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没落令嬢オリビアの日常  作者: 胡暖
婚約者編

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11

 パチリ、音が聞こえそうなくらいな勢いで目を開ける。

 ガバリと、起き上がって周囲を見渡す。客室のようだけど、全く見覚えがない景色。

 さぁっと青くなって、一瞬目を見開いて、ぎゅうっと瞑る。とりあえず視覚情報だけでも遮断しなければ混乱でどうにかなってしまいそうだった。


(うそ、うそうそうそ!どうしよう!舞踏会の途中から記憶がない!!!)


 ここはどこで、今何時で、フレイヤ様はどうなったの!?

 必死に記憶を探ってこれまでの経緯を思い出そうとしても、何一つ分からなくて頭がパニックを起こす。

 確か、コンラード様と踊った後、動いたことで気分が悪くなって……


「気が付きましたか?全く、あんなにドレスを絞ったら気分が悪くなるのも当然ですよ」


 ピシ、と音がしそうなほど体が固まる。

 今一番聞きたくない声が、すぐ側から聞こえた気がして、更に血の気が引く。

 いつの間にか抱えていた頭をそっと解放して、恐る恐る目を開けて声の方に顔を向けた。


 そして、場違いにポカンと口を開けた。


「あなた、なんで、変装なんてしてるの?」

「質問したいことがいっぱいあるのは僕の方なんですが?あぁ、違うな…まずは、お仕置きだよリビィ」


 ひぇ。

 約三週間ぶりに会ったアルフレッドは、見慣れない金の長髪に、笑顔なのに全く笑ってない奇妙な顔でこちらを見ていた。嬉しいとか、会いたかったなんて可愛い感情は微塵も分かず、ヤバいとかどうしようとか、思考は乱れるばかりで纏まらない。


 口を開けたり閉めたりしながら、焦る私をよそに、優しい手つきで、容赦なく私をベッドに押し倒したアルフレッドが、獰猛な顔をしたまま乗り上げてくる。


「ちょ!?ま、待って…ん!か、噛まないで!」

「全く、あなたには僕の婚約者だという自覚が足りません。舞踏会で、他の男に抱かれていたあなたを見た僕がどんな気持ちになったか分かりますか?それに、こんな綺麗な格好をして…あの会場で、どれだけの男があなたを狙っていたことでしょう」


 一頻りキスを受けた後、アルフレッドがどさりと、私の首もとに顔を埋めて言う。

 あれ?これ、今着ているの、コンラード様に贈られたドレスだってばれたらまずい?

 私の体が強ばったことに気付いたように、そろりとアルフレッドが顔を上げる。


「……まだ、何か隠していますか?」


 やばい!アルフレッドの不穏な空気が増している!!私は、必死に頭を回転させる。ブンブン首を振りながら必死で叫ぶ。


「た、たとえ私に注目する奇特な人がいたとしても、わ、私が、もう貴方にしか嫁げないのは、貴方が一番良く分かっているでしょう?」

「えぇ、もちろん。貴女の体の隅々まで承知しているのは僕だけですよ。今までも、これからも。でもね、この国は女性の地位向上をうたっている。しかも、あからさまな身分差は難しいにしても、自由恋愛が持て囃されている。未婚の貴女は、注目の的だ。僕のいないところでフラフラ他の男に抱かれないでください」


 言、い、か、た…!まるで私が見境のないふしだらな女みたいじゃない。ふつふつと怒りがこみあげてくる。


「……大体、あなたが悪いんでしょう?私をほったらかしにするから」


 プイッと顔を背ける。私が拗ねたことに、アルフレッドの気配が緩む。


「……あなたは、ちょっと僕が留守にすると、黙って国外にまで飛び出してしまうような人なんですか?」


 悲しそうなアルフレッドに絆されそうになるが、ブンブン首を振る。


「あなただって黙って国外にいるじゃない!お互い様じゃない」

「僕は、留守にしますって言いましたよ」


 しゃぁしゃぁと言うアルフレッドの頬をぐにっと摘まむ。


「相手に詳細が伝わっていない時点で報連相が成立してないのよ!」


 ぐいぐい頬を引っ張る私を、アルフレッドは意外にも素直に受け入れている。


「大体、あなた何で変装までしてこんなところにいるわけ?」


 私が尋ねるとアルフレッドは少し考えて、軽く首を振る。


「あなたにはいずれ話さないと、と思っていたことではあるのですが……今は時間がありません。とりあえず…」


 これを、と差し出してきたのは綺麗な細工のされた腕輪だった。婚約の証のそれは、とても繊細で素敵なもので。でも、私が気になったのはそんなことではない。


「これって……ミシェルの?」


 つい先日見たミシェルの工房で、似たようなデザインの細工物を見たのだ。工房は数多くある、まさかと思いながらアルフレッドを見上げると、なんでもないように頷かれる。


「そうです。ミシェルは協力者ですから」


 他の女性の名前をスルリと呼ぶアルフレッドに少し心がざわざわする。お近づきのしるしに、と言ったミシェルにも少し勘繰りをしてしまう。

 胡乱な目でアルフレッドを見て、そして、はっとする。


「まさか、あなた……あの工房にいた?」


 アルフレッドは答えずにっこり笑った。

 懐かしいはずよ。毎日飲んでた、アルフレッドのお茶だもの!

 最悪だ。そわそわと婚約者(アルフレッド)へのプレゼントを探している姿を見られていたってこと!?


 私が固まっていると、コンコンとノックの音がする。アルフレッドはさっと唇にかさねるだけのキスを落とすと、片目を閉じてほほ笑む。


「何かあったらミシェルの工房に来てください。でも、危ないので、必要以上にうろうろしないでくださいね?」

「あ、ちょっと…!」


 そして、窓から軽やかに飛び出していった。


やっとこさ、ヒーロー登場です。

長かった…お待ちいただいてたか分かりませんが、お待たせしました笑

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