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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第三章 逃亡編
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第162話 マイクロバス入手

 俺はバリケードを越えて橋の中に入る。すると橋の反対側にバリケードは無く、その先に進んでいくとゾンビがウロウロしていた。だが特に人間の気配はなかった。俺はひとまず皆の元に戻る。


「特に人間がいる形跡はなく軍隊とかではなさそうだ。ちらほらとゾンビがいるだけだ」


「どうする?」


「どかして進もう」


 俺はバリケードに向かって剣を構え、推撃でバリケードを吹き飛ばした。三台の軽自動車はそこをゆっくりと通過していき、俺は先頭を走るツバサの車に乗り込む。少し進んだところで、俺達は車を降りて集まった。


「どっちに行こうか?」


 地図を見ながらミオが言った。


「大きな工場とかにトラックとかはあるよね?」


「そうだな」


「まあバスなら駅周辺だけど」


「なら駅周辺に行こう。バスの方が何かと動きやすい」


「じゃあ線路沿いに進んで」


「そうしよう」


 再び軽自動車に分乗して、俺達は都市部に進んだ。ゾンビが目立ち始めたので、俺は窓から出て走る車の屋根に立つ。前方に現れるゾンビ達を刺突閃で仕留め、邪魔な物を倒していった。


 駅に着き皆が車を止めた。すると車の中でヨシタカが騒いでいた。


「えっ! なんでこんなところで止まるの! ゾンビがいっぱいいるじゃない!」

 

 恐怖に怯え真っ青な顔をしているが、それに対しツバサがいう。


「問題ないと思うわ。ねえヒカル」


「問題ない」


 俺は腰を低くし、飛空円斬で目に入るゾンビを全て斬り捨てた。


「えっ…」


 俺は車の中に言う。


「ゾンビは片付けた。進むぞ」


「な、なにあれ! 離れた場所にいるゾンビが全部…」


「俺の剣技だ」


「な、なにそれ? そんなことが…」


「簡単な事だ」


「そんな…」


 ヨシタカが目を見開いて俺を見る。もしかするとようやく俺の力を認めてくれたのかもしれない。さらに駅を少し進むとツバサが車を止めた。


「レンタカー屋さんがあるわ」


「よし」

 

 俺は後続車に手を振った。すると後続車から仲間が下りて来てヤマザキが俺に言う。


「レンタカー屋か。那須だしマイクロバスくらいはありそうだな」


「探そう」


 敷地に入るとすぐに大きい車が目に入る。


「早速だ、マイクロバスだ」


 タケルが言う。


「事務所の中にゾンビがいるぜ」


 するとミナミが俺に言う。


「私に任せて」


 剣を携えて、建物の中に入って行く。すぐに出て来て言った。


「処理したわ」


 俺はミナミの異変に気が付いていた。明らかにゾンビを倒す能力が上がっているように感じる。


 ゾンビを倒す事になれてきたのか…あるいは…


 俺がミナミを見つめて考えているうちに、タケルが中に入り鍵を持って出て来た。それを見ていたヨシタカが感心したように言う。


「皆、とても手慣れているのね」


 それにタケルが答える。


「さんざんやって来たからな」


「引きこもっていた私達が馬鹿みたいだわ」


「そんなことはない。皆が必死ってこった」


「まあ…そうね」


 タケルがバスの鍵を開けてエンジンをかけてみる。何度かキュルキュルと音をさせるが、なかなかエンジンがかからなかった。するとタケルが出て来て言う。


「バッテリーがダメだな! ちっとまってろ、多分バッテリーくらいあるはずだ」


 そう言って事務所に入ると、箱型の何かと赤黒の綱のような物を持って来た。バスの横を開けてその箱と中を繋いで、運転席のヤマザキに向かって言った。


「回してくれ!」


 キュルキュルブゥーンとエンジンがかかる。


「かかった!」


「よし」


 そして俺達が皆バスに乗り込み、ヤマザキが敷地からマイクロバスを出した。恐らくエンジンをかける音を聞きつけたゾンビがウロウロと近づいて来る。ヤマザキはそのままゾンビを轢いて進んだ。


「何処に向かうか?」


「どう思う?」


「都市部の方が目立たないかも知れん。だがヒカルが肉を回収するなら山間部だな」


 するとマナが言った。


「前に千葉で牛を見かけたよね? 畜産農家とかいる方向がいいんじゃない?」


 俺がマナに聞く。


「肉なら山に行けばあるだろう? あの鹿だったか…」


「牛はまた違うのよ」


「そうなのか?」


 ミオが真剣な顔で地図を眺めながら言った。


「ヒカル。敵はどう動くかな?」


「恐らく逃げた方向までは突き止めていないだろう」


「可能なら、那須高原に行ってみたらいいと思う」


「ミオが言うなら、そうして見よう」


 俺がそう言うとミオは、地図を持って運転席のヤマザキの所に行った。そして俺達が座り話を始める。


「あのバリケードなんだったんだろうな?」


 するとアオイが暗い顔で言った。


「もしかしたらお父さん達のようにしてたのかも。都会から田舎に流れないようにせき止めていたとか?」


 タケルが言う。


「なるほどな。堰き止めていたのが、人かゾンビかってところだよな?」


 それにはユリナが答えた。


「恐らくは人だと思う」


 それを聞いてユミが皮肉交じりに言った。


「どこかの人と同じように、人を受け入れたくなかったんじゃない」


「由美やめろって」


 どうやらユミは、ミオにトドメを刺すと言ったヨシタカが許せないのだろう。その怒りは未だ冷めやらぬようで、あてつけのように言う。だがヨシタカがキッと睨み返す。


「でも正直な所、あなた達があの軍隊を連れて来たのだと思うわ」


「どうかしら? もともと日光の山の上で火事が起きてあいつらは来たのよ」


「火事?」


「人間同士の奪い合い。人間が人間を襲って火事を起こしたみたいなの、アイツらはその煙を辿って日光まで来たのよ」


「ならいずれは私達の所に来ていたと言いたいの?」


「そうよ」


 俺は二人のやり取りに釘を刺した。


「もうやめろ。内輪揉めで全滅は容易にあり得る。まずは生きのびる事だけを考えて最善を尽くせばいい」


 するとユミがシュンとした顔で謝った。


「ごめんなさい」


「責めている訳じゃない。二人の言い分は分かる、だが過去の揉め事を引きずっても良い影響はない。だから二人とも……頼むよ。俺は皆を死なせたくない、それだけなんだ」


「ヒカル…」


「私ももう余計な事は言わないわ」


 皆が俺をじっと見る。ちょっと気恥ずかしさを感じ、俺は運転席のミオとヤマザキの所に移動するのだった。だがさっきの言葉は本心、敵を滅ぼす前に仲間が死んだら意味が無い。


 俺達が乗るマイクロバスは、ミオの言う那須高原に向かって緩い坂道を登り始めるのだった。

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