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没落令嬢オリビアの日常  作者: 胡暖
恋人編

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 こうして、私たちはオーエンス伯爵家に居候することになったのだが、拍子抜けすることに、アリス嬢は行儀見習いとして伯爵家に入ることはなかった。

 アルフレッドが言うには、公爵家からまだ婚約が整って無い状況では、時期尚早であると丁寧な断りの返事が来たらしい。

 まぁ、ごもっともではある。

 公爵家のご両親は常識的な方々なのだろう。で、あれば、アリス嬢の毎日の訪問(娘の非常識)はぜひ止めていただきたかった…。

 そう。アリス嬢の毎日の訪問は続いているのである。

 おかげで、私は顔を合わせやしないかと毎日ひやひやしている。


 今、私とアルフレッドは、最近日課にしている食後のお茶をしていた。

 食事は使用人食堂で頂き、住んでいる部屋は保護者同伴。一緒に住んでいるのに、あまりにも接触機会が少ないとアルフレッドに嘆かれたのを考慮した結果、夕食後から就寝までの間に、温室でお茶をすることとなったのだ。さすがにこの時間には、アリス嬢も帰宅している。

 ガラス張りの温室はこじんまりとしているが、たくさんの観葉植物が育てられた落ち着く空間で、同時に庭の緑も眺められるので、休みの日の日中にもミシェルとよく訪れる。

 今は蠟燭をともしたランタンがたくさん置かれ、幻想的な空間を生み出していた。

 装飾的なベンチに二人で並んで座り、私はミルクティーを、アルフレッドは少しのお酒を楽しんでいた。

 穏やかな空気が流れる空間に、似つかわしくない金切り声が響く。


「まぁ!破廉恥な!!何をしてらっしゃいますの!?」


 そのあまりに大きい声に、体がびくっとなる。

 恐る恐る振り返ると、案の定アリス嬢がいた。

 いや、確かに距離は少し近いかもしれないけど、別に破廉恥なことは何もしていませんが、と言いかけた言葉をぐっと飲みこむ。


「キャボット嬢、こんな時間まで淑女が何をしていらっしゃるのですか?」

「アル様!私、フローレンス様とすっかり話し込んでしまって…!帰る前に、一言ご挨拶をと思って、探してたんですよ」

「そうですか、それでは目的は達成されましたね。お気をつけてお帰りください」

「そんな…せっかくお会いできたのに、そんなつれないことを言わないでください…それより」


 アリス嬢は可愛らしい声を途中で止めると、ぎろりと私の方を睨みつける。


「あなた、まだアル様に纏わりついているんですか?こんな時間に屋敷にまで上がり込むなんて汚らわしい…!」


 口元を抑えて吐き捨てられた。


(えぇ、実はお茶するだけじゃなく、ここに住んでます…なんて)


 確実に火に油を注ぐことになるので心で思うにとどめる。


「彼女は僕の客人です。失礼なことを言わないでもらえませんか?」


 鼻白んだ様子のアルフレッドが咎めるように声をかけると、アリス嬢はすごい顔をしてこちらを睨み付けてくる。

 …何でよ。

 おまけに、全く堪えていない様子で、つんと顔をそらせる。


「あら、私は本当のことを口にしただけです。アル様こそ婚約者である私を蔑ろにして、そのような下賤の者ばかりを気にかけていらっしゃったら罰が当たりますよ!」


 め、と人指し指を立てて、アルフレッドを注意する。

 うーん、あざとい。こういう可愛さが私にも必要かしら。

 婚約はまだ整ってませんよ、なんて当たり前の指摘も野暮なような気がしてしまう。なんだか面倒くさくなって、遠い目をする。

 ため息を吐いたアルフレッドが、ベンチから立ち上がる。


「オリビア先輩すみません。…キャボット嬢、お送りいたします」


 埒が明かないと、この場を連れ出すことにしたらしい。

 なんだかデジャブだわ。

 自分の方を優先してもらえたのだと、アリス嬢は機嫌を直し、アルフレッドの腕にしがみつく。私に勝ち誇ったように、ふふんと笑いかけ意気揚々と温室を出て行った。

 やれやれ、嵐が去ったわ、といつの間にか方に入っていた力を抜いた。

 しかし、話はそれだけでは終わらなかったのだ。




「…それ、何」

「……義母上から、リビィに宛てた招待状です」


 どうやら、翌日また来たアリス嬢が私が温室にいたことを、告げ口したらしい。妖精さん(フローレンス様)から、私宛にお茶会の招待状が届いたのだ。アルフレッドから差し出されたそれに目を剝く私。


「ど、ど、どうしよう?」

「大丈夫です。義母上は、話は通じませんが、悪い人ではありません」


 ちょっと待って、それフォロー?

 身もふたもない感じのアルフレッドの、義母評は置いておくとして、彼女は恋人の母親だ。ただでさえ、会うのは緊張する相手。ましてや、父親は()()()()()だったし…。

 本当に大丈夫かしら…。

 恐る恐る、手紙を確認すると、日付は1週間後になっていた。

 服は、ついこの間アルフレッドにプレゼントしてもらった服があるから大丈夫だとして、手土産を用意しないと。髪なんかも整えた方が良いわよね…ルーシーに自分でできるアレンジをまた教えてもらわないと。やらないといけないことが目まぐるしく頭を駆け抜ける。


「僕も一緒に行きますから」


 パニックになりかけていた私を落ち着かせるように、私の両肩に手を置いたアルフレッドがそう言う。それで少しだけ安心する。


「いいの?」

「えぇ。もともと、両親にはきちんとあなたを紹介するつもりだったんです。今回義父はいませんが、義母にはきちんと紹介させてもらいますよ」


 そっかー…と力の抜けた声で言いながら、アルフレッドの方に倒れこむ。

 アルフレッドに支えてもらいながら、肩口に頭をすりすりする。


「急だったから、びっくりした…でも、義母様、アリス嬢にあることないこと吹きこまれてたらどうしよう」

「大丈夫ですよ。この家の人間は他人からの評価を鵜呑みにするような人達ではありません」

「うん…」


 そうだといいな。

 出来ればアルフレッドの家族だもの、私だって仲良くなりたいと思っているのよ?


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