異世界恋愛で夏祭りとか普通だよね?
「え? なにこれ?」
私が書いた小説を読んだ友人は怪訝そうに眉を寄せる。
「え? って、今はやりの異世界恋愛だけど?」
「いや……それは最初に聞いたよ。
でもさぁ、なんで夏祭りなの?」
「……え?」
友人曰く、異世界なのに夏祭りはおかしいとのこと。
でも――
「異世界なんだから、何があっても別にいいでしょ?」
「いや……でもさ。
なんかヨーロッパみたいな雰囲気じゃない?
説明もなく唐突に夏祭りが始まったりしたら、
おかしいって思うのが普通じゃない?」
彼女の言う通りかもしれない。
でも設定は作者が好きに決めてもいいじゃん?
「設定なんて自由に決めていいでしょ。
そもそも魔法とかの方が不自然じゃない?
ヨーロッパには魔法なんてないでしょ?」
「うん? でも魔女とかいるよね?」
実在する魔女と、異世界の魔女は別物。
比較すること自体が間違っているのだ。
「現実の魔女と、ファンタジーの魔女は違うよ」
「ふぅん……」
腑に落ちない感じで私の話を聞く友人。
どうも納得がいかないようだ。
まぁ、別に納得してくれなくてもいい。
これが私の書きたかった世界なんだから。
私の作品を読んで誰が何を思っても自由なのと同じで、私が何を書いても自由なのだ。
「まぁ……いいけどさ。
でもやっぱり変なところがあるんだよね」
「変なところ?」
「どうして綿あめの原材料が岩なの?」
やれやれ。
また説明が必要か。
「これは砂糖味の岩なの。
岩塩の砂糖版だと思って」
「砂糖って鉱物とは違うと思うよ」
「それは現実世界のことでしょ?
私の世界では違うの」
「はぁ……」
呆れたようにため息をつく友人。
「なんでもありだね」
「そう、なんでもありなんだよ。
それが異世界」
「そっか……そう言うものなんだね」
ようやく理解してくれたらしい。
「それで、面白かった?」
「いや、全然」
「なんで?」
「だってさぁ……これ。
婚約破棄されないじゃん」
そう言って残念そうな表情を浮かべる友人。
「……は?」
「異世界恋愛って言ったら、ざまぁじゃん。
なんで王太子と一緒にラブラブ夏祭り楽しんでるの?
普通、悪役令嬢が主人公で、婚約破棄されて、
ざまぁするのが異世界恋愛でしょ?
おかしくない?」
おかしくない。
声高らかに訴えたい。
異世界恋愛にざまぁも婚約破棄もいらない。
愛に満ちたラブラブの恋愛こそ必要なのだ。
少なくとも、私にとってはね。