表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第一章 違う世界
19/627

第18話 空港侵入

 前を走る大型車の後ろ姿を見て、俺は前世との文明の差を感じていた。この鉄で出来た大型車の速度は決して遅くはなく、馬の全速力を凌駕しているのではないかと思える。それにも増して、これほどの巨体だというのに自力で走るのだ。


 こんな発達した文明の世界では、俺などなんとちっぽけな存在だろうと思う。前世では勇者などと呼ばれて大きな顔をして生きてきたが、これからはもっと謙虚に生きなければならないと思うのだった。ダンジョンで稼いだ金も何もない、ただの一文無しの男だし…


 ただ一つ解せないのは、こんなに文明の進んだ世界だというのにゾンビに手を焼いている。冒険者や騎士はいったい何をしているのか? それだけが不可解だった。


 俺の隣りでは、ミオが黒い小さい箱を持って連絡を待っている。少しでもこの世界の言語を習得したいので、俺は時間さえあればミオに聞く。


「ミオ、それなんて言うんだ?」


 俺は黒い小さな箱を指さして言う。


「これ? トランシーバーよ」


「トランシーバー…なるほど。じゃあ今、乗っているこれは?」


「トレーラーよ」


「トレーラー。こういう大きな車の事を言うのか?」


「ヒカルは本当に外の世界を知らずにいたのね」


「まあ、そうだな」


 ミオの言うとおりで、俺はこの世界の事を全く知らない。前の世界ではひたすら魔王ダンジョンを踏破する為に世界中を冒険して来た。だがミオ達の言葉はどこでも聞いた事が無いし、似たような言葉も知らない。そして、ここは前世と言語も違えば考え方も違うようだ。ましてやトランシーバーのように、離れた所に居て話せる魔道具なんて見たことが無い。


 ガガッ! ミオの持っているトランシーバーが鳴ってドウジマの声が聞こえて来た。


「まもなくゾンビがいた場所に到着する。準備は良いか?」


「はい」


 ミオがそれに答えた。そしてしばらくすると、先ほどのゾンビの群れが居たはずの場所へと到着する。しかし車の光で照らされた場所には、ポツリポツリとゾンビがいるくらいで数が減っていた。俺が倒したゾンビの残骸が、地面に大量に転がってはいるが動いているのが少ない。


 再びドウジマが連絡してくる。


「居なくなっているな…」


 それにヤマザキの声が答えた。


「おおかた中に侵入してしまったんだろう」


「クラクションで呼び寄せるか?」


「それは効率が悪いかもしれん。一度四台で突っ込んで、空港内に入った方がいいんじゃないか」


「それもそうだな。皆! 今の会話は聞いたな? このままトレーラーで空港内に突っ込むぞ、先頭の俺に続いてアクセル踏みっぱなしでついてこい!」


「わかった」

「おう!」

「はい」


 その言葉を交わした後トレーラーが走り出す。俺は少し気になったのでミオに聞いた。


「この柵の向こうにかなりのゾンビが散らばっているようだが、どうするつもりだ?」


「とにかく空港の建物に横づけして、残った人を救出しに行く事になってるわ」


「なるほど。なら外にいるゾンビを先にやったほうが良い、まだ数がいるぞ」


 するとミオがトランシーバーに向かって、俺の言葉を伝えてくれた。


「空港内に入ったら外にゾンビがいるらしいわ。トレーラーで潰した方が良いかもしれない」


 するとドウジマが答える。


「皆! 聞いての通りだ! 空港内に入ってもトレーラーを停めるな。そしてしらみつぶしにゾンビを潰そう!」 


 そしてトレーラーは破られた壁の所から次々に入って行く。壁の中は俺が想像していたよりもかなり広大だった。だが真っ暗ではあるもゾンビの気配は確実に感じる。するとトレーラーの明かりに照らされて、大量のゾンビが浮かび上がって来た。


 すると運転していたユリナが叫び出す。


「こんのぉぉぉぉ!」


 トレーラーがゾンビの群れに突っ込んでいくと、ゾンビは次々に踏み潰され車体がグラグラと揺れた。ヤマザキ達のトレーラーも、広大な敷地にいるゾンビたちを潰すために縦横無尽に走っているようだ。そしてこのユリナと言う女…大人しそうに見えて結構狂暴だ。


「こんな方法があるのなら、俺の出る幕は無かったな」


 俺がポツリと言うとミオが頭を振った。


「違うわ、ヒカルが一人でゾンビに立ち向かった事で皆が奮い立ったのよ。最初あの群れを見た時は怖気づいて、皆逃げようかという話をしてたの。でも無関係のヒカルが私たちの為に立ち向かっていったのに、自分達が何もしないでは居られないという事になったの。だけどさっき残った人達はそれに反対してたのよ」


 なるほど、そう言う事だったのか。それであそこで別れてしまったんだ。たかがゾンビの群れを見て、そんな決死の覚悟を持もっていたとは。だがゾンビは数こそ面倒だが、噛まれずに首を刎ねてしまえばどうという事は無い。そんなに恐れる事は無いと思うのだが…、って事は…皆も服が汚れるのが嫌なのか?


 トレーラーがグルグルと空港を周りゾンビを踏み潰しているが、上手くつぶせなかった奴や、すり抜けた奴らがまだウロウロしている。恐らくこのまま続けても良いとは思うが、走り回っているうちに夜が開けてしまいそうだ。するとトランシーバーからヤマザキの声がした。


「よし! 友理奈と美桜の乗っているトレーラーで、建物内に向かってくれ! ヒカルが居れば何とかなるだろう! 俺達はここでゾンビを潰しながら引き付ける!」


「わかった! ヒカル! 一緒に来てもらっても良い?」


「問題ない。行こう」


 そして俺達のトレーラーが、その場を離れて建物のある方向へと向かった。


「ミオ、あれはなんだ?」


「飛行機よ。日本に来る時に乗らなかった?」


「ヒコウキ、ニホンとは?」


「飛行機は人を乗せて空!」


 と言ってミオが天を指さして、少し怒ったような表情になる。


「空を飛ぶのよ! ニホンとはこの国!」


 なんだ? 俺がものを知らないから少しイライラしてるのか? まあそんな事よりも…人を乗せて空を飛ぶ? なるほど…よく見ればワイバーンのような形をしている気がするが、それを模して作ったものなのかもしれん。空を飛ぶ乗り物とは凄い! まさに神の所業だ。


 すると友理奈が言った。


「本当に…何処から来たの? 飛行機にも乗ってないとすれば船? 密入国なのか、それともこの世界になってから渡って来たのか…。だとすれば外国の現状を知っているのかもしれないわね」


「そうね。でも詮索は後! あそこの搭乗ゲートから入りましょう! いきなり本館に行くより安全だわ」


「わかった」


 そしてユリナが建物の脇に車を止めるとミオが俺に向かって言う。


「あの、さっきみたいにゾンビがいるか分かる?」


「このトレーラーに向かって数体が近づいて来ているようだ」


「こんなに暗くても分かるのね」


「そういう力がある」


「やはり軍の…」


 そう言いつつミオが、俺の目を見つめて言った。


「ゾンビを倒せるかしら?」


「武器が無い」


 もちろん素手で倒しても良いが、武器が無いと服が汚れる可能性がある…。


 するとユリナが言った。


「トレーラーの天井に登れば、なんとか搭乗ゲートの端に届くんじゃないかな?」


「階段もあるけど」


「階段だと地面に降りなくちゃいけないわ」


「なら上から行ってみよう!」


 ユリナが更にトレーラーを進め窓を開けて、こちらを振り向く。


「このまま窓から上にあがれるわ」


 ユリナが窓から上半身を出して、窓枠に足をかけ天井に登って行った。俺とミオも追いかけるように天井に登る。


「搭乗口は少し高いみたい」


 どうやら見上げた場所ある踊り場のような所に登りたいらしい。俺がユリナの体を掴んでグイっと持ち上げてやる。


「きゃっ! あ、ありがとう」


 ユリナが上がったので、ミオも上に乗せた。


「ヒカルも」


 そう言ってミオが手を伸ばしてくるが、俺はその手を取らずに俺は垂直に飛んで踊り場に乗る。


「凄い…」

「すごっ…」


 二人がポカンと見ている。そこにはガラスの扉があり、その先が少し見えるようになっていた。するとミオが俺に聞いて来た。


「中にゾンビは居る?」


「ここにはいないようだ」


 頷いたミオが、扉の取っ手に手をかけて開けようとする。


「うそ! 開かないわ!」


「そんな…」


 ユリナが絶望の顔をする。踊り場から下を見ると、既にゾンビ達が集まって来たようだった。


「なんとか、ゾンビにまとわりつかれずにトレーラーに乗れるかしら?」


「いや…、無理っぽいわ」


 ユリナが下に集まるゾンビを見て青い顔で答える。


「ミオ、このガラス破ったら所有者に怒られる?」


「誰も怒る人なんていないわ」


「なら」


 俺は自分に身体強化を施し拳を硬化した。


「よっ!」


 バリン! ガラスは見事に割れてくれた。


「えっ!」

「わっ!」


 驚きながらも、ミオがそこから手を突っ込んで中にある鍵を開ける。


「空いたわ」


「行きましょう」


「気を付けて」


 二人があまりにもおっかなびっくり進むので、このままじゃ夜が明けてしまうと思い俺が言う。


「俺が先を行く。お前達はついてこい」


「わ、わかった」

「うん」


 俺は女二人を連れて、暗い建物の中へと進んでいくのだった。するとミオとユリナがカイチューデントーをつけて先を照らした。俺にとっては必要ないが、彼女らはこれが無いと見渡せないらしい。逆にゾンビが寄って来てしまうと思うが…まあその時は上手く処理するとしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ