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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第二章 東京
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第130話 山手トンネルの戦い

 敵のヘリコプターは俺が燃やした森に向かって飛んでいった。俺達に腹を見せるように通過し、燃える森の周りを旋回し始めている。だが攻撃をする事は無いようだ。


 ミオが言う。


「私達を探してるのかな?」


「そうだろうな。だがアイツらは必ずこっちに来る」


「どうして?」


「アイツらは今まで高層ビルを攻撃していた。だからまずはあそこの高層ビル群を攻撃するだろう」


 そして想定した通り、ヘリコプターはこちらに向かって飛んで来た。


 タケルが言う。


「マジで来た」


「ああ」


 そして俺の隣りでは、ミナミが回収した武器のスティンガーをビルの縁に乗せて構えている。集中しているようで、言葉を発さずにヘリコプターを見ていた。どんどんビルとの距離が縮まり、ヘリコプターがビルの側面に止まった。


 するとヘリコプターから突然火柱が飛ぶ。爆発音と共にビルのガラスが弾け、更に銃撃が始まった。ビルのガラスが次々に吹き飛び割れていくと、中のゾンビ達がヘリコプターの音に誘われて次々に飛びおりていく。


 ミナミが意を決したように言う。


「よし」


 カチッ! ドシュ―! という音と共に、担いだ武器から長い棒がとびだし、尻から火を噴いてヘリコプターに向かって飛んで行った。それはあっという間の出来事。


 ズドン! 


 一機のヘリコプターが爆発して落下していく。するともう一機のヘリコプターがビルから離れて、一目散に東へ向かって飛び去っていくのだった。


 タケルが叫ぶ。


「やったぞ! 南!」


「は、はは。本当に出た」


「何だよ! 震えてんのかよ」


「だって。怖かったし」


 俺がミナミに言う。


「上出来だ。これでこちらにも武装があると勘違いしただろう」


 ミナミが俺に振り向いて聞いて来た。


「だとどうなるの?」


「不用意にヘリコプターは飛ばなくなる。まずは敵の航空戦力に歯止めをかけた状態だ」


「なるほど…」


 そして俺は皆に言った。


「恐らく次は地上部隊がこっちに来るだろう。もう一機のヘリコプターが、俺達の位置を把握したからな」


「次はどうなる?」


「地図を」


 ミオが地図を取り出して、床に広げた。


 そして俺が指をさす。


「恐らく首都高のこの道路を通って来る」


「山手トンネルって書いてあんな」


「敵に見つからないように地下を通って来るだろう」


「で、どうすんだ?」


「ここで待ち伏せをする」


「地下でか?」


「そうだ。トンネル内なら周囲から追撃される事はないし車列を集中して叩ける」


 タケルとミオが顔をみあわせる。


「逃げ場がないぜ?」


「俺が逃げられないんじゃない。アイツらの逃げ場を無くしたんだ」


「なーるほどな。恐れ入ったよ」


 そして俺達は地下トンネルの入り口付近に進み三人に告げる。


「三人はこのあたりで待機する場所を探そう」


「わかった」


 俺達はすぐそばのビルで、地下の鍵がかかる場所を探す。するとすぐそばのビルの地下に、鍵の開いた部屋があった。鍵を壊す事も無いので、中から鍵をかける事が出来るだろう。都内はこういう場所がたくさんあって助かる。三人を部屋に入れて俺が言う。


「鍵をかけておけ」


「気を付けろよ」


「問題ない。土地勘が無い俺をここまで引っ張って来てくれてありがとう」


 ミオが俺に言う。


「道案内しかしてない。とにかく無事で帰ってきて」


「問題ない」


 俺が扉を閉める。すぐに地上に向かい山手トンネルの入り口に走った。そこから地下に入り込みひたすら奥へと進んでいく。車の進行方向からすれば逆行しているが、俺の読み通りならば間違いなくここに来る。更に奥へと進んでいくと、微かに車の音が聞こえて来た。


「ふうっ。敵が良く考えてくれるやつで良かった。手練れがいるおかげで、裏の裏をかくことができる」


 俺はトンネルの窪みに体を収め、そいつらが来るのを待った。次第に車のエンジン音が大きくなってくる。俺は道路に背中を向けるような姿勢で日本刀に手をかけた。


 五、四、三、二、一

 

「冥王斬」


 先頭の車から八台先まで真っ二つにした。車はそのあたりにぶつかりながら、トンネルを塞ぐように詰まっていく。すると先頭の方の車が爆発炎上し、それが後方の車へと飛んだ。あとからあとから車がぶつかって全ての車が止まった。


「曲がりになっていたのが良かったな」


 前が見えない為に次々に突っ込んだのだ。だが後方の車にはまだ生命反応がある。俺は縮地で生きている人間が乗っている車の側に立つ。ドアに手をかけてガパン! と外した。


「う、うう…」


 衝突したショック状態の男は血を流してこちらを見る。俺はそいつの眉間に日本刀を刺した。車内に入ると前の二人は死んでいた。後方ではようやく銃に手をかけた奴がいる。


 ドス。ドス。


 生きている奴らの頭を突いてとどめを刺した。そして俺は車の後部までいき後の扉を思いっきり蹴飛ばした。後部の鉄の扉が勢いよく吹き飛び、後ろの車の運転席に刺さる。飛ばした扉の上に人の顔が二つ乗っていた。


 そのまま後の車に歩いて行くと、中から這いずるように銃を持った人間が出ようとしている。俺はそいつの頭に上から飛び降り、ボキッと言う音と共にそいつの首が折れた。中にいる奴らが銃を構えようとしたので、首の折れた男を盾にして起こす。


 ガガガガガガガ! と銃声がするが全てその男の背中に吸い込まれた。俺はそのままその男を銃を撃つ奴らに投げつける。


「冥王斬」


 車ごと斬って離れた。比較的後方の車は破損が軽いようで、ようやく出て来た男達がこちらに向かって銃を撃ち始めた。


 俺はそのまま車の前に周って剣を握る。


「推撃!」


 破壊せずに物凄い勢いで後方に車を飛ばすと、一台目がペシャッ! と潰れて爆発する。


 ボグン!


 俺は金剛と結界を重ね掛けしていたが、最強硬度までそれをあげた。炎の中を歩いてそこを突っ切ると、後方の二台の車から降りた男達が一斉に銃を撃ってきた。もちろん極力当たらないようにするが、何発かは俺の体を捉えた。ガキン! と弾丸を弾き飛ばし何事も無かったように男達に迫る。


「ば、化物!」

「撃て! うてぇぇぇ」


 更に銃撃は増すが、こんなのは魔王ダンジョンの魔獣の攻撃に比べればそよ風だ。


「ロケットランチャーだ!」


「はい!」


 男が俺に筒を向け、そこから大きな弾が飛んで来た。俺はその弾を真正面からぶった切る。


 ドゴン! と派手に爆発した。


 男達の声が聞こえる。


「やったか!」


 何がやったかだ? 俺はそのまま爆炎の中から現れて、腰だめに剣を構えた。


「生きてやがる!」

「に、逃げ…」


「冥王斬!」


 車と人間を一度に斬ると、トンネル内が静かになる。


 車列の最後尾に立ってくるりと後ろをふり向いた。


「炎龍鬼斬」


 ごお! と音をたてて、俺の剣から巨大な炎の龍が現れ車を焼き尽くしていくのだった。俺は足元に吹き飛んだ破片を拾い上げる。


「ファーマー社か…」


 そこには俺達が奪った車についていたマークと同じものがあった。


「あの攻撃は中級のマジックキャスターくらいの威力があったな。ロケットランチャーとか言ってたようだが」


 だが話にならない。魔王ダンジョンの十五階にいた最上級のリッチの火球の方が、はるかに熱く威力があった。


「行くか」


 俺は車の破片を持って来た道を走り出すのだった。

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