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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第二章 東京
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第104話 新宿駅までの状況確認

 地上に出て来た俺はすぐさまタケルに回復魔法をかける。しばらく目を閉じていたタケルだったが、目を開き頭を振って俺に言った。


「あー、すげえな! ありゃ閃光手榴弾って奴だぜ」


「大丈夫か?」


「ヒカルが何かしてくれたおかげで、眼も見えるし耳も聞こえる」


「目くらましというやつだな」


「ボカンと行くと思ったけど、あれじゃゾンビにゃ効かねえな」


「そのようだ」


 俺達は地下鉄を確認して来たがゾンビはそれなりに居た。線路に落ちた奴も居たが這い上がっては来れないようだった。俺達に手を伸ばして襲い掛かろうとしても、高さがある為這い上がって来れないのだ。


「じゃ、もっかい行くか!」


 タケルがあっけらかんと言う。


「行けるか? 大丈夫なのか?」


「もう行ける。さっきはホント焦ったけどな」


「わかった」


 そして俺達は再び地下鉄に降りて行く。すると改札を入ったあたりに再びゾンビが来ていた。


「うわ! なんで増えてんだ?」


 どうやらセンコウシュリュウダンを使ったため、音に線路の奥から押し寄せてきたのだろう。


「恐らくあの音だ。かなりの大音量だったから、どんどん集まって線路からあふれたんだろ」


「なるほどな」


「練習の続きだ」


「了解ーっ!」


 パンパンパンと乾いた音をさせて、タケルがゾンビを退治していく。少しずつ奥に進んでいくとカチンと音をさせてタケルの銃が止まった。


「弾がきれた」


「補充は効くのか?」


「えっと、ちょっと待ってくれ」


 タケルが銃の一部を外して腰から部品を取り銃にはめた。その間に近寄るゾンビを俺が始末しながらタケルに言う。


「二十秒くらいかかるか…」


「片腕だからなこれが限界だ」


「女達はもっと時間がかかるな」


「かもしれねえ」


「その間に逃げなければゾンビにやられると言う事か」


「そうなる」


 それが銃の大きな弱点となるだろう。弾切れした間にゾンビが押し寄せれば逃げるしか方法がない。やはり魔力や剣技のないこの世界の人間にはかなりの脅威だ。東京にヤクザが進出してこないには理由があるのだ。


「銃弾が無くならない武器があれば良いんだがな」


「どんな機関銃でもいずれ切れる。それに東京都のゾンビの数の方が多いだろうな」


「DVDの映画で見たような爆弾は使わんのか?」


 俺が見せてもらったゾンビの映画では、あふれ出たゾンビを一瞬で吹き飛ばす爆弾という兵器を使っていた。あれを使えばある程度は何とかなりそうだ。


「あの映画で使われたやつか? ありゃ核爆弾っつーおっかねえ爆弾だ」


「人間はあれを使わなかったのか?」


「俺は直接見てねえけど、空港に居る時に海外で使ったって情報を掴んでいたな」


「それで一掃するわけにはいかなかったと?」


「あれは使った後に人間が生きられなくなるんだよ。放射能つう毒が体を蝕んで死ぬんだ」


「なんだと? そんなものを戦争で使ったら、人間はどうやって生きていくつもりだった?」


「それが分かってたから使わなかったさ。唯一それを使われた国が日本だったってだけだ」


「だが、タケルたちは生きている」


「使われたのは二カ所だったんだよ。そんで日本は復興したんだ」


「それはDVDで見たな。この東京も焼け野原だったとは信じられん」


「偉え人達が頑張って復活させたんだよ。それによ、それがあったから日本は核弾頭を持たなかった。日本にゃあ核爆弾はねえんだ」


 そう言う事か。その放射能とやらで人が死んだらまたゾンビが増えるだけだ。俺達の世界では聖職者やマジックキャスターがいればゾンビなどは余裕で対処できたが、この世界ではそういう訳にはいかなかったらしい。


「なんでゾンビが現れたんだ? ネクロマンサーでもいたのか?」


「ネクロマンサーつーと、死者を動かす奴だっけ?」


「ああ」


「ヒカルの世界じゃそうかもしれねえが、この世界のゾンビは違うんじゃねえかな? たぶん」


「なぜ増えたのか分かっていると?」


「全部、仮定の話ばっかりだ。でも有力なのがウイルスってやつだな」


「それは映画でも見た。だがそれならなぜ、タケル達はゾンビにならない?」


「噛まれてねえからだ」


「でも死ねばなると?」


「だな…なんでだろうな? つーかならねえ死体もあるのはなんでかね?」


 と、のんきに会話をしているが、カチン! とタケルの銃が空になった。


「これで終わり」


「圧倒的に弾が足りないと言う事か…」


 俺はすぐさま飛空円斬で視界に入ったゾンビを全て両断した。


「まだあるぜ」


 タケルは腰に差した小さな銃を見せた。


「いや。それは逃げ出すタイミングを作るくらいしか出来ん。試験の必要はない」


「あいよ」


 そして俺とタケルは再び線路に向かう。


「ホームにも少しいるな」


 すぐさますべてを両断した。そして俺は線路の下で蠢いているゾンビをフレイムソードで焼き尽くし、すぐさま水龍閃で火を消す。


 タケルが言った。


「地下鉄を使えるようにするなら、地道に駆除していかねえと無理じゃねえか?」


「その通りだ。今日進めるところまで進んでみよう」


「じゃあ新宿方面に進むか」


「どっちだ?」


「こっちだ」


 ゾンビを焼いた線路にタケルが飛び降りたので、俺も続いて降りる。


「地下鉄なんか歩いた時ねえけど。ちょっとだけわくわくすんな」


「ふっ、そんな事を言うのは、うちの集団じゃタケルくらいだろ」


「違いねえ」


 俺達が地下鉄を進んでいくが、しばらくはゾンビが居なかった。恐らく先ほどのセンコウシュリュウダンの音で誘われて、全部がこっちに向かってきていたのだろう。そしてその空洞の広さも申し分ないものだった。


「そこそこ大きな車も通れるな」


「まあ電車自体がでっかいからな」


 俺は地面を走る鉄の太い棒を指さす。


「この上を走るのか?」


「そうだ。このレールの上を走るんだ」


「確かにこれじゃあ、スポーツカーは走れんな」


「だろ? そこそこのRV車じゃねえと無理だと思う」


 俺達が更に先を進んでいくと、ちらほらとゾンビが出て来た。タケルの銃は弾が無いので、俺が全てのゾンビを処理していく。そしてまた広い場所に出た。


「駅だ」


「もうか」


「ああ」


 そしてタケルがライトで中を照らすと、それに気が付いたゾンビが近づいて来る。邪魔なので視界に入ったゾンビは全て飛空円斬で一斬りした。そしてタケルが言う。


「赤坂見附だな」


「この漢字は見たぞ」


 俺が言う。


「読めるようになったのか?」


「いや、形で覚えている。この地上に俺が毛布を取って来た店がある」


「おお! なら皆で安全に来れそうだな」


「ああ」


 そして俺達は更に先を進む。そして再び大きな空洞に出て確認した。


「四谷だ」


「新宿まではどれだけかかる?」


「どれくらいだろう?」


「ま、歩いてみればわかるか」


「だな」


 そして一時間歩いたところの駅に差し掛かった時だった。大きな鉄の小屋のようなものがそびえ立ち、洞窟を塞いでいるのだった。


 俺はタケルに聞く。


「こりゃなんだ?」


「これが電車だ。どうやらここで止まってしまったんだろう」


 見上げるデンシャの窓から一体のゾンビがこっちに飛びかかろうとするが、窓に遮られて留まていた。


「ホームの反対側に周るか、脇をすり抜けるかだな」


「脇を行こう」


 俺達が電車の脇を進んでいくと、ガラスで遮られた車内にゾンビが居て俺達に手を伸ばしてくる。だがガラスがそれを邪魔して飛びかかる事は出来ないでいた。


「おー、乗ってる乗ってる!」


「そうだな。まずは放っておこう」


「あいよ」


 先を行きながらタケルが言う。


「電車があると車が通れねえよな」


「不要なら破壊するだけだ」


「電車をぶっ壊すか…確かに護送車を真っ二つにしてたもんな」


「同じ要領だ」


「まあ、このトンネルを壊さねえようにな。崩れたら元も子もねえ」


「わかった」


 そして俺達が最初の駅から歩く事一時間半かそこらだった。ようやく目的の新宿についた。前の駅あたりからゾンビの数が爆発的に増えており、ここは殊更ゾンビが多かった。俺は目に見えるゾンビをことごとく斬り捨てて行く。


「まっじで、うようよ居るなあ」


「地上から降りてきたのだろうか?」


「そうかもしんねえ」


 そして俺達はそのままホームに上がり、出口目指して進んでいく。それからは大量のゾンビを切る作業に入った。斬っても斬っても死角から這い出て来るゾンビを駆除していく。地上と違ってかなり駆除に時間がかかりそうだった。


 タケルが言う。


「結構しんどそうだな」


「俺が居なければ…無理か」


「だな…」


 新宿の地下はいたるところにゾンビが入り込んでおり、気配感知の出来ない皆では危険だった。銃で駆除したとしても後ろや横からどんどん出てくるので、対処の方法が難しいだろう。


「どうするよ?」


「いたるところで堰き止めないと無理だろう」


「そいつは結構、骨だぜ。この地下鉄ってなああちこちで繋がってんだよ」


「そうか。今回の調査で何とか目処がつくと思ったが甘かったな」


「しかたねえよ。みてみねえと分かんねえし」


「それもそうだな」


 そして俺達は湧き出るゾンビを斬りつつ地上に出る。地上にもゾンビはおり俺は飛空円斬で一気にすべてを斬った。


 そして俺がタケルに言う。


「じゃあもう一つ試験だ」


「なんだ?」


「車を調達しよう」


「いい感じので動くのがありゃあいいけどな」


「ものは試しだ」


 俺とタケルは付近で動きそうな車を探し出す。タケルが言うには車高の高い車らしいが、なかなか見つからなかった。そしてタケルがエンジンがかかる車を見つけ試してみることにした。


「営業車っぽいけどな」


 見つけた車はずんぐりむっくりでカッコ悪かった。


「…カッコ悪いな」


「だけど試験するには丁度いいだろ?」


「なら行ってみるか」


 タケルが運転をして俺が隣に座った。タケルはそのまま地下鉄の入り口から降りていく。かなり車体は揺れるが、車は地下に向けて階段を降りていくのだった。

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