表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第二章 東京
135/628

第134話 狙撃

 キノコ雲は天にも届くほどの高さまで上がっていく。皆は呆然としており、何をしたらいいのか分からなくなっているようだ。しばらくすると皆は力なくバスの席に座り込む。俺はヤマザキを起こして言った。


「すぐにバスを動かそう」


「ああ、分かった」


 ヤマザキが運転席に座り、カギに手を伸ばして回した。


 チュ、チュチュチュチュチュチュ。チュ、チュチュチュチュチュチュ。


「どうした?」


「わからん。エンジンがかからなくなった」


 どうやらバスは壊れてしまったようだった。すると女達がボソボソと話を始めた。


「そんな…東京に核ミサイルが撃ち込まれるなんて」

「アメリカかな? 何処から飛んで来たんだろう?」

「そんな。他の国じゃない?」

「まさか、ファーマー社が保有してた?」


 皆は明らかに狼狽えていて、とにかく起きた現実が受け入れられないでいる。俺は皆に伝えた。


「バスが動かん。次の降り口まで歩くしかない」


 ミオが立ち上がって皆に言う。


「立ち止まってはいられないわ。ヒカルの言う通り先に進まないと」


 ミナミも皆に説明をする。


「風向き次第では、こっちに放射線が降るかもしれない。急いだほうが良い」


 それを聞いたタケルが一人一人に手を貸して起こしていく。既に明るく話す気力も無くしているようだ。俺が皆に忠告した。


「食糧以外は置いて行く、なるべく軽くしていこう」


 するとミナミが俺に言った。


「最低限、日本刀は持って行った方が良いよ」


「体力が削られるぞ」


「ヒカル、ミナミの言うとおりだぜ。お前の日本刀は命綱だよ。もってこうぜ」


「持てる分だけでいい」


「ああ」


 荷物を持った俺達はバスを降り、高速道路を北に向かって歩き出した。皆の足取りは重く、足を引きずるように歩いている。そしてヤマザキが標識を見上げた。


「岩槻インターチェンジだ」


「降りよう」


 俺達は横道にそれて高速道路を降りていく。周辺にはちらほらゾンビがいるが、なぜかキノコ雲に向かって歩いて行ってる。俺達が近くに寄った時だけ、こっちに近づいてくるようだ。


「ゾンビは気にするな。全て俺が駆除する、車を入手する必要があるぞ」


 皆は俺の言葉にうなずくだけだった。口を開くことなく周辺の車を見渡した。使えそうな車は見当たらず、ずるずると先に進んだ。


 ヤマザキが道向かいを見て俺達に振り向く。


「車屋だ! ディーラーだぞ」


「本当だ」


 俺達は道を渡り、大量に車が並んでいる場所へと向かった。


「CRV車が並んでいる。事務所で鍵を探そう」


 俺達はヤマザキについて車屋に入る。既に慣れたもので、どのあたりに鍵があるのかすぐにわかった。だが俺はすぐに外に出ずに皆に言う。


「少し休んだ方が良いだろう?」


 だがミナミがそれを拒む。


「だめ。風が吹けばこっちに雲が流れてくるかも」


「なぜそれがダメなんだ?」


「黒い雨が降る。人体に被害がでるわ」


「そういう物なのか?」


「私だって良く分からない。だけど、とにかく遠く離れた方が良いのは分かる」


「わかった」


 俺達は車と鍵を合わせて、三台のCRV車とやらに乗り込んだ。荷物をきちんと積み上げて隙間なく積み込む。


「どこに行くか?」


 ヤマザキが言うが、正直俺にはどうしたらいいのか思いつかなかった。だがそれにミナミが答えた。


「とにかく北へ。都心から離れましょう」


「わかった」


 俺達の車は、そこからひたすら北に向かって走り続ける。


 俺は一緒に乗っているミオに言った。


「この道は」


「そう、私達が逃げて来た道。日本の北に向かって走っているの」


 やはりそうだった。見覚えのある道だ。少し走っていると、俺とタケルがアオイを救出した現場に出た。それを見てアオイが暗い顔をした。この先に行けば、アオイ達が潜んでいたアジトがある。


「アオイ達がいた場所に行って見るか?」


 俺がアオイに聞くが、アオイは首を振った。


「そうか」


「うん。皆死んだと思うから…」


「そうか」


 悪い事を思い出させてしまった。


「せっかく逃げて来たのに…」


「大丈夫だ俺がいる」


「うん…」


 そして俺は運転席に座ったミナミに聞いた。


「体に悪いって言ってたな?」


「そう。放射性物質が人体に悪影響を及ぼすの。埃とか吸っても癌になっちゃうかもしれないし、百キロくらいは離れた方が良いと思うの」


「だと、どのくらいだ?」


 俺が聞くとミオが地図を広げる。


「宇都宮あたりかな」


「ウツノミヤ?」


「ここから一時間ぐらいだと思う」


「そうか」


 更に俺達が先に進んだ時、明らかに道が閉鎖されている場所に出くわしてしまう。そこで車を止めて、先頭のヤマザキが俺達の車まで走って来た。


「明らかに故意だぞ!」


 次の瞬間、俺は咄嗟に車のドアを飛び出して剣をふるった。


ギィン!


「皆! 伏せろ!」


 皆が車の中にふせた。俺が斬ったのは銃弾だった。ヤマザキを狙ってどこからか撃ち込んできたようだが、射線から敵がどの方角にいるかは割り出せている。俺は全身の気を集中させて、攻撃をしてきた方向に剣を構えるのだった。


 車の後ろに隠れたヤマザキが聞いて来る。


「なんだ?」


「銃で撃たれた。離れた所から撃って来た奴がいる」


「本当か?」


「ああ。とにかく頭を引っ込めていろ」


 次の瞬間。


 ギィン!


 俺はまた銃弾を弾いた。敵の方に向かえば対応は出来るが、ここに皆を置いて行く訳にはいかない。敵は一人とは限らないからだ。しかも射撃がやたらと正確で、二発の銃弾は確実に頭を狙ってきていた。


「ヤマザキはそのまま車に乗れ」


「ああ」


 ヤマザキが立ち上がると、再び銃弾が飛んで来た。俺がそれを斬り落としている間に、ヤマザキは車に乗る。俺はミナミに聞く。


「敵の気配が微弱だ。恐らく距離がある」


 ドアの向こうのミナミが答えた。


「たぶん狙撃されてる。動けば撃たれるわ」


 どうやら俺達は路上に釘付けにされてしまったようだ。


 ガシャン!


 先頭の車のガラスが割れる音がした。距離がある為、銃弾を斬り落とす前に着弾したようだ。俺は一番前の車まで走り、中の人間に聞く。


「怪我をした者は?」


「い、いないよ」


 ツバサが答えて来る。


「とにかく頭を引っ込めていろ。絶対に頭をあげるな」


「わかった」


 三台の車が少し離れすぎている。一カ所にまとめないと守りきれない。


 しくじった…。あまりにもの強大な爆発を見て、周囲の警戒をおろそかにしていた。それにもまして、かなりの距離があり敵の位置が正確につかめなかった。


「ツバサ。そのまま車を後ろに下げられるか? 頭をあげずにだ」


「や、やってみる!」


 俺が運転席の扉の側に立って指示を出した。


「ゆっくりだ」


 すると車がゆっくりと下がり始める。それを狙うように銃弾が飛んで来たので俺は斬った。


ゴン、と後ろの車に接触する。


「停めろ」


「うん」


 そして俺は最後尾の車の所に行く。


「ミナミ。頭を出さずに、ゆっくり車を前に進めろ」


「わかった」


 するとジワリと車が前に動き出す。またその瞬間を狙ったように銃弾が飛んで来た。銃弾を斬り落とし、車は前の車に接触する。そして俺は全員に伝えた。


「いいか? 皆! 頭を出すなよ!」


 俺はそのまま立ち上がり、気配探知を一気に広げた。


 百メートル、居ない。

 二百メートル、居ない。

 三百メートル、居ない。


 俺が気配探知を拡大させていくと、ようやく気配をつかんだ。なんとそいつは一キロほど先にいる。そこから正確に俺達を狙っているのだ。


「そんな事も出来るのか…。三十六階層のニードルビットの針みたいだ」


 敵の位置と攻撃速度を考えつつ、俺は皆の脱出経路を割出して行くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ