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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第五章 救世主編
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第286話 日本国民救出作戦始動

 ゾンビ破壊薬に引き続いて出来た薬は、生存者に向けての物だった。新しく開発したその薬は、一度体内に入れるとゾンビ因子をゆっくりと退治してくれるのだという。ミシェルが言うには、ミヤタが残した遺伝子治療の技術が反映されているらしい。俺がやるゾンビ因子除去魔法とは違い、長い期間をかけて体内のゾンビ因子を取り除いていくが負担はないそうだ。更には遺伝子や細胞を変化させる事無く、元の体に戻して行くのだとか。


 タカシマが俺に聞いて来る。


「どうかね?」


「これは良いぞ。日本人の寿命を延ばすために、早くこれをばら撒こう」


「もちろんだよ。実はすでに生産に入るところだ」


 するとユリナが言う。


「この短期間で良く出来ましたね」


「だがヒカル君に除去された時の様に、不思議な力は獲得できんだろう。あくまでもゾンビ因子除去に留まる」


「上出来だ。むしろ俺が書き換えた場合、将来的な影響がわからん。元に戻れるのであれば、それに越したことはないはずだ」


「そうかもしれんね」


 それにミシェルが答える。


「まずは正常化が最優先だと思うわ。まあ確かにミスターヒカルから施術された事で、私もドクター高島も、物凄いひらめきが得られるようになったわね。今まで思いつかなかったことが、嘘のように頭に降りてくるのよ。これが将来的にどうなるかは分からないけどね」


 間違いなく思考加速が働き始めている。彼らは気が付かないだろうが、スキルが発動し始めているのだ。


「みんなと同じようになって来たというわけか」


「これが、ミスターヒカルが言っていた力なのですね」


「そうだ」


「ヒカル君。どうやら生徒達もかなり活性化して来たらしくてね、私から見ても天才なんじゃないかと言うひらめきをもった子がいるんだ」


「良い事だ。日本の復活の為になる」


「そうだね! 素晴らしい事だよ!」


「ただし、この話はここにいる者達だけの秘密だ」


 俺が言うと皆が頷く。そして仙台の代表者が言った。


「我々は、ゾンビ破壊薬とこの新薬を持って救出に行きます。一刻も早く多くの人を救わないと」


「そうだな」


 薬品の話が終わり、それを踏まえた計画の話に移る。全員が同じ目標に動いており、だいぶ加速がついて来た。この新薬が確保でき次第ヘリに乗って各地に飛ぶ事になる。ここにいる皆の目が、以前とは比べ物にならないほど輝いていた。


 そしてひと月が経つ。


 航空自衛隊松島基地に集まった俺達は、出発前に打ち合わせをしていた。くれぐれも太平洋湾岸を飛ばない事、なるべく低空で進む事、そしてそれぞれが目的地に着いてからする事の再確認を行う。


 集まった人達は決死の覚悟で集まっていた。まだセーフティーゾーンになっていない地域に飛ぶのだから無理もない。そこでクキが皆に言った。


「無理はするな。生きていれば、何度でもチャレンジできる。やるべき事を再確認するぞ! ひとつ目はゾンビ破壊薬をまんべんなく振りまき、銃を持った少人数で最初に都市に降りる。そして上空のヘリから援護しつつ、周辺の安全状況を確認する事。二つ目は生存者を呼び寄せる為の拠点を確保し、生存者が集まるのを待つ事。もし集まって来なければ、ゾンビが集結してくる前に脱出して戻る。三つ目は二つ目が成功し生存者が現れたら、協力を取り付けて太陽光発電を復活させ、電話の局舎にゾンビコントロールプログラムをインストールする。四つ目でようやく生存者達の治療活動だ」


「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」


「必ず順番を守れ。一つでもイレギュラーが起きたら、計画は断念し仙台に戻る事」


「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」


「以上!」


「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」


 そして救出部隊はそれぞれのヘリコプターに分かれて行った。俺はクキに向かって言う。


「大したものだな。随分統率が取れているみたいだ」


「まあ…俺の本職だしな。皆が真剣だから良かったよ。まさかここにきて自衛隊隊長時代の能力と、傭兵の部隊長の時の能力が役に立つとは思わなかった」


「良い統率力だと思う」


「そうか?」


「恐らくだが…」


「なんだ?」


「それがクキのスキルだ。多分だが統率者系統のスキルが発動してきている」


「統率者系のスキル? なんだそりゃ、訓練が役に立ったか?」


「かもしれん」


 でなければ、素人が短期間であれほどの組織力を持って動くようにはならない。普通に教えただけでは、ひと月やふた月で出来るような芸当では無いからだ。


「元より、隊でもリーダー職が多かったからな、向いていたんだろう」


「なるほどな」


 そして俺も仲間に向けて言った。


「皆も、準備はいいか?」


「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」」


「他の連中は小規模の都市に向かって行った。俺達はこれから、新潟から富山を経由して京都に向かう。目的は生存者のセーフティーゾーンの確保、生存者の治療だ。タカシマとミシェルの薬のおかげで、だいぶ効率は良くなっている。薬を無駄にせずに作戦を完遂させよう」


「「「「「「「「了解」」」」」」」」」


 そして俺達は松島基地にあったチヌークヘリで、一路、新潟へと向かう。低空を飛んで山形に抜けそこから南下した。山岳地帯を越えて行くと眼前に平野が広がる。京都から来た時も通過したが、今回はここで降りる事になる。


 そしてクキが行った。


「よーし。航空自衛隊新潟基地が見えて来たぞ」


「自衛隊? 九鬼さんよ、なんだか普通の旅客機があるみたいだぜ」


「新潟空港に隣接してるんだよ」


 そして海を眺めていたミナミが言った。


「潜水艦は入ってきてないわよね?」


 それを聞いたクキが答える。


「日本海側にスパイはいなかったからな。恐らくは露中朝の三ケ国が目を光らせているんだろう。いかにゾンビ国家となった日本対策とは言え、自分の国の庭を好き勝手に泳がせるほど、気を許しちゃいないだろうからな。恐らくは日本にゾンビが蔓延った事で、より一層警戒を強めていると思う。次の標的にされちゃ敵わんからな」


 それを聞いたユリナが言った。


「まったく。どの国も日本を助けようとしないなんてね。ゾンビが蔓延る前は、日本から搾り取るだけ金を搾り取ったくせに」


「その通りだな。クソってこった」


「同感だわ」


 皆が頷く。


 どうやら日本と言う国は、ゾンビで壊滅する前は金をせびられていたらしい。その上にゾンビだらけにされちゃ怒り心頭だろう。


 俺がボソリと言う。


「見返してやるんだ。この国は凄い人がいっぱいいる。絶対に諦めるな」


「「「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」」


 俺は皆の掛け声を聞きながら、ハッチから飛び降り新潟空港へと飛び降りて行くのだった。

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