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本日はあと3回更新予定です。
ちょっと書きながら&合間に更新するので、何時とは言えないのですが…
次は11時ごろにできるといいなぁ。
よろしくお願いします。
観念したアルフレッドは、自分を取り巻く状況についてぽつぽつと説明し始めた。
どうやら、アリス嬢にうっかり爵位を継げなくなった発言をしたばっかりに、彼女が方々で、アルフレッドについての中傷をばらまいたらしい。
曰く、平民にうつつを抜かしたばっかりに、伯爵に厭われて爵位を継げなくなったらしい、と。
想像だけで、そんなことを大声で触れ回れるのはすごいなぁと思うけれど、公爵家のお嬢さんの発言を力ずくで止められるはずもなく…。アリス嬢があること無いこと言い触らしたが、子が無事に生まれるまではフローレンス様の懐妊は公に出来ない。伯爵からお前の軽口が原因なのだから謹んで責任を取るようにと言われ、奔走していたらしい…。
さらに、あまりに広がった伯爵家の醜聞に、どういうことだと遂には王家から質問が入り、流石に誤魔化すこともできずフローレンス様の懐妊の件を伝えたところ、伯爵家にもアルフレッド自身にも傷をつけずにこの噂を根絶する良い方法として、ガルシア子爵の件を建前に、アルフレッドの陞爵と王女の降嫁を打診された、という訳だそうだ。
「何それ…大変」
あまりに怒涛の展開にあんぐりと口を開ける。私は貴族社会から離れているから、まさかそんなことになっているとは思わなかった。
気の毒そうな顔で、アルフレッドを見ると、アルフレッドは苦笑した。
「全く…キャボット嬢のことをなめてかかった僕の落ち度です…」
自嘲の笑みを浮かべるアルフレッドを見ながら考える。
アルフレッドを取り巻く状況は分かったけれど、これを打破することは果たしてできるのだろうか…。まして王の提案は、オーエンス伯爵家救済のための善意からのものである。無下にはできないはずだ。
「…これ、何とか出来るわけ?」
「……何とかするしかないんです。……ここまで来て外野に邪魔されてたまるか」
「え?何?」
後半早口で全く聞き取れなかった。
問い直す私に、アルフレッドは首を振る。そして、こちらに向かって居住まいを正した。
「ねぇ、リビィ。僕は、何とか王妹の件は穏便にお断りしたいと考えています。それでも、もし、どうしても断れなかったら……」
アルフレッドはそこで一度言葉を切る。
ぎゅっと私の手を握る。
「一緒に逃げてくれますか?……もしかしたらもう、この国にはいられなくなるかもしれない。平民どころか、亡命では、市民権も得られない。苦労させないとは言えません。それでも…」
じっとこちらを見るアルフレッドは必死だ。いつも飄々として自分の内面を悟らせないようにしているアルフレッドにしては珍しい。
……でも、私はその方が嬉しい。
私は何も知らずに、守られているなんて性に合わない。知らず笑みがこぼれる。アルフレッドの手をそっと握り返す。
「いいわ。いざとなったら隣国に逃げましょう。かの国は、学問が盛んで、女性も立派に自立して働いていると聞くわ。二人で働けばなんとかなるわよ……それにね。実は昔から行ってみたいと思っていた国なの」
私の言葉に、アルフレッドがほっとしたように力を抜く。
「いい?フレッド、私はあなたが思っているより、ちゃんとあなたが好きなの。苦しいことやしんどいことは相談して?でないと、何のために一緒にいるか分からないでしょう?」
アルフレッドの額に、自分の額を合わせながらそう言うと、アルフレッドの肩が強張った。ぎゅうっと、アルフレッドの腕に抱きしめられる。アルフレッドの熱を受け取りながら、ゆっくりと目を閉じる。
あぁ、やっと落ち着ける場所に戻って来れた。そんな気がした。そっとアルフレッドの背中に手をまわすと、アルフレッドは引き絞るような声で囁く。
「あなたは…。僕のテリトリーの中で、そんな風に無防備に僕を喜ばせるようなことを言う。……僕は、ずっと我慢しているんですよ」
私はアルフレッドを見上げて微笑む。
「ねぇ、フレッド。言ったわよね?私、あなたが思っているよりちゃんとあなたの事が好きなのよ?」
ため息を吐くように声を漏らしたアルフレッドに、次の瞬間荒々しく唇を奪われる。首に添えられた手が燃えるように熱かった。他人に許したことのない場所に、アルフレッドの熱が触れ、私も同じように熱を返す。嵐のような激情に翻弄されながらも、幸福感に身をゆだねることにした。
だって、もう私は彼から離れる気はないのだから。




