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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第一章 違う世界
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第21話 ビルでの戦闘

 暗闇に紛れ何やら焦げた臭いがする方向へ進むと、入り口の扉が魔法か何かで爆破されていたようだった。焦げた跡やガラス片が飛び散っており、ねじ曲がった扉枠の残骸が転がっている。中に閉じこもった人らを追うために破壊して侵入したのだろう。


 俺はもっと広域に気配感知を広げた。


 なるほど…この建物内のあちこちに人間がいるようだ。よく考えてみると、それが盗賊なのかミオの仲間なのか分からない。どうやって見分けるべきか? さっきの男たちの風体は、さほどヤマザキ達と変わらなかったし。間違ってミオ達の仲間を殺めてしまわないようにしなくては。


 考えるより動いた方が早いと思った俺は、一番近くにいる人間の元に行く事にした。そっと入り口から入ると通路の両脇に扉がある、だがこの周辺に人間は居ないようなのでそのまま奥に進んだ。この建物はやたらと机と椅子が並べられているようで、かなりの人数の人間が座れるようになっている。


 凄いな…、王都のギルドでもこんなに人が座る場所は居ないぞ。あちこちに椅子と机があって、机の上には平たい黒い版のような物が置いてある。


 そして気配探知で感じた方向へ行くと、広めの部屋に三人が座っていた。カンテラのような物が置いてあり、部屋内が薄明るく照らされている。隠形のスキルを発動し、そいつらの側まで近づいて行く。


「なあ、ゾンビは上がってこないよな?」


「そんなに早くは上がって来ねえよ、空港はかなり広いからな」


「結局、ここには物資なんてほとんど無いんじゃないのか?」


「だな。空港に巣くっている奴らなら、もっと大量の物資を持っていると思ってたんだがな」


「リーダーは間違いなく物資はある! なんて言ってたけど、間違いだったな」


「ちげえねえ」


「無いのが分かったんなら、無理にここの人間を追い詰めなくたってよくねえか?」


「だな。まあ少しぐらいサボったって問題ねえよな。俺なんか会社でしょっちゅうサボって怒られてたっけ。真面目にやったって仕方ねえと思ってたし」


「不良社員じゃねえか」


「むしろこんな時代になって、会社に行かなくても良くなって良かったよ」


「俺達みたいなのがちょうどいいよな。リーダーはちょっと神経質って言うか…」


「あのリーダー、ちょっとサイコパスっぽいところあるもんな」


「あるある。猟奇的つーの? まあだからこんな集団のリーダーなんてやってられるんだろ」


「ちげえねえ」


「「「はははははは」」」


 確定だ。ジュウも持っているし、こいつらは盗賊の一味だ。盗賊なら生きていても仕方ない。


 俺はジュウを剣のように振りかぶって、高速で水平に薙ぎ払う。すると、ガブン! と変な音をさせて三人の頭が潰れた。


 オーガやオークを殺すより力を制御してるつもりだがな…、人間と争ったのなんて遠い昔で感覚が分からない。軽く振ったつもりが熟したトマトのように飛び散ってしまった。


「さて」


 俺はすぐさま、次の人間達がいる場所へと向かう。人間は上の階にいるようで階段を探す必要があった。俺がこの階層を隈なく探していくと、手摺のついた階段が出て来たのでそれを上に登る。


 こっちだ…


 俺が通路の角を曲がると、スンッと俺の鼻に血の臭いが届いて来る。どうやらこの先で戦闘があったようだ。俺は更に速度を上げて血の臭いのする方へと向かう。すると通路に何人かの人間が倒れて血を流していた。俺がしゃがんで倒れている人間の首に触れるが、既に死んでしまっているようだった。


 やられたのか…。


 傷口を確認するが出血している場所は斬られている訳ではなく、尖ったもので刺されたような小さな穴がいくつも空いている。

 

 これは、レイピアで突かれたのか? こんなに穴だらけになるほど? いったい何段突きすればこんな風になるのか。もしかしたらレイピアの使い手がいる可能性があると言う事か。


「しゅぅ」


 俺は集中する為に息を吐いた。


「思考加速、敏捷性上昇、金剛、魔法耐性、打撃耐性、刺突耐性」


 人間相手にやり過ぎかとも思うが、この異世界では何が起きるか分からない。俺は更に警戒レベルを上げて、人間達がいる場所に走るのだった。


 居た…


 ガンッ! ガコン! ゴン!


 と数人の男が扉を破る為に、何かで取っ手の部分を叩いていた。


「ふうふう」


「けっこう頑丈だな」


「そりゃあな、とにかくリーダーが開けとけって言ってたしさ、なんとかしないと」


「てか、あの人もやれって感じだよな」


「いや…でも、反論したりするとな…」



「そうだな…」


 話の内容は良く分からんが肩にジュウをぶら下げている。そして扉を殴り続けているところを見ると、恐らくこいつらが盗賊なのだろう。だが微妙に確信が持てなかった俺は、そいつらの側でこう話しかけてみる。


「殺したしな」


「ああ…、でも仕方なくねえか? リーダーが弱肉強食みたいな事言うし」


「「「ん?」」」


 誰もいないはずの後ろを数人が振り返るが、俺を認識する前にそいつらの頭を吹き飛ばした。


「な!」


 前の奴がジュウを腰だめに構えて振り向こうとしたので、口から血を拭きだして立っている死体を蹴り飛ばす。とその体を受け止めた奴が後ろの奴にぶつかった。


「なんだ?」


「うお!」


「お、おまえ! どうした?」


「く、首がねえ!」


「い、いや。横にぶら下がってるぞ…」


 ドサリ!


 蹴っ飛ばした死体が床に倒れ、前の五人が一気にジュウを腰だめに構えようとしだした。


 だが遅い。人間などヴァンパイアに比べれば、ナメクジよりもはるかに遅く感じる。思考加速をした俺から見れば、微妙に動いているようにしか見えない。一気に五人の頭を殴り潰すと、五体の死体は同時に床に転がった。俺はそこからすぐさま離脱し、借りた服に返り血を浴びないように気を付ける。血はなかなか落ちないから汚すと取れなくなってしまう。一文無しの俺は、この服を綺麗なまま返す必要があるのだ。


「さて、この上か…」


 俺は再び気配のする上の階へと向かう。次の階では数名が単独であちこちをさまよい歩いていた。とぼとぼと男が近寄って来たので、俺は壁際に寄り添いそいつが来るのを待つ。ジュウを持っているが敵か味方か分からない。


 スッ、と俺の前に来た時、俺はそいつの口を塞ぎ階段の方へと引き込んだ。


「何をしている?」


「むっむぐぐぐ」


 男が何かをしゃべろうとしているので、俺が口から手を外すと…


「仲間がいたぞ!」


 手を外した瞬間いきなり叫んだので、俺は思わずそいつの首をぐるりと一回転させてしまった。音を立てて倒れそうになったので、俺はそっと抱いて静かに床に座らせる。すると数名の足音が聞こえて、こちらに走ってくるようだった。俺はレイピアの使い手を警戒し、スッと暗闇に身を隠した。ジュウを持った男が来て倒れている男に手を伸ばした。


「おい!」


 するともう一人の男がやってきて、同じようにしゃがみ込んで話しかける。


「どうした?」


「し、死んでる!」


「な、なに!」


 二人がうろたえているうちに、両方の頭を持って思いっきり打ち付けた。


 ベギョッ! と頭を半分ひしゃげさせてずるずると崩れ落ちる。


 後は…


 他の奴らはどうやら今の騒ぎに気が付かなかったようで、未だに何かを探し回っているようだ。


「ん?」


 一人だけ動き回らずにじっとしているやつが居る。他は動き回っていて…何かを探しているようだな。とすると、探しているのは…この止まっている奴か…


 俺はすぐさま、一カ所にとどまっているヤツの所に向かった。一直線にそいつの所に向かうと、いきなり板の間の広い空間に出るのだった。そして音も無くそいつの居る場所に近づいてみると、どうやら大きな引き出しのような場所に隠れているようだ。俺がその引き出しを開ける。


「きゃあ!」


 女が居た。女が怯えてこっちを見ている。


「おまえ、ミオの仲間か?」


 するとコクコクと頷いていた。


「助けに来た」


「えっ?」


「行くぞ」


 そしてその女をそこから連れ出して、広い板の間の部屋を通路まで戻ろうとした時だった。人間の一人がこちらへと向かっているようだった。


「静かに」


「はい」


 そして俺はその女を抱き上げて、音も無く反対側の壁に到達する。


「ここにいろ」


 俺がそう言うとコクリと女が頷く。俺はすぐさま入り口の壁の所に張り付き、誰かが入ってくるのをじっと待った。すると無防備に一人の男がジュウをぶら下げて入って来たので、スッと手首をつかんで折った。


「ギャッ」


 叫ぼうとしたので、すぐさま頭をぐるりと捻りそっと抱きしめて床に座らせた。男は手をだらりとさせて壁に背を預けて死んだ。


「ひっ!」


 女が引きつった叫びをするが、俺は口に指をあてて黙らせた。そして男が持っていたカイチューデントーを拾って女の所に持って行く。


「これを消してくれ」


「は、はい」


 そして女がカイチューデントーを消してくれた。この女を連れたまま、レイピアの達人に会ったら危険だと判断した俺は女に言う。


「もう一度、さっきの場所に隠れていられるか?」


 俺が聞くと、フルフルと首を振って拒否して来た。


「こ、怖いです! 助けてください!」


「お前を助けるにも、まだ何人か敵が居そうなんだ」


「あ、貴方はスパイか何かですか?」


 何を言っているのか分からないが、とにかく今は女の言っている事を解読している暇はない。


「なら、俺の指示通り動け」


「えっと、はい…わかりました」


 そして俺は女を連れて、その広い板の間の空間から抜け出したのだった。

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