛り足をぐるぐる巻きにした。そこでクキがバッジを見て言う。


「ヒカル。コイツを起こしてくれ。恐らくはこれが艦長だ」


「ああ」


 俺が一人を起こしてやると、クキがそいつに尋ねた。もちろんよその国の言葉だが、思考加速と言語習得の力で何を言っているかくらいは分かる。


「お前達はここで何をしている? ここは俺達の国だ」


「な、なんだ! お前達は!」


「日本人だよ」


「に、日本人! 隠れていたのか?」


「はあ? この島にいた日本人はどうした?」


「ゾンビに変わる前に消した」


 そいつは悪びれずに言った。ゾンビ因子に感染している者は殺して当然だと思っているらしい。


「まあ、俺も少し前まではそれが正解だと思っていたがな。彼らは治る人らだったんだぞ」


「治る? ゾンビに感染したら二度と治らない! 処分するのが当たり前だ!」


 するとミオがクキに言った。


「九鬼さん。それが今の世界では常識なのか聞いてほしい」


 どうやらミオにもその言葉が聞き取れたらしい。


「まあ多分な。俺や傭兵達も皆そう思ってたしな」


「でも聞いて欲しい」


「ゾンビ感染者は殺すのが世界の常識か?」


「そうだ! 当たり前じゃないか! 感染者を増やしたら世界は終わるんだぞ!」


 それを聞いてミオはがくりと肩を落とした。すると周りの人がミオに聞いた。


「その人、なんて言っているの?」


「ゾンビ因子を持っている人間は殺すのが、今の世界の常識なんだって」


「そんな」

「嘘だろ…」

「嫌だ。そんなの」

「そんなことがまかり通っているなんて…」


 それを聞いてクキが兵士に言った。


「まあいい。だが何故、人の国にまで来てそんな事をする?」


「……」


「言え!」


「わ、わかった! 二つある!」


「なんだ?」


「一つは近い隣国なので、ゾンビ因子を持ったものが我が国に入り込まないようにする為だ」


「もう一つは?」


「ゾンビ騒動が落ち着いた時に、実行支配する為だ」


「一つ目は分かる。もう一つの理由はクソだ」


 そう言ってクキが銃をそいつの頭に突き付けると、そいつは開き直ったように言う。


「馬鹿が! お前達日本は終わったんだ。島国でほとんど全滅したと聞いている」


「終わっちゃいねえよ」


「わずかに残った人間で何が出来るというのだ!」


「知らんけど、それを決めるのは俺達であって他国の人間じゃない」


 だがそいつはそれを聞いて、懇願するようにクキに言った。


「…なあ、私を助けてくれたら、我が国にお前達を受け入れるように言ってやってもいい」


「はあ? なんでお前の国なんかに行かなきゃならねえ?」


「な、何を言っているんだ? ゾンビランドにいて何をするつもりだ?」


「ゾンビランドだろうがお前らの国にお世話になるよりマシだ」


「馬鹿じゃないのか?」


 するとクキが俺に向かってどうする? って表情をした。


「全員を船首に括りけよう」


「プッ! マジで?」


「いたって真剣だ。まずはこの船を頂いて隠岐の島に向かう」


「了解」


 すると日本語の分からないそいつが言う。


「お、おい! 俺達をどうするつもりだ?」


 クキが言う。


「飾りにするってよ」


「か、飾り?」


 そして俺達は艦橋にいた奴らを、船の先端に結び付けその船で隠岐の島に向かうのだった。

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