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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第四章 逆襲編
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第210話 上杉謙信に祈りを

  オオモリとマナが、ファーマー社から入手した6Gに関するデータを元にプログラムを組んだ。そしてオオモリがみんなに説明する。


「出来ました! でも、なんでしょうか? 前の僕だったらこんな事は絶対に無理でした。ヒカルさんにゾンビ因子に対しての施術をしてもらってから、脳が活性化したんでしょうか? いろんなものにめちゃくちゃ理解できるようになったんです」


 するとマナも言った。


「私も大森君に付き合ってやってるうちに、凄いことが出来るようになっちゃって」


 なるほど。恐らくこの二人は無意識に思考加速を使っている。自分の得意分野に対し力が開放されたらしい。


「僕が開発したプログラムと、局舎に行っていろいろいじれば6Gの電波が飛ばせるようになります」


「よし。いよいよだな」


「後は電力を通電させるわ。それは隣の送電施設で可能みたい」


 皆が頷いた。俺達は準備を整えて、装甲バスに乗り込み米沢の市街地に向かう。十分もしないで到着したが、やはり市内にはそこそこゾンビがうろついていた。


「周辺のゾンビは片付けておこう」


 俺が言い、皆が武器を持って周辺のゾンビを始末する。いよいよ施設内に入ると中にもゾンビは居た。それを見たタケルが言う。


「どーれ、掃除すっか」


 ミナミもにやりと笑って答えた。


「そうね」


 既にこの二人もかなりの腕前となり、俺がいなくともゾンビを討伐できるようになった。冒険者だとすればダンジョンに潜れるレベルになっている。ミオの気配探知やツバサの聴覚による敵の探知能力もずば抜けている。皆は新たにリコが作った防具で身を包んでおり、マナがヘイトで集めてゾンビを倒す流れが出来上がっている。


 その建物内は広く、ゾンビを綺麗に処理するまで少し時間がかかった。俺が派手にやればすぐに終わるが、館内の機器を壊す可能性があるので皆で丁寧につぶしたのだ。


「さてと、電気をつけてみますか」


 オオモリが壁のスイッチを入れた。するとパチパチと電灯が灯る。


「ついた!」


「電気が来てますね」


「よかった」


「じゃあやりますか!」


 二人が機器がある部屋に入って行き、俺達はその前で待つことになった。


「上手くいくと良いな」


 タケルが言う。


「上手くいくさ。AI研究所ではうまく言っていた」


「そうだな」


 それから数時間はそこで待つことになり、二人が作業を終えて出て来た。


「ここはオッケーです。後は各地にある基地局の設定です」


「パソコンから情報を抜くわ」


 二人が事務所にあったパソコンを開いて調べる。


「あった。このノートパソコンを持って行きましょう」


 オオモリが言い俺達は局舎を後にするのだった。既に都市周辺には同じような太陽光発電施設も見つけていて、全て稼働させている。オオモリが言うには十分な電力量はあるという事だ。俺達は次々に携帯基地局を周り、オオモリとマナが作業をしていった。


「日が暮れる前に局舎に戻りましょう」


 俺達は再び局舎に戻る。最初に作業した機器のある部屋に行ってオオモリが言う。


「では稼働させます」


 オオモリがサーバーに繋がれたパソコンを操作してボタンを押した。


「終わりです」


 それを聞いたヤマザキが言った。


「これでなったのか?」


「たぶん。検証する必要がありますけど」


「外に出てみよう」


 俺達は皆で外にでて装甲バスに乗り出発する。皆が息をのんで通りの角を曲がった時だった。オオモリがポツリと言う。


「成功です」


 通りにいるゾンビ達はぴたりと止まり、俺達が側を通っても動かなかった。


「「「「「「「やったぁぁぁぁぁ!」」」」」」」


 オオモリが皆にもみくちゃにされている。


 タケルが言った。


「お前すげえなあ! こりゃすげえぞ!」


 どこまで行ってもゾンビは固まっている。もし生存者がどこかに隠れているなら、それに気づいて動き出す事だろう。


「まあ電波が悪いところだと、ゾンビは動いてるでしょうけどね」


「十分だろう」


 人間の社会を復活させるための第一歩だった。もし米沢市に生き残っている人がいたならば、生き延びる確率はかなり高まったはずだ。これは人類にとっての大きな一歩だ。


 俺達はそれから市内をぐるりと回るが、どこのゾンビもぴたりと固まって動かずに立っていた。するとミナミがポツリと言った。


「もし可能なら行きたい所があるわ」


「なんだ?」


「上杉神社に行きたい。歴史的な名所だし」


 するとミオが言う。


「行こうよ! 南のやりたいことの一つなんでしょ! これが第一歩だわ!」


「そうよ南! 大森君のおかげでゾンビは止まっているんだし、見に行きましょう!」


 俺達はミナミが希望する上杉神社へと向かった。バスを停めて境内に入って行くと、ミナミがはしゃぐようにしている。あちこちにある看板を読んでは、俺達に詳細を説明してくれた。


 そんな中でユンが言った。


「でも、怖くて集中できないんだけど」


 俺はどうという事はないが、やはり止まっているとは言えゾンビの中を歩くのは抵抗があるらしい。だがゾンビはどれもまっすぐ前を見て固まっている。


「やっつけちゃおうか? この状態なら葵ちゃんでもやれちゃうんじゃない?」


「訓練になるかもね。ユンちゃんも凛子さんもやってみよう」


 するとミナミが言う。


「そうね。こんな由緒正しい神社にゾンビはいらないわ、皆で掃除しましょう」


 俺達は上杉神社にいる固まったゾンビを、片っ端から片付けていくことにしたのだった。確かにこんなに力を感じる敷地にゾンビは必要ないだろう。


「境内を掃除してお参りだな!」


 タケルが言うのを合図に、止まっているゾンビを次々と掃除していく。全てのゾンビを掃除し終わる頃にはすっかり日が暮れていた。皆が懐中電灯を取り出して照らす。


 ミナミが言った。


「こっちに本殿があるわ」


 暗い境内をミナミについて歩く。すると懐中電灯に照らされて立派な建物が見えて来た。


「よし! 皆でお参りして願いを叶えるよ!」


 ミナミが本殿の前に立って、二回礼をし二回拍手をして手を合わせて目をつぶる。俺は見よう見まねでミナミの真似をした。すると皆が同じようにして手を合わせる。


 きっとここで神に願うのだろう。俺は心の中で唱える。皆が願い終わり、顔を見合わせた。


 そして俺は言った。


「これでいい未来が来る」


 ミオが答える。


「そうね。いいことをした人には良いことが起きるわ」


 俺達は上杉神社の本殿を見上げ、これから立ち向かうべき未来を見る。


 すると俺の目に何か勇ましい男の姿が浮かび上がって来た。どうやらこの神殿で奉られている神が見えているらしい。


「ミナミ。勇ましい神様がいる」


「えっ? 何か見えるの?」


「恐らくは武神か何かじゃないのか?」


「だったらそれは、上杉謙信公だわ」


 ミナミが言うと、皆が再び本殿に向かって手を合わせるのだった。

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