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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第三章 逃亡編
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第200話 潜入チーム

 俺は闇夜の太平洋海中にいた。普通の人間ならば視界はほとんど無いかもしれないが、水中で敵艦艇を目視できている。おあつらえ向きに月は雲に隠れ風も出ているため、敵に忍び寄るには絶好のチャンスだった。数日の観測の結果通り、二隻の戦艦が哨戒行動の為に出航して海上に出てきている。


 俺はスイムスーツに身をくるみ、背中には酸素ボンベをつけている。まあそれが無くても半日くらいは水に潜っていられるが、あったらあったで体力を温存する事が出来る。


 軍艦がこちらに向かって近づいて来ており、俺は泳ぎ船底に潜って船の後方に周る。


「あった」


 構造をよく知らなかったが、皆に聞いた通り大型船舶の船底の後ろに巨大なプロペラが二つ付いていた。俺はそのプロペラの支柱の所に並行で泳ぎつつ、腰に刺した鉄パイプを一本取った。


「氷結斬」


 二本の巨大プロペラが凍りつき回転が鈍る。魔法の使用で鉄パイプは粉々に砕けて散り、俺はそのまま後ろに泳いでプロペラを掴みグイと引っ張る。


 ガゴン!

 

 部品がちぎれプロペラが機能しなくなった。じきに氷が解けて証拠は無くなるだろう。いったん水面に上がり、船を見るがまだ動きはないようだ。俺は船底に張り付き、この船を仲間が救助しに来るのを待つ。


 一時間後。ようやく救助の為にもう一隻の軍艦がやって来た。俺は再び水中に潜りもう一隻も同様に航行不能にしてその場を離れる。これでこの軍艦は身動きが取れなくなった。


 岸にたどり着き、暗闇に潜みながら皆の待っている場所に向かう。


「待たせた」


 ミオがタオルを持って俺に差し出してくる。


「船は?」


「しばらくは動けまい」


「海に向かってヘリが飛んでいったし、恐らく様子を見にいったんだと思う」


 皆が空を見上げ、ヘリコプターの動向を追っていた。


「これ、助かった。おかげでほとんど濡れずに済んだ」


 スイムスーツを脱ぐと、ミナミが日本刀を俺に渡してくる。


「鉄パイプは一瞬で粉々だ」


「魔力を乗せて、これが折れたりしたら困るしね」


 海を見ていたタケルが言う。


「みろ! もう二隻船が出て行ったぞ」


「作戦通りだ。行こう」


 敵の意識が海上に向かっているうちに、俺達は基地へ侵入する為の経路を進む。様々な場所を確認したところ、幅二メートルに満たない用水路を見つけたのだ。用水路は使われなくなってしばらく経つようで、草に覆われており空からは見えなくなっている。


 更に進み道路の下をくぐる時、皆に止まるように言った。


「車が来た」


 俺達の頭上の道路を何台もの車が通過していった。


「大騒ぎしているな」


「船がとまったからだろ」


「なら陽動は成功だな」


 俺達はそのまま用水路を、海の方角に向かって進みだす。罠を仕掛けられた区域を抜け、第一原子力発電所の設備が見えて来た。


 ミナミが言う。


「明かりがついているわ」


 発電所内はいたるところに明かりが灯されていた。


「侵入者を警戒してるのだろう」


 そしてミオが言う。


「人が動き回っているわね」


「かなりの船舶とヘリコプターが艦艇の方に向かって行ったからな、人員を移動させているんだ」


 この潜入計画に参加しているのは、タケル、ミナミ、ミオ、ツバサ、マナ、オオモリと俺だ。そして俺は皆にもう一度言った。


「ここからはかなり危険だ」


「いいぜ。皆、覚悟の上だ」


 俺が地上に上がり、次々に後をついてくる。


 ミオが言った。


「研究所はどっちかな?」


「探すしかあるまい」


 俺達は暗闇に紛れ、第一原子力発電所内部に進入した。奥へと進もうとした時、大勢の人間の気配が近づいて来る。俺が皆を止めた。


「止まれ」


 その集団に対し俺達は武器を構えるが、気が付かずに前を通り過ぎていってしまった。どうやら海岸沿いに向かって移動しているらしい。


「研究所は陸側にあるはずだ」


「了解」


 俺達は敷地内をすばやく移動し、置いてあった車両の裏に隠れて先を見た。先に数台の車が停まっており中に人が乗っているのが見える。


「数台の車に五名、一台に三名であとは一台ずつだ。俺が三人を殺す」


「私はあの小型の車両のやつを」


「じゃあ、俺があのトラックのやつだな。ミオとツバサとマナとオオモリは合図を送るまで待て」


 俺達三人は一気に車両に忍び寄る。三人で目配せをして俺は五本の指を立てて、一本ずつ折って行く。最後の一本を折った時、同時に車のドアを開けて一瞬で殺した。


 ミナミとタケルが俺に手を上げ、俺がミオに向かって手をあげると急いで俺のもとに走って来る。


「恐らくむこうだ」


「ええ」


 ミナミとタケルに合図を送り、いっきに奥に向かって駆けていく。そこには多くの建物が立っており、俺達は一つの建物の陰に潜んだ。


「この建物はどう?」


「第二研究所とは佇まいが違う、窓のない建物を探せ」


「「「「了解」」」」


「ぼ、僕はどうすればいいっすかね?」


「オオモリは俺から離れるな」


「はい」


 ここは建物が多く研究所探しは難航した。いたるところに鉄塔が立っており、あちこちに人がいる為、気配感知でも良く分からない。そんな時ミオが言った。


「ヒカル! あれは?」


 俺が建物の脇から見る。


「似ている」


「行くしかねえな」


 その建物の周りには軍人が大勢いた。間違いなくそこが研究所だろうが、そいつらを片付けないと先には進めない。その時、幸運にもサイレンが鳴り始めた。


「船の異常に気が付いたんだろう」


 次々にヘリコプターが飛び立って、敷地内が騒然としてきた。そして俺はもう一度皆に聞いた。


「後戻りはできないぞ」


 五人がコクリと頷いた。俺は大勢の軍人に向かって、剣を構え縮地でそいつらの真っ只中に出現した。そして音も無く十七人を斬り捨てる。

 

 ドサドサと倒れだす軍人に、一瞬何が起きた分からなかったようで他の奴らの動きが止まった。するとミナミが遅れて到着し、三人を一瞬で斬り捨てる。


「な、侵入者だ!」


 軍人達がようやく気付いて、銃を構えるがそこにタケルが踊り出た。モーニングスターを振り回して、次々に軍人達の頭を吹き飛ばしていく。警報装置に手を伸ばそうとした奴は、俺が斬り捨て車に隠れた奴をミナミが斬った。


 パンパン! 


 数発の銃声が鳴るが、ヘリコプターの音とサイレンの音にかき消された。


「よくやった」


「やらなきゃやられるしな」


「ミナミは大丈夫か?」


「問題ないわ」


 だがオオモリだけが歯をガチガチと鳴らして震えていた。タケルがオオモリに言う。


「お前にしっかりしてもらわなきゃ、俺達全員死ぬかもしれねえんだ。よろしく頼むぜ」


「あ、ああ。す、すみません」


 俺はオオモリに言う。


「お前は殺しをしなくてもいい。とにかく情報を取りに行くぞ、俺から離れるんじゃない」


「わかりました」


 そして俺は入り口の上についている防犯カメラに向けて、剣撃を繰り出すのだった。

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