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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第一章 違う世界
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第20話 暗闇の空港を彷徨う

 盗賊達が持っていたジュウとか言う武器を全員分拾ってきた。紐が付いて肩にかけられるようになっており、空いた手で怪我人を連れていく事が出来ている。恐らくこの武器は細い部分を掴んで振り回し、広くなっている部分で殴る鈍器のような物なのだろう。


 剣か短剣があれば…、槍でもいいのだが鈍器はあまり使い慣れていないんだよな…


 前世ではモーニングスターやハンマーのような武器は使った事が無い。敵を消滅させる速度がかなり遅くなってしまうからだ。そんな武器では魔王ダンジョンは突破できなかった。


 とにかく俺達が怪我人を連れて奥に進むと、その途中で見通しが良い階段が出て来た。だが皆はそれを降りずに、降り口に止まってミオとユリナとツバサで話を始める。


「友理奈さん。このエスカレーターだと丸見えだから、奥の階段で降りた方が良くないかな?」


「確かに見桜ちゃんの言う通りかもしれない。ここから降りたら奴らに見つかっちゃうかも」


 するとそれを聞いていたツバサが言う。


「でも、奥の階段には見張りがいるかもしれない」


「見たの?」


「ううん。確証はないんだけど」


「翼は何処で襲われたの?」


「四階に皆で居たんだけど、他のメンバーが食材を取りに行くって下に向かった後にいきなり襲われたわ」


「アイツらが何人くらいいるか分かる?」


「いきなり襲われて拘束されてたから分からない。でもアイツらの話を聞いて分かったのは、結構な人数がいるみたいだった」


 するとユリナが何かに気づいたように言う。


「…まって、そうなると外にいる人達が危険じゃない?」


 ツバサが答えた。


「山崎さん達? 一緒に入って来てないの?」


「山崎さん達は今トレーラーでゾンビを踏み潰しているのよ。だけどゾンビが片付いたら空港内に入って来るかもしれない。外にもあいつらの仲間がいる可能性があるし、どうすれば…」


「それはマズい、だって山崎さん達はゾンビだけが危険だと思っているのよね? あいつらは銃を持っているし、入ってきたら殺されちゃうかもしれない」


 ユリナとツバサの会話から察するに、ヤマザキ達の事を心配しているようだ。確かにこの内部の状況を彼らに伝えないと、不用意に侵入してくる可能性がある。その前にこの現状を打開しないといけないのは確かだろう。


「あー、ミオ。この周辺には人間はいないぞ」


「えっ? 分かるの?」


「問題ない、ここから下りよう」


 この透明な階段の上にも下にも人は居ない。ゾンビもここまでは上がって来ていないようだ。すると今度はツバサが俺に言って来る。


「あの。あなた、どうしてそんな事分かるんですか?」


 何か不満そうだが、俺が何かしたのだろうか? するとミオがツバサに言った。


「翼さん。恐らく問題ないわ、今は説明している時間は無いけど本当にいないはずよ」


「な、なんでそんな事が分かるの?」


 なんか揉めてる。だが急がねばならない状況だと思うので、俺は強い口調で言った。


「ぼやぼやしてたらヤマザキ達が危ないだろ!」


 怪我人もいるし、とにかく行動しなければ外にいる彼らが危ない。こんなところで迷っている時間など一秒も無いはずだった。


「わかった。翼さん、とにかく彼を信じていきましょう」


「…信じられないけど…、でも行くしかないのは確かね」


「ええ」


 ようやく話がまとまったのか、そのガラスに挟まれた階段を下りていく事になったようだ。


「俺が先行する」


 俺が先にその階段を下りていくと皆も素直についてきた。気配感知をきらないで下に来たが、この階層にもゾンビの類は居ない。まるでダンジョンのような広さに俺は他のモンスターが出ないかを警戒する。


「で、どうするの?」


 ツバサと言う女が聞いて来る。


 …こいつらは決断が遅すぎる。こんな場所に住んでいるというのに、何のスキルも持たずに身体能力も低い。その上にぼやぼやと話をすることが多く、今、自分達が置かれた状況とやるべき事を瞬時に判断できないらしい。

 

 するとミオが俺に言った。


「もう一階下に降りないと、オペレーションセンターにいけないわ」


「まて」


「どうしたの?」


「恐らく下のその下の階にゾンビが侵入している。これから下の階に行くから話をしない方が良いだろう」


 するとツバサが先ほどの続きの事を言い出す。


「だから、なんで分かるのか知りたいんだけど」


 説明が面倒なので、俺は俺の国の言葉で言う。


「気配探知だ」


「外国語じゃなく日本語で言ってくれる?」


「何て言っているかわからない。この国の言葉を覚えたのは今日の朝からなんだ」


「‥‥‥‥」

「‥‥‥‥」


 今度はユリナとツバサが静かになった。するとミオが弁解してくれる。


「本当よ。彼は全く日本語が話せなかったの。でも私と一日居てここまで話せるようになったのよ」


「一日で?」


「本当にそうなのよ」


「そんな馬鹿なこと…」


 何かを話そうとするツバサを手で制する。こんなモタモタやっていたら、本当にヤマザキ達の身に危険が迫る。一刻を争う事態だと何故わからないのか?


 俺は強めに言った。


「従え」


「なっ!」


 ツバサが何かを言おうとしたが、ユリナがそれを制して言った。


「今は彼の言う事を聞くしかないわ。怪我人もいるわけだし、突然連れて来て彼の言いなりに動くのが納得いかないのも分かるけど、今は従って動くしかないと思う」


「この人が何だっていうのよ!」


 どうやらツバサは錯乱状態にあるらしい。ツバサを無視して俺が言う。


「行くぞ!」


 俺は皆の話を無視して、そのまま下の階へと続く階段を下りていく。すると皆は仕方なく俺の後を黙ってついて来る。下の階に着くとその下が見渡せるようになっていた。やはりゾンビが侵入してきており、下の階をウロウロしているようだ。俺は小さな声で皆に言う。


「見ろ」


「「「‥‥‥」」」


 三人も怪我人も言葉を失なったようだ。


「気づかれたら登って来るぞ」


 すると皆がコクコクと頷いた。音を立てれば間違いなくあいつらは上に登って来るだろう。今は怪我人もいるから厄介事は避けたい。


「ミオ、どっちだ?」


 するとミオが建物の奥を指さした。俺が先にそっちに進んでいく。


「付いてこい」


 怪我人もいる為、歩く速度は上げられない。万が一ゾンビが登って来たら、この鈍器で殴りまくるしかないだろう。


「こっち」


 ミオに指示をされて通路を進んでいくが、やはり人間もゾンビも居なかった。どこかにこいつらが隠れる場所があればいいのだが、とにかく怪我人がいると盗賊の格好の餌食となる。


「その先に行くと皆が逃げ込んてると思われる場所があるわ」


 暗い通路の先を指さしてミオが言った。ならばここから先は俺だけで行った方が良いだろう。


「なら、お前達はここで待て」


 するとツバサが言う。


「ちょ、ここまで来てなんで置いてくのよ」


「怪我人は恰好の標的になるからだ」


 するとミオが心配そうに声をかけて来る。


「待ってヒカル、一人で行くの? 相手は銃を持っているのよ」


 こんな鈍器をいくら持っていたところで、俺にかすりもしないだろう。しかもさっき俺が気配遮断をして近づいた時、誰も俺に気付くやつが居なかった。所詮盗賊などそんなもんだ。


「そこの部屋に入って隠れていろ」


 俺が指さすと皆がそちらを見る。するとユリナが不安げに言う。


「ゾンビが居そう」


「居ない。中は空だ」


 するとミオが信じたように返事をした。


「わかったわ。なら銃を二つ持って行って」


「わかった」


 俺はもう片方の肩にジュウをひっかけて、皆が部屋に入るのを確認しミオに声をかけるのだった。


「さっきみたいに来るなよ。どうにかなっても知らんぞ」


「わかった」


「なら行って来る」


「気を付けて」


 かなり時間をかけてしまった。そもそもが残った人間が無事かどうかもわからない。とにかく俺はミオに言われたとおりに、角を曲がって奥に進んでいくのだった。

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