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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第二章 東京
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第129話 おびき寄せる

俺達は立ち止まり地図を広げて見ていた。俺達が羽田空港を襲撃した事で、恐らく敵は一度兵をひいたはずだ。それが証拠に爆撃の音が止んでいる。


 それに、身体強化状態に慣れていない彼らが、自分の体を酷使している事に気が付いていない。そろそろ三人に休息を与えねばならなかった。炎上しているビルはここよりももっと東側にある為、このあたりに敵が来るとしてもすぐではないだろう。


「少し休まないとダメだ」


 俺が言うとミオが答える。


「まだ大丈夫だよ」


「いや。限界を超えてはならない、まだその状態に慣れていないんだ」


「う、うん…」


「安全な場所を探す」


「わかったわ」


 俺はミオに言う。


「近隣のショッピングモールはどこだ?」


 ミオが地図を指して言う。


「ここがそうよ」


「行こう」


 俺達はすぐにそこに向かった。都心部はゾンビが多いが、俺にとっては何も問題はない。ざくざくとゾンビを処分してショッピングセンターについた。


 ミナミが言う。


「ガラスが割れてる」


 気配探知をしても数体のゾンビが中に入り込んでいた。


「中を片付けよう」


 俺達が中に入り一体ずつゾンビを潰した。そしてタケルが言う。


「物資がありそうだな」


「食える物を探そう」


「よし」


 ショッピングモール内を探すと、缶詰やドライフーズがあった。そして三人はそれらの食品表示をじっくりと見て選んでいく。ユリナが気になる食品添加物を教えてくれたので、なるべくそれらを省くように取っていった。


 タケルが言う。


「集めたぞ」


「地下に行こう」


 懐中電灯を照らして暗い地下へと下りていく。懐中電灯に照らされてゾンビが浮かびあがったが、俺はすぐさま日本刀で斬り捨てた。


「あと四体いる。ちょっとまて」


 真っ暗の地下で俺はゾンビを全て片付けた。さらに奥に行くと店の裏手にドアがあった。


「ここに入ろう」


「ああ」


 中に入るとミオが言う。


「店のバックヤードみたいね。いろいろ在庫も置いてあるみたい」


 タケルがドアを閉めて言う。


「鍵が、かかるぞ」


「なら皆は一旦ここで休め。俺は偵察に出る」


「わかった」


「二時間で戻る」


「おう」


 ショッピングモールの地下に三人を置いて、俺は再び地上に出た。いまだに爆撃音などは聞こえず、不気味なほどに静かだった。近隣のビルの屋上に登り東側を見るが、黒煙が黙々と立ち昇るだけで情況は変わらない。俺はくるりと周囲を見渡していく。


 首都高はすぐそばにあるか。


 そしてぐるりと反対側を見ると、森のような場所が見えた。


 なるほど。あれが使えるな。


 俺は建物の屋根と屋根を飛んで、その森へ五分もかからずに到着する。恐らくここは公園だった場所だが、手入れが行き届いておらずに雑草と木がうっそうと生い茂っている。


「よし」


 俺は森を出て周辺に散乱している車を見渡し、道端にある車を押して森に突っ込んだ。俺は次々に車を森に突っ込んでいき、三十台ほど突っ込んだところで時計を見る。


 そろそろか。


 タケルと約束した時間が近づいたため、俺は森に向かって刀を構えた。


「フレイムソード!」


 ゴオッ! と炎が伸び、木々が燃えていく。それを確認し俺はすぐさま皆のもとに走った。地下の扉の前に立ってノックする。


 コンコン! 「ヒカルだ」


 ガチャと扉が開いてミオが顔を出した。


「どうだった?」


「仕掛けをしてきた。出るぞ」


「わかった」


 タケルとミナミも出て来て、俺達はショッピングモールを出た。そして俺が火をつけた森の反対側に向かい進み始める。歩きながら俺は三人に伝えた。


「この先の首都高を越えて向こう側に行くぞ」


「なにかしたのか?」


 タケルが俺に言った瞬間、後方から爆発音が聞こえた。


 ドン!


「ば、爆撃?」

「ヘリとか居ねえぞ」

「まずいんじゃない?」


 だが俺が冷静に言う。


「違う。あれは俺がやった」


「何だって?」


「オトリだ」


「オトリ?」


「とにかく急げ」


 俺達が首都高速を潜り、更に先に進んでいくと高層ビル群が見えて来た。


「あのビル群が見えるところに陣取るぞ」


「わかった」


 俺達はそのビルがある場所から離れた所にある、低いビルの屋上に登る事にした。屋上に登ると俺が燃やした森の方面が黒々と煙を立ち上らせており、まだ爆発音が時おり聞こえていた。


「どうすんだ? ヒカル」


「待つだけだ」


「待つだけ?」


「そうだ。飯でも食おう」


 俺達はそこで入手した食料を広げ、食事をとり始める。食える時に食っておかないと、この三人は動けなくなってしまう。消費分を補う事を覚えさせなければならない。普通の人の稼働以上の動きをすると、エネルギーが欠乏して突然動けなくなるからだ。


「ヒカル、悠長に食べてて大丈夫?」


「問題ない」


 ミオとミナミを見て言う。タケルが二人に言った。


「はは。ヒカルがこういう時は、マジでそうしたほうが良い時だ。食おうぜ」


「わかった」

「うん」


 あちこちで立ち昇る煙を眺めながら、俺達は缶詰を開けて食い始めるのだった。


「しばらくすれば敵が視察に来るだろう。それで敵の状態が分かる」


「来るとしたら、ヘリじゃねえかな?」


「そうかもしれん。だがどういう動きをするのかは実際に見て見ないと分からんからな。爆撃をするかもしれんし、手を付けずに戻るかもしれん。俺の想定では二機が飛んでくるはずだ」


「わかった。とにかくヒカルに任せるしかねえ、指示はくれるんだろ?」


「ああ。それを試してみたくないか?」


 俺はタケルがバズーガと言った武器を指さす。


「ん? ていっても、使い方が良く分からねえぞ」


 タケルが言うが俺はミナミをチラリと見る。するとミナミが笑って言う。


「私が知ってるわ」


「マジか?」


「武器の使い方なら任せて。何故か手に取るように分かるのよ」


「すげえな」


 そう。ミナミはそういう文献を読みふけ、銃の手入れを始めた。かなりの知識を蓄えている事を俺は知っていた。


「ちなみにタケル。これはバズーカじゃないわ。スティンガーよ」


「スティンガー?」


「対空兵器」


「へえっ、こいつはそういうヤツなんだ」


「そうよ」


 俺達が食べ終わり、東の空を見ていると…来た。


「ヘリコプターだ」


「想定通りだな」


「恐らく敵は何の情報も持っていない。だから情報が取れそうならすぐに動くさ。相手を見極めないといけないからな」


「そういうもんなんだな」


「ああ」


 俺達は荷物を背負い動く準備を始めた。ヘリコプターは二機、真っすぐに俺が燃やした森へと飛んで来るのだった。

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人間味薄味な主人公くんより武くんめちゃくちゃ好き、なんだこの漢気の若者わよ。 今の認識で読み直したら序盤の武くんの腕切り落としたシーンに「何してんだコノヤロウ!」と主人公にキレちまうぜ……
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