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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第五章 救世主編
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第274話 新スキル習得の為に

 自衛隊の演習場と言うだけあって広大な土地には建築物も無く、俺の技の開発には最適な場所だった。レベル千を超えてから、新たに技を習得する事になるとは思わなかったが、あの新型の試験体を討伐する為には新たな能力が必要となる。


「武器さえあれば」


 日本刀も優れた武器ではあるが、せめて素材がミスリル鉱であったならと思う。強度的にミスリルよりも強いとは思うが、剣技には耐えられても魔力の伝達となると難しい。日本刀の素材がミスリルかオリハルコン、もしくは神器であったならもっと多くの技が使えた。そもそも、あの試験体など前世の魔獣のレベルから考えたら低い部類だが、あの機械的な回復能力が厄介だ。日本刀でもあれに対抗できて、連続使用できる技を編み出さねばならない。


 俺は日本刀をかまえて、周りに何もいない事を確認し精神統一する。俺の体から静かに炎のようなオーラが上がり始め、更に体内で魔力を練り込んでいく。精神を集中させ覇気をまとい、深く息を吸い込んで、酸素を体中に巡らせながら魔力と気を一段階上げた。ドン! と音がして、大きく魔力と気が膨らむ。すると周辺の地面がぶくぶくと沸騰し始めた。周囲に人がいれば既に危険な領域に入っているが、俺は更にもう一段、気と魔力をあげる。ゴウッ! と大気がうねり、周辺の空気が高温になって揺らめき始めた。


 そして俺が持つ剣技全てと魔剣全て、新たに身に着けた回復魔法と蘇生魔法を脳内に浮かべる。それらが流れるように動き始め、最適な剣技と魔剣を選び出した。そこに蘇生魔法を付与してみる。パン! それは相反する為に弾かれてしまった。俺は再び違う剣技と魔剣を選び出し、再び蘇生魔法を付与してみた。パン! やはり全く違う能力の融合は一筋縄ではいかない。


「力が足りないか?」


 俺は更に魔力と気を一段階上げる。ドゴン! と強烈な音がして、俺を中心に十メートル四方の地面が沸騰し始めた。そしてまた違う剣技と魔剣を選び出し、蘇生魔法を付与してみる。バリン! それでも融合できなかった。


「ならば」


 俺はもう一段階魔力と気を上げた。ズゴゴゴ! と俺を中心に五十メートル四方が沸騰し、俺の体がクレーターの中心に沈み込んでいく。再び剣技と魔剣を選び出し、蘇生魔法を付与してみるが上手くいかなかった。この手法でうまくいかない事を確認した俺は、違う手法を試してみる事にする。それは初めての手法で、今までは必要なかったからやっていなかった事だ。


「魔力と気を融合してみるか」


 練り上げた魔力と気を融合してみるが、それらもうまく融合する事は出来ないようで、魔力が気に弾かれている。俺は魔力だけを更に練り上げ力を増してみる。すると魔力と気の波長が合い始めた。


 更に魔力と気を一段階上げるしかないが、それ以上は兵舎まで被害が及ぶだろう。もう一段階力を上げると、さらに俺の力の及ぶ範囲が広がっていく。この場所で俺が解放できるだろうギリギリの力だ。そして魔力と気の波長を合わせて、融合を試みた時だった。カッ! と光り、俺を中心にして衝撃波が広がっていく。しかし次の瞬間、周辺のうねりが突然安定した。


「よし」


 うまく融合してくれた魔力と気は俺の周りをクルクルと回り始める。そこで再び剣技と魔剣を選定し、蘇生魔法を付与してみた。すると先ほどとは違う反応が現れ親和性が見え始める。そこで俺は剣技の種類を変え、魔剣の種類を変えてしていくうちに完全に一致するものが出た。


「次は」


 そこに俺はゾンビ因子除去魔法を付加してみる。すると蘇生魔法と入れ替わるように、それが融合し始めた。まるで生き物がうねり、水が混ざり合うようにして俺を中心に天に光が昇って行った。だが完全に融合させるためには、もう一段力を上げる必要があった。


「仕方がない」


 ズドドドド! 恐ろしいほどの力がうねり、光り輝いた先に新しい剣技が生まれた。


 ギリギリだったが、俺は次の瞬間一気に力を制御して制止する。


「よし。出来た」


 久々に魔力と気力を五割ほど解放した為、筋肉がふくらみ体の温度が上昇している。しかし一度出来た事はいくらでも応用できるようになる。魔力と気力を分ける事のない、魔気を身にまとう事が出来た。更にそこに新しく体得した、蘇生魔法の種類を付加できるようになったのである。


 俺の脳内には新しい種類が並んでいた。


『魔気』『屍人斬』『蘇生斬』『原子裂断』


「レベル千からでも新しく技が作れるとはな。何かがつかめそうだが、恐らく俺はもう一つレベルが上がったらしい」


 技を確認した俺が皆の待つ兵舎に走ると、兵舎の前で伏せっているタケルとミオとクキがいた。


「すまなかった」


 タケルが起き上がりながら言う。


「な、どうしたんだヒカル? 服がボロボロだぞ」


「ちょっとやる事があってな。替えの服があるから大丈夫だ」


 そしてクキが言った。


「爆弾でも落ちたのかと思ったぞ。ありゃいったいなんだ?」


「すまん。新しい技の習得が必要だった。俺の体をかなり活性化させてしまったからな」


「まるでサーモバリック弾が破裂したようだったぞ! 兵舎を見てくれ」


 俺が兵舎を見ると、こちら側の窓がすべて割れてしまっていた。俺は焦って言う。


「皆は大丈夫か!」


 ミオが言う。


「見にいかないと! 私達も立っていられなかったから分からないの! ミナミが走って行ったわ」


 俺達が急いで兵舎に入ると、皆は他の部屋に避難してミナミが剣を構えていた。


「ヒカル! 敵襲なの?」


「すまん。違うんだ。新しい技が必要になって開発したんだが、その影響だ」


「ヒカルが原因なの?」


「そうだ。すまない」


 そう俺が言うと、皆がホッとした表情を浮かべて床にへたり込んだ。


「よかったぁ」

「敵だと思っちゃったよ!」

「ミスターヒカル。本当に大丈夫なの?」

「本当に良かった」


 ヤマザキが言う。


「てっきりファーマ―社の爆撃かと思ったよ。地震も起きたが、あれもヒカルが原因かい?」


「そうだ」


 ユリナが力が抜けたように言った。


「もうファーマ―社に嗅ぎつけられたのかと思ったわ。それでヒカル、技の習得は出来たの?」


「ああ。問題ない、日本刀が不足しないようにと思ってな」


「そんな事が出来るのね」


「だがさらに力解放の階力を上げれば、この自衛隊演習場は消え去っていたかもしれない。ギリギリのところで止めるつもりだったが、うまくいった」


 するとタケルが言う。


「上手くいった、つーんなら全て良しじゃねえか? それで試験体の対応できるんだろ?」


「出来る」


 それを聞いて皆が笑顔を浮かべた。そして俺がタカシマに聞く。


「それで、研究に進展はありそうか?」


「ああ。ヒカル君、宮田君は凄い事をしてくれた。私の技術と合わせれば、かなり面白い事になるだろう。理論上は人体に影響なく作れるが、実用化するには大量生産できる拠点が必要だ」


「それはどうすればいい?」


 それを聞いたミシェルが言う。


「大きな薬品工場を稼働させましょう」


「どこにあるか知っているか?」


「オダワラにある」


 それを聞いたミオが言う。


「そこなら近いわ」


「決まりだな」


 俺達の次の目的地は、小田原にあるという薬品工場に決まる。するとクキが言う。


「小田原なら車両で行った方が良いかもしれん。敵の状態が分からない以上は、ヘリの使用を控えた方が良いぜ。幸いこの演習場には、いろんな車両があるからな。それを回収して行くと良いだろう」


 クキの言葉に皆が頷いた。そして俺が言う。


「ならば夜間に動こう。ひとまずここで休む事をすすめる」


 クキが頷いた。


「ヒカルの言うとおり休むのも仕事だ。夜まで休息しよう」


 皆が納得し、夜になるのを待つことにするのだった。

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