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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第二章 東京
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第99話 国立国会図書館

 国立図書館は二棟に分かれており、それぞれ入り口は一カ所だった。入り口が一カ所というのはとても守りやすい。入り口は二階にあり、バリケードを作るなら一階から地下に降りる場所だろう。


 ミナミが言う。


「地下八階はこの新館よ」


 このあたりは広く何故がゾンビの数も少ない。俺達は新館の入り口を開けて入って行く。そして俺がみんなに言った。


「ゾンビが少ないな」


「ここは人で混む事も無かったと思う」


「だがゾンビはゼロではない」


 そう言うと皆が気を引き締めた。そのまま奥に行くと、奥からノロノロとゾンビが向かって来た。するとヤマザキやユリナが言った。


「あれ…議員じゃないか?」


「本当だ。見た事ある」


 俺は二人に聞いた。


「知っているゾンビか?」


「いや。テレビで見たことがある程度だ」


 じりじりと近づいて来たので、俺は刺突閃で脳天を撃ち抜く。ドサリと倒れて動かなくなった。その音を聞きつけたのか、三体ほどのゾンビがずるずると向かって来る。


 ツバサが言う。


「名札付けてるね。職員さんかも」


 俺はすかさず刺突閃で脳天を貫き次々に倒していく。建物に傷を付けたくなかったのでなるべく広範囲の斬撃を使わないようにした。気配感知で内部を探るが、この階にはあといないようだ。上の階と一階には居るが各層片手で足りた。


 俺が言う。


「地下への階段を探そう」


「そうだな」

「ああ」

「そうね」


「この構造なら懐中電灯も使える」


 皆が懐中電灯を持ちだして辺りを照らした。そして俺達は階段を探し始めた。


「一階に続く階段があるぞ」


 俺達はその階段を下へ下りて行った。だがそこで俺は疑問に思った。


「ミナミ。地下に降りる階段は無いぞ。階段はここで終わりだ」


「私も知識で地下八階まであるって知ってるだけで、行った事はないんだ。だから何処から降りるのかは分かんない」


 一応アオイも見るが首を振るだけだった。だがアオイが言う。


「でもね。勉強したの、下に八階の書庫があるんだって」


「わかった。地下階段を探そう」


 そして俺達は一階をくまなく探した。開かない扉もあるが、それはあえて壊さずに進む。拠点として使う際に鍵はなるべく壊さないようにしたいからだ。結局一階を全て探したが、地下に進む階段は無かった。


 ヤマザキが言う。


「ならばあのエレベーターしかないのだろう」


 それにユリナが答えた。


「確かにね。B1からB8までの表記はあったから」


「恐らくは職員の許可無くしては入れなかったんだろうな」


「まあ普通に考えればそうか」


 皆はそこで考え込んでしまい、ミオが口を開いた。


「電気を通さないと降りるのは無理とか?」


 するとヤマザキが答えた。


「そういう訳でもあるまい。恐らくあの鍵のついた扉が地下階段の入り口じゃないか?」


 タケルがポンっと手を叩いて言った。


「ならよ! 壊すか鍵を探せばいいだろ?」


 それを俺は一旦止める。


「タケル。皆は疲れているんだ。これから鍵探しとなるとかなりの労力がかかる」


「じゃどうすんだよ」


「エレベーターから入ろう。あそこは下に続いているんだろう?」


「は? 電気は通ってねえぞ」


 俺がエレベーターに近づいて、スッと扉に手をかけて両側に押した。するとエレベーターの入り口が開き、中に真っ暗な空洞が見えた。


 ヤマザキが言う。 


「真っ暗だぞ」


 俺がエレベーターの中を見ると、何か鉄の縄のようなものが見えた。


「この綱はなんだ?」


「エレベーターを吊るしているワイヤーだな」


 俺は無造作にそのワイヤーに飛び移った。


「危ない!」


 ミオが後ろで叫んでいるが無視した。そのままスルスルとワイヤーを伝って地下に行くと、同じような構造の扉があるのが見える。俺はその扉に飛び移り手を突っ込んで開いてみる。真っ暗ではあるが、そこから内部に入れこめそうだった。


「ここから入れる!」


 俺は上に向かって言う。すると顔をのぞかせているタケルが言った。


「わかった! じゃこっから行こう!」


 それにユミが声を荒げる。


「無理よ! あんたは行けるかもしんないけど、私達はここから降りれるわけ無いじゃない」


 ヤマザキもそれに賛同したように言った。


「そうだぞタケル。しかもお前は片腕じゃないか! 落ちたらどうするんだ?」


「は? そんなもんヒカルがやってくれんだろ? なあ! そうだろ?」


 タケルに俺が答えた。


「もちろんだ!」


「ほらな」


 皆がシーンとしているがアオイが言った。


「じゃあ、私から連れて行って!」


 だが俺はアオイに言う。


「いや、先にタケルとヤマザキだ。気配感知ではゾンビの気配はないが、俺が皆を降ろしている間に万が一があると困る」


「う、うん」


 俺はすぐさま一階に戻り、タケルの手を握った。


 タケルが言う。


「で、どうすんだ? お姫様だっこか?」


 にやにやしてふざけているようなので、俺が言った。


「こうだ」


 俺はタケルの手を握り、そのまま反対の手で綱を握りするりと地下におりて開いた扉にタケルを投げる。


「おわ!」


 ゴロゴロと転がって止まったタケルが言った。


「そりゃねえんじゃねえか?」


「男をお姫様扱いする趣味は俺には無い」


 するとユミが言う。


「タケルが悪いよ。ふざけた事言うから」


「ばーか。場を和ませようとしただけだっつーの!」


「あら、そう」


 そして俺はヤマザキを見た。


「…ははっ…お手柔らかに」


 俺はヤマザキの手を握り、そのままするりと降りて静かに地下一階に降ろした。それを見たタケルが言う。


「随分と差があるじゃねえかよ!」


「ヤマザキは年だからな」


 それを聞いたヤマザキが情けない笑いを浮かべて言う。


「それはそれで傷つくんだが…」


 タケルは大笑いしながら言った。


「そう言うなって! おじさんなんだから仕方ない仕方ない!」


「この!」


 じゃれてる二人を置いて、俺は再び一階に上がる。すると皆がアオイを指さした。


「よし。おいで」


「うん」


 そして俺はアオイを地下に下ろし、次々と女達を一階に降ろしていく。全員を降ろし終えたので、一階のエレベーターの扉を閉め地下に降りた。そして地下一階のエレベーターの扉を閉める。


「真っ暗」


 その言葉を聞いた俺が言う。


「タケルが背負ったリュックに何個かカンテラを入れてある」


「あ、俺のに入ってんのか?」


 そう言ってタケルがリュックを降ろし、中からカンテラを取り出した。灯りを灯すと、一気に周辺が見渡せるようになる。奥は暗いが、歩いて行くには十分だった。


「どうやって下まで降りるんだ?」


 ヤマザキが聞いて来るので俺が伝えた。


「一階ずつ今の方法で降りていくか、階段を探すしかあるまい」


「なら…階段を探そう」


「ああ」


 俺は一気に気配感知をする。すると地下にはゾンビの気配はなかった。


「地下にゾンビはいない」


 俺が言うと皆がホッと胸をなでおろした。マナが皆を元気づけるように言った。


「よし! 階段をさがそ!」


 そして俺達が地下を歩き回ると、吹き抜けになった場所に階段を見つけるのだった。その階段は真っ暗になった地の底に続いている。まるで前の世界のダンジョンのようにも見えた。


「降りよう」


 俺が先頭に立ち、その階段を一階ずつ降りていく。なんなく地下八階に下りる事が出来たのだった。そこで俺が言う。


「これは良いぞ!」


 それにタケルが聞き返した。


「なにがだ?」


「守りにもいいし。ゾンビがいない! そして敵に気づかれにくいという、利点だらけの拠点だ」


「なるほどな。だけど、居住空間があるわけじゃないから過ごしにくいと思うぞ?」


 マナが頷いて言う。


「やっぱりスイートルームとは全然違う」


「いや。快適さはこれから追及していけばいい。俺が夜な夜な東京を徘徊して、高級寝具や家具を集めて来てやるさ」


「期待してます!」


 マナが言うと皆がけらけらと笑った。だがそろそろ休ませないと、体を壊してしまう可能性がある。俺はすぐに皆に言う。


「とにかく奥に行こう。この階層にもゾンビはいない。今までより格段に安全だといえるぞ」


 それにミオが頷きながら言った。


「そうだよ! ゆっくり休めるって言うのはとても良いと思う! 悪い事ばかりじゃないって!」


「「「「はーい」」」」


 女達が答え、俺達は更に奥へと進んでいく。


「すっごい書棚の数だね」

 

「本当だ…何年分の書籍があるんだろう?」


「明日時間が出来たら皆で見てみようよ」


「賛成―!」


「とにかく座りたいわ…」


 女達の話にヤマザキが言った。


「同感だ。とにかくフラフラだよ」


 俺達は国会図書館の地下八階の一番奥にたどり着いた。今日の所は寝具などはないが、一息つけるのは間違いない。皆はそれぞれが床に座り深いため息をつくのだった。

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