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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第四章 逆襲編
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第214話 生存者達の争い

 朝日が街を照らし、少々冷え込んだ空気がバスの窓を曇らせていた。装甲バスは広めの住宅の庭に乗り入れ、ひっそりと息を潜めている。俺がバスの前に立つと、ツバサが中から扉を開けてくれた。


「ヒカル!」


「待たせた」


 俺が足早に乗り込むと、ヤマザキがすぐに言って来る。


「早かったな。生存者はいなかったのか?」


「いや。待ち伏せしていた」


「待ち伏せ? 敵対しているってのか?」


「警戒していただけだ。敵対するような意思はなかったな」


「協力はしてくれそうか?」


 そう言われ俺は言葉を詰まらせる。上手く説得できなかった事を説明すると、ミオが優しく言った。


「やっぱり警戒するわよ。敵対しなかっただけでも良かったと思うわ」


「もっと上手く出来はずだが、相手はかなり切羽詰まっていたようだった。弱っている人らがいるとも言っていた」


 ユリナが心配そうな表情を浮かべる。


「それなら早く治療しなくちゃ、手遅れになるわね」


「オオモリのゾンビを止めた仕掛けや、俺の力の事を伝えてみたが信じてはもらえなかった」


 すると皆が顔を見合わせてしまう。バスの中はしばらく沈黙し、そしてユリナが口を開いた。


「たぶん。普通の日本人は信じないと思う。いきなりゾンビを止めるシステムや魔法の事を言われても疑うわね。でも、すぐに治癒してあげないと危険なのは事実よね」


 タケルが言った。


「地道にやるしかねえのかな? いままでさんざんゾンビから逃げ回って来たんだろうし、余裕がないのは分かる。だが弱って死んじまうのは止めてやりてえ」


「悲しいわ」


 虚しさが漂う空気の中で、俺達は次の動きをどうすべきか迷う。このまま拠点に戻るべきか、再び場所を変えて人を集める動きをとるか。そしてもう一つ、懸念する事を伝える。


「俺の言葉を信じずに、不用意に電波の届かない場所に入ってしまう可能性がある。町にゾンビはおらず、建物内でも止まっているので油断してしまうだろう」


「確かに。そうなれば不要な被害が出てしまうわね」


「ヒカルお兄ちゃん。もう一回会いに言ったらどうかな? 敵対する意思がないなら、皆で行ってもいいんじゃない?」


「葵ちゃんの言うとおりだ。どうする? ヒカル?」


「わかった。行ってみよう」


 俺達の意見がまとまった時、遠くから炸裂するような音が聞こえた。それを聞いたミナミが言った。


「銃声だわ」


「行こう!」


 俺のかけごえで、ヤマザキが装甲バスを出した。その間も何発かの銃声が響き渡り、悪い胸騒ぎがする。ヤマザキは焦った様子で言った。


「軍隊が来たのだろうか?」


 だが俺がそれに答えた。


「軍ではないはずだ。そんな気配はしない。もしかしたらゾンビが動き出したか? オオモリ?」


「いや。電波は生きてますよ。プログラムも動いているはずです」


 マナもオオモリが持つタブレットを見ながら言った。


「壊れて無さそうだけど、電波が飛ばないとかあるかな?」


 俺は運転するヤマザキに伝える。


「慎重に」


「わかった」


 ショッピングセンターの壁が見えて来た。気配探知ではその向こうに人がいる事が分かっている。そして壁を通り過ぎ駐車場に差し掛かって、おおよその状況が見えて来た。駐車場に数台のワゴンが止まっており、数人が銃や刃物を持っているようだ。


「あれか?」


 ヤマザキが言うが俺は首を振る。


「あんな奴らは居なかった」


 そいつらは俺達の装甲バスに気が付いたようで、指さして何かを言っている。俺は慌てて皆に言った。


「伏せろ! ヤマザキ! そのまま通り過ぎるんだ!」


 皆がバスの床に伏せると、駐車場にいた連中が俺達に向かって銃を撃って来た。ガラスには当たらず胴体部分に命中したようだが、装甲があるため中に影響は無い。俺達の装甲バスはそのまま通り過ぎて、ショッピングセンターから離れていく。


「いきなり撃って来たわ!」


「状況から察するに、先に俺が会った人らと新しく来た奴らで争いが起きてるんだ。ショッピングセンター内の物資が目的だろう」


 タケルが怒りをあらわに言う。


「せっかく生き残った人間同士なにやってんだ! 馬鹿じゃねぇのか!」


「まったくだ」


 とにかく距離を取って、住宅街に装甲バスを乗り入れ停めた。そして俺が言う。


「油断した。まさか他の人間が来て襲うとは考えていなかった」


「誰も思わねえよ。てか、どうする?」


「無駄な死者を出すわけにはいかない。俺が言って争いを止めて来る」


「ヒカルだけが行っても同じことじゃない?」


「だが」


 するとタケルが言う。


「皆で行くしかねえ。気がつかれないように近づこう」


 それを聞いてヤマザキが言った。


「葵ちゃん達はどうする?」


「装甲バスに置いて行くしかねえって」


 だがアオイは首を振った。


「わたしも行く!」


「しかし!」


 言い争っている暇は無かった。とにかく早く行かねば、せっかく助かった者同士で殺し合いをしてしまう。


「わかった。俺に任せろ」


 俺達は装甲バスを隠し、路地をショッピングセンターに向かって走る。ショッピングセンター道向かいの商業施設に身を隠し、ショッピングセンターの様子を伺った。人間の気配がするが、ショッピングセンター内に散らばっているようだ。


「人が固まっていない。隠れているのか?」


「正面から行くのはまずいな」


「ヒカル。あそこに螺旋階段がある。二階から侵入したらいいんじゃねえか?」


「そうしよう。皆、準備はいいか?」


 俺が言うと皆が頷いた。俺達は道路を横切って、ショッピングセンターの壁に張り付く。外にある螺旋階段に人の気配は無かった。俺が皆を見ると、皆が力強く頷いた。


「行くぞ」


 螺旋階段を上ると鉄の扉が見えて来る。手をかけてみるが鍵がかかっているようで開かない。扉に俺とミオが近寄って中の様子を伺った。


「すぐ近くにはいないわね」


「よし」


 ミオが後ろに下がり、俺は剣技を繰り出して扉の鍵を斬った。手前に扉を開くと、室内は薄暗く遠くの方で人が話す声が聞こえる。俺達は静かに侵入し、売り場に身を隠しながら人の気配がする方に向かうのだった。

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