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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第二章 東京
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第111話 殲滅中、情報を耳にする

ぞろそろと人間が集まって来るので、恐らくは他の建屋にも人がいる事が分かる。俺はその車が来た方角に向かって走った。暗闇から暗闇へと走り抜け、何棟か建物を過ぎると灯りが点いている建物が見えて来た。


 俺はその明かりのついた建物の二階の屋根に飛びあがり、建屋内にいる人数を掌握した。ほとんどが出て行ったのか、十人ぐらいしか建物の中にはいなかった。そして立ち上がり再び周囲を見渡すと、どうやら港に浮かぶ船にも灯りが灯っているのが見えた。


「だいぶ広範囲に分布しているな。最初に派手にやり過ぎたかもしれん」


 俺はすぐさまその建屋の二階から侵入する。真っすぐに人のいる部屋に侵入すると、そこには三人がいた。彼らはこちらに気づいたが、誰が来たのかが分からないようで言葉を失っている。


 シュッ。言葉を発される前に三人を刺殺した。すると誰かが廊下をこちらに向かって歩いて来ているようだった。俺はドアの側に立ってそいつが来るのを待った。それが顔を出した瞬間に目から脳天にかけて短刀を差し込む。そっと倒して俺は先に進んだ。


 その建物を掌握するのに時間はかからなかった。二分ほどですべてを殺害し、次の灯りが灯っている建屋へと走る。


 そして次の建物を確認すると、そこには男はおらず女子供がいた。恐らくはヤクザたちの家族なのだろう。俺は危険性は無いと判断し、次の建屋へと進んでいく。すると次の建物にも女子供がいた。俺はそいつらの会話に聞き耳を立てる。


「お父さん達、こんな夜にどこいったの?」


「ああ、それはね。きっとゾンビから人々を助けに行ったのよ」


「そうか! また仲間を連れてくるんだね!」


「そうね」


 どうやら母親と子供が話をしているらしく、ふつうに平和な暮らしをしているようだ。俺はその棟も無視して次に進む。


 俺が周囲の建物を確認した結果、どうやら女子供が内側の住宅にすんでおり、その周りを男達の棟が囲んでいるようだった。どうやらヤクザでも女子供は守るという意識があるらしい。そして俺は走りに走りまくって、女子供がいる以外の男がいる棟を回って皆殺しにした。


 屋根の上から海を見ると小さな船が何艘も浮かんでおり、そこにも人間の気配がした。


「沈めておこう」


 俺は海沿いに近づいて、暗がりに潜む。船からも男達の話し声が聞こえて来る。


「なんが凄い音がしたぞ。空母の方角に光が見えないけどどうなってんだ?」


「部隊が確認しに行っている。とにかく待つしかないだろう」


「ゾンビか? いざとなったら海に出ようぜ」


「まあ…そうだな」


 そう言う事か。どうやらこいつらは、いざという時に逃げる為に船に乗っているのだ。二艘並んでいるので、俺はその二艘が視野に収められる場所に立つ。


「冥王斬」


 船の船体部分を切ると、船は静かに沈んでいくのだった。


「あ、あれ? 沈んでんぞ!」


「陸にあがれ!」


「おい! こいつ死んでるぞ!」


「こっちもだ!」


 どうやら船体と一緒に斬られた奴がいるらしい。無事だった奴が慌てて陸地に飛び移って来たので、順番に刺突閃で頭に穴をあけていく。俺は再び住居がある場所に戻り、男達を見つけてはしらみつぶしに殺していった。


「大体こんなところか…」


 後は女子供だけとなったので、俺は住居地帯を離れてクウボがあった場所に向かう。すると男達が海から人を引き上げていた。どうやら斬ったクウボから命からがら逃げだした奴らがいるらしい。海に飛び込んだ奴らに、綱を投げて引き上げているところだった。


 港には全くの遮蔽物が無く、皆が海に集中していてこちらを振り向きもしなかった。俺は腰を落として剣技を発動させた。


「飛空円斬」


 見えている範囲のヤクザが真っ二つになる。綱で引き上げていたヤツラも、上半身を海に持っていかれて落ちていった。途中まで引き上げられていたヤツラが再び海に落ちていく。


 俺が死体の上を歩いて岸壁に近づいて行くと、海の方から声が聞こえた。


「おい! どうした! 早く引き上げてくれ!」

「たのむ! 急いでくれ! 波があっておぼれそうだ!」

「なんだ? 答えてくれ!」

「どうしたんだ!」


 海の方ではパニックになって、男達がおぼれかけていた。俺は岸壁から下を見下ろす。俺にはどこにどんな人間がいるか分かるが、相手からすれば真っ暗で何も見えないだろう。だが俺の人影を確認した奴が言った。


「おい! あんた! 早く引き上げろ!」

「さ、寒い!」

「助けてくれ!」


 数十人が破片にしがみつき自力で泳ぐ奴もいた。少し波が出ていて、自由が利かないようだった。俺は日本刀に魔力を込めて、剣に魔法を発動させる。


「氷結斬」


 ピシィィィィ! と海が凍り付いた。恐らく浮かんでいた者達は、骨の髄まで凍ったはずだ。ドラゴンでも凍らせることが出来る剣技なので、人間が生きていられるはずも無かった。海の向こうを見れば光っている建物が数棟あった。あそこを襲撃するなら、海を越えて向こうに渡らねばならない。


「ひとまず後回しだな」


 海からの声が一切しなくなったのを確認して、俺は再び居住区に向かっていく。念には念をいれ、男を殺し損ねていないかを確認しなければならない。


 それから一時間をかけてしらみつぶしに男を殺した。そのおかげで、この地区に残っているのは女子供だけとなったはずだ。


 そして俺は自分のバイクを置いた場所まで走る。海の向こうで光っていた建物に行く為だ。俺はバイクに乗ってそちらの島に向かって動いた。ある敷地に侵入していくと再び海辺に出る。どうやら対岸までは橋が架かっておらず、少し離れた小島のようになっているらしい。


 俺は島まで五十メートルくらいの距離の所を見つけた。


「ここからなら届くか」


 身体強化を施した俺には造作もない距離だ。


 海を飛び越えて島に潜入し、光の見えた場所へ向かって山に入って行く。この小高い山を越えた向こう側に光が見えてきた。


「あった」


 先ほどの居住区と違い、堅牢な建物が見えて来る。一気にその建物の屋上に降り立ち、すぐさま扉を壊して建物内部に入る。人の気配がする方向に一直線に向かっていくと、部屋の中に十人ほどの人間がいるのが見えた。


 話し声に聞き耳を立てる。


「しかしよ。放っておけばいいと思わねえか?」


「だな。もうこんな状態なんだからよ、面子もへったくれもねえよな?」


「しかもヘリを三機も動員してだぜ!」


「どんな奴がいるつーんだ!」


「いや。もしかしたらよ、自衛隊の生き残りとかいるんじゃねえのか?」


「つったってよ、あんな大部隊相手にどうすんだよ」


「自衛隊にも特殊部隊みたいのがあんじゃねえの? だと…どうかな」


「…ないとは言えねえな。でもよ、あの薬品は自衛隊にもまかれたんだよな」


「って、話だけどな」


「じゃあ。みんなゾンビになってるだろ」


「ちげえねえ」


 どう言う事だ? 故意にゾンビになったような話っぷりだ。


 決めた。俺は皆殺しにはせずに、一人を攫って事情聴取をすることにしたのだった。

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