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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第五章 救世主編
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第288話 光る神戸ポートアイランド

 東京都同様、大阪市に生存者は発見できなかった。膨大な量のゾンビがおり人が生存している可能性は低い。都市の奪還は時間がかかりすぎると判断し、物資の回収だけを目的とした。物資回収を終えた俺達は、都市から出て今日の宿泊場所を探す事にする。


 トラックに乗り込むとミオが言う。


「大阪と言えば六甲山に行ってみない?」


「そうだな。まずは山にあがった方がゾンビも少なくていいだろう」


 それを聞いていたクキが言う。


「監視のしやすい場所に陣取ったほうがいい。都市部はファーマ―社が占有している可能性もあるからな」


「すぐに出発だ」


 俺達のトラックは都市を離れ、六甲山に登っていく。六甲山の標識を確認しつつ、トラックは順調に進み一時間もせずに展望台へと到着した。そのころには周辺は薄暗くなっており、俺が周辺のゾンビ狩りまくっている間に、皆が宿泊場所を確保してくれた。


「食料も十分あるし、すぐ夕食にしましょう」


「そうね」


 大阪市で回収した缶詰を開けて、ペットボトルの水を片手に食べ始める。やはり東京都と一緒で、あっという間にパンデミックが起きた結果、あちこちに無傷の食料があったのだ。トラックにも大量に積み込んでおり、しばらくはこれで食いつなぐ事が出来るだろう。


 そしてヤマザキが言う。


「神戸にセーフティーゾーンが作れればいいが」


「うーん。神戸も人口が多いのよね、ゾンビだらけだと思うわ」


「だろうな」


「神戸にセーフティーゾーンを確保できたら、ヘリコプターに戻って更に先に進もう。ゾンビが多すぎて生存者が確認できない場合は、放棄して進むしかない」


「そうしましょう」


 話し合いながらの夜の食事が終わり、監視もかねて展望台から市街地を見下ろした時、都市の一部が光り輝いているのを発見した。それを見たミオが言う。


「ヒカル! あれファーマ―社かな?」


「わからん。だが都市部にあれだけの光が灯るとなると、その可能性は高いかもしれん」


 一つや二つではなく、あちこちに光が灯っているのだ。ファーマ―社と断定はできないが、その可能性は高いような気がする。するとそれを見たクキが言う。


「あれは電気の光じゃない。恐らくは焚火の光だぞ」


「焚火?」


「そうだ」


 それを聞いたヤマザキが言う。


「まってくれ。ファーマ―社なら電気を使うんじゃないのか? 焚火なんて原始的な方法をとるのは一般人の可能性もあるぞ」


「そうだな」


 そしてミオが地図を懐中電灯で照らして見る。指で追いながらそれが何処なのかを突き止めた。


「多分、位置からすると六甲アイランドかポートアイランドのどちらかだわ」


 俺が皆に言った。


「皆はここで待ち、俺が偵察してくるか?」


 するとクキが言う。


「いや。全員で行った方がやれることが多い。現地についたら、先行して調査をするのはヒカルで良いにしても、すぐに動けるように近隣まで全員が下りた方が良いだろうな」


「わかった」


 俺達は急いでトラックに乗り込み、せっかくのぼってきた六甲山を降りていくのだった。都市部に降りた俺達は、そのまま湾岸沿いに向かって進んでいく。


「やっぱゾンビ多いぜ」


「そのようだ」


 夜道を歩くゾンビをトラックで轢き潰しつつ進むが、どんどんゾンビが増えてきた。人口が多いと聞いていた通り、ゾンビが群れを成している。


「このままだとトラックが動かなくなるな」


「分かったクキ。俺が処分する」


 俺はトラックを降りて腰だめに剣を構えた。新たに身に着けた魔気を身にまとい、従来通りの剣技に新技を加える。


「飛空蘇生斬」

 

 俺を中心に剣撃が伸び、視界に入っているゾンビがバタバタと倒れていく。万が一、試験体が紛れていようがお構いなしで、この剣撃にやられれば全てのゾンビ細胞は崩壊する。残るのは真っ二つになった人間の死体だけだ。


「ついてこい」


 俺が走るとトラックが後ろをついて来た。神戸の街はそれほどにゾンビが多く、そのまま進めば車輪に巻き込んでしまい進めなくなるだろう。次々に現れるゾンビを全て倒し、俺達は巨大なパーキングエリアにトラックを止めた。


「行くぞ」


 皆が武装をし、俺が前を進んでゾンビを斬り落としつつ進む。そして岸壁にたどり着くと、海の先で焚火が燃えているのが分かる。クキが暗視ゴーグルをつけて先を見渡した。


「橋にバリケードが作られていて、人がいるぞ」


「ファーマ―社か?」


「どうかな? 銃は持っているようだが、恐らく警戒しているのはゾンビだ」


「ならば対岸が見渡せる背の高いビルを探そう」


「わかった」


 俺達が周辺を探した結果、背の高いホテルを発見した。俺達はそこに侵入し、最上階に向けて階段を登り始める。真っ暗な中で懐中電灯の明かりがゆれ、時おり出て来るゾンビは各自が撃破した。最初の頃は全て俺がやっていたが、今では皆がゾンビなど敵だと思っていない。最上階について見下ろすと、あちこちで焚火が焚かれており、警戒用の櫓があちこちに建てられているのが分かった。


 それを見たクキが言う。


「あのやり方は、ファーマ―社じゃねえな…」


「一般人と言う事か?」


「いや。違うな」


「プロか?」


「その可能性は高い」


「何者だ?」


「恐らくだがな…自衛官がいるぞ」


 それを聞いた皆が動揺した。


「九鬼さんよ。自衛隊は薬で全滅したんじゃないのか?」


「わからん。しかし、俺の勘だがあそこには自衛官が混ざっている」


「敵だろうか?」


「そいつはわからん。何のためにあそこにいるのか、一般人が一緒にいるかもしれんしな。下手に動くのはやめて、ひとまずここで監視し状況を把握する必要がありそうだ。朝になれば双眼鏡が使えるようになる。もっと詳細が分かってくるはずだ」


「わかった」


 俺達は高層ビルの最上階から、朝までポートアイランドを監視する事にしたのだった。

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