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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第五章 救世主編
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第262話 自衛隊のヘリコプター

 基地の外にゾンビが集まって来た事を皆に伝えようとした時、屋上に吊るしている男達から先に声が上がった。屋上付近にいる為、見通しが良くて先に視認出来たようだ。


「お、おい! お前ら! 奴らが集まって来たぞ!」


 それを聞いて俺が仲間に言った。


「ひとまずゾンビを処理してくる。皆は先にヘリコプターを探してくれ」


 するとそれを聞いたクキが言う。


「ん? 別にそのままでいいんじゃないか? それより、このままヘリを探して良いと思うがな」


「そうか?」


「こんなところ、とっとと出ちまった方が良い」


「…なるほど。わかった」


 話がついて俺達が先に進もうとした時、上に吊るした連中が大きな声で騒ぎ始める。


「おい! どこ行くんだ!」

「早く降ろしてくれ!」

「逃げなきゃ!」

「敷地に入って来たぞ!」


 するとヤマザキが俺に聞いて来る。


「あいつらはどうするんだ?」


「「放っておけ」」


 俺とクキが同じ返事をしてしまった。どうやらこいつも同じ考えでいたらしい。そのまま俺達が先に進んでいこうとすると、吊るされた男達が焦って更に声を張り上げた。


「まてまて!」

「おい!」

「こら!  降ろせ!」

「行くな!」


 タケルが大声でそいつらに言う。


「おーい。あんまデカい声出すと、どんどんゾンビが集まってくんぞー」


「だから! 早くほどいてくれ!」


「わりぃな! うちのアニキは解く気がねえみてえだ。せいぜい頑張れや」


「まて!」

「解け!」

「おぃぃぃ!」

「待ってくださいぃぃ!」

「助けてくださいぃぃ!」


 既に俺達の耳に、その言葉は届いていなかった。俺達は基地の奥に進んで滑走路に出る。するとクキが周辺を見渡して言う。


「恐らくあの格納庫だ」


「よし!」


 身動きの取れない女の救出者達は、俺とクキとタケルが背負い、辛うじて歩けるものは女達が肩を貸した。格納庫内部には数体のゾンビがいるようだが、扉が閉まってて外に出られなかったのだろう。


「ゾンビを始末する」


 俺が先に入り、早々にゾンビを処分した。するとクキがゾンビの死骸を見て言う。


「元のお仲間だ。自衛官らだな」


 手を合わせて拝んでいる。そしてタケルが奥を見て言った。


「おお! 良いのがあるな! すげえデカいぞ!」


 それは今まで見たヘリコプターより大きかった。それを見てタケルがクキに聞いた。


「これを飛ばせるのか?」


「ああ」


 それを見たミナミが興奮気味に言った。


「うわっ! 自衛隊のチヌークヘリじゃない! 凄い」


 するとクキが返す。


「お! ねえちゃんこれを知ってるのか?」


「まあね」


「とにかく外に出す必要がある。格納庫の扉をあけよう」


 それには俺が答えた。


「任せろ! 扉を飛ばす」


 日本刀を腰にかまえて、扉に向かう。


「推撃」


 扉が外側に吹き飛んだ。それをみてクキが言う。


「もっと時間がかかると思ったんだがな」


「急いだほうがいいだろう?」


「よし! みんな乗り込め!」


 クキがハッチを開き中に乗り込むと、皆が後に続いて乗り込んだ。そして俺は皆に言う。


「露払いをする! 滑走路内にゾンビが入ってきているようだ」


「わかった!」


 チヌークヘリがゆっくりと動き出し格納庫から出る。俺は滑走路に入り込んで来たゾンビ達を斬った。滑走路に出たチヌークヘリは、ゆっくりと羽を広げていく。そしてその羽が周りだし、回転速度を上げて言った。


「ヒカル! 乗って!」


 俺もハッチから乗り込み、チヌークヘリが飛び立つのをゾンビ達が見上げて手を伸ばしている。そして俺はクキに言った。


「クキ! すまんが装甲バスの所に寄れるか? 物資を全て運び出したい!」


「わかった!」


 チヌークヘリが建物を周っていくと、屋上に吊るされている男達が目に入る。するとクキはそいつらの前に飛んで空中で止まった。救出した女達が体を起こし、男らに向かって罵詈雑言を吐いた。


「死んじまえ!」

「クズが!」

「お前達なんか生きてても意味が無い」

「ばーか!」


 思い思いの言葉を投げつけると、男らは俺達に向かって行った。


「頼む! 連れて行ってください! 許してくださあい!」

「心を入れ替えるからあぁ!」

「あ、アイツらが群がって来たあ!」

「おいて行かないでえ!」


 吊るされた男達の足元に、どんどんゾンビが集まって盛り上がってきていた。あまり叫べば更にゾンビが集まり、いずれ男達の高さに到達してしまうだろう。更にチヌークヘリが飛んでいるので、その爆音で次々にゾンビがやってきていた。


 操縦席のクキが言う。


「姉ちゃんら! アイツらの事は到底許せないだろうが、少しは胸が晴れたか?」


 女達は興奮しながらも頷いている。


「よし!」

 

 もう誰も泣いてはいなかった。むしろ吊るされた男達の方が泣きさけんでいる。そしてチヌークヘリはそのまま装甲バスの上空まで来た。そこで俺が言った。


「クキ! ここに浮かんでいられるか?」


「問題ない。もう少し高度を落とすか?」


「いや、何があるか分からんからな。ここで良い」


 するとミナミが俺に言った。


「ロープあるけど使える?」


「そいつは良いな」


 俺はロープの反対側を扉の側に引っかけて、そのまま飛び降りた。装甲バスの上に飛び乗って、日本刀で屋根をスッパリと切り裂く。屋根を全て取り去り、そのまま装甲バスに入ってロープに日本刀と食料を括り付けた。


「タケル! 上げろ!」


「よっしゃ」


 かなりの重さがあると思うが、タケルはあっという間に引き上げた。上空にヘリがいる事でどんどんゾンビが集まってきている。装甲バスは集まったゾンビ達にゆさゆさと揺られるが、俺はかまわずタケルに言った。


「ロープを降ろせ!」


 再びロープが降りて来たので、残りの日本刀と食料を括り付ける。


「上げろ!」


「あいよ!」


 タケルが再び馬鹿力で上げた。僅かに残った物は俺が抱え込んで、上空のチヌークヘリに飛ぶ。


 するとリコが言う。


「あのバスともお別れね」


「いろいろ思い出があるよね…」


「なんか寂しいなあ」


 そしてアオイが装甲バスを見下ろして言った。


「いままでありがとう!」


 それを聞いて皆が装甲バスに手を振る。


「クキ! 出してくれ」


「了解だ」


 そして俺達はお世話になった装甲バスに別れを告げ、小牧基地を離れ京都に向かって飛ぶのだった。

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