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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第四章 逆襲編
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第226話 僅かな外国の情報

 徹底的に調査した結果、宮城県の湾岸沿いにファーマー社の影は見つけられなかった。あの福島第一原子力発電所の一戦で、軍は東北近辺から撤退したのではないかと推察される。またオオモリが作ったゾンビ操作プログラムが、試験体に対して効果があるのかも分からない為、万が一に備えて新たに開発を進めていた。


 生存者の数も日に日に増え始め、今ではゾンビを運ぶトラックの台数も増えてきている。各地区に数か所設けられたゾンビ焼却場では、今日も黒い煙が立ち込めていた。そんな中で、俺達は不思議な情報を掴む。


 それを知ったのは、タンカーの中にあった衛星通信網を使ったインターネット回線。操舵室で皆が見ているパソコンには、いろいろな情報が映し出されていたのだった。その一つを見てマナが言う。


「大森君。これはどういうことかしらね?」


「普通に商いをしているように見えますね?」


 俺が尋ねる。


「どう言う事だ?」


「恐らくこれは衛星回線を使った、企業内の専用回線らしいの。ロシア語だから良くは分からないけど、日付や金額などが記された帳票が見えるようになっていて、その日付を見れば今日も更新されたみたい」


「と言う事は、今も普通に商売をしているという事か?」


「そうなるわね」


 世界はゾンビで破滅しているという話だったはずだ。だが今日の日付で記録が更新されているとなれば、普通の活動をしている人間がいるという事になる。このタンカーを見る限りもその可能性も高く、俺達はそこに違和感を覚えていたのだった。


 それを聞いたヤマザキが言った。


「外国でも隔離に成功した場所があるんじゃないのか?」


「ゾンビをか?」


「ああ。ロシアのある地域で隔離が成功していて、普通に人間達が生きている場所があるのかもしれんぞ」


 そう言うと皆がざわつく。タケルが大声で言った。


「マジかよ! じゃあ世界には生き残った連中がいっぱいいるって事か!」


 そしてユリナが答える。


「もちろん、それは可能性大じゃない? 私達だってこうしているんだから、他国で無事な地域がある可能性は十分にあるわ。データでも数百万人が生きている可能性を示唆していたし。東北でこれだけの生存者がいるとなると、世界で生存している人は私達が思うより多いのかも」


「まだまだ捨てたもんじゃないって事だな! 更にやる気が出て来たぜ!」


「武! 調子に乗って怪我とかしないでよ」


「わーってるよ由美。俺は昔とは違う」


 しばらくしてマナが言った。


「電波が途切れた。恐らく衛星が裏に周ったのかも」


「そうか。だがいい情報が取れたな」


「生きる望みが出て来たわ。海外は全て壊滅したんじゃないかって思ってたし」


 ヤマザキが笑顔を浮かべて言う。


「日本も負けてられないな! 生き残った人らの協力もあれば、東日本の各地にセーフティーゾーンを作るのは夢じゃない」


「東京が核で焼かれたのは痛いわね」


「東京は情報網が集中していましたからね。東京のネットワークを復活させるのは絶望的でしょうね」


「でもね大森君、外洋ケーブルの終端地域に行けば繋げられる可能性はあるわよ」


「流石は愛菜さん。ネットワークは詳しいっすね」


「別に凄くもないわよ」


「で、その地域ってどこです?」


「確か、沖縄県の具志頭村と神奈川県の二宮町よ」


「マジっすか? そこまで分かってるんですね」


 よくわからなかった俺がマナに聞いた。


「何を話している?」


「ネットワークを回復させることが出来たって事は、他の地域でも可能って言う事よね? なぜかこの船からインターネットにつなぐ事は出来なかったけど、私が言った外洋ケーブルの繋がる地域に行けば、海外ともインターネットでコミュニケーションが取れるという事よ」


「それは、行くべきじゃないのか?」


「そうね」


 そこでヤマザキが言った。


「海外に救援要請するのもいいかもしれん。まあ他の国も手一杯かもしれんがな」


「俺達は日本を救う旅に出るんだ。ついでに回線を繋いで海外の状態を探る事も出来るだろう。早くしないと、ゾンビ因子が全ての国民をゾンビに変えてしまうかもしれんからな」


 既に助けた生存者の中には俺達の情報を知り、救援部隊を結成する動きも出ていた。オオモリとマナも惜しげなく、対ゾンビプログラムの情報を明け渡し、それを持って他県へと行こうというのだ。俺達だけでは限界だった場所も、多くの人達が動く事で加速するだろう。


 俺達がタンカーから降りて火力発電所を歩くと、そこで働く人達が手を振ってくれた。


 そしてユリナがみんなに言った。


「じゃあ仙台に戻って大学に向かいましょう」


「そうだな」


 俺達が大学に行く理由はただ一つ。救った生存者の中に、大学で薬学の研究をしていた人間が混ざっていたからだ。ユリナのような医療従事者が力を合わせて、対ゾンビ因子の抗生物質なるものを開発し始めたのだ。どうやら俺がゾンビ因子除去施術をした人間達の血液に、その鍵が隠されていたらしい。


 またファーマー社で入手したデータが大きく貢献し、そのカラクリが分かった研究者はどうすべきかを推測する事が出来たらしい。


「生存者にバイオ医薬や先端バイオの会社で働く人がいたのは大きかったわ」


「よく生き残ってくれていたものだ」


「日本はまだまだこれからね」


 そして俺達は装甲バスに乗り込み、薬品の研究をしている者達のもとへと向かうのだった。日増しに前向きな情報が集まってきており、閉鎖的だった俺達の未来は明るいものとなりつつあった。

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