第4話
100シルバーで1ゴールドに両替できるが、二人の共同貯金はまだ、1ゴールドあるかないかのところで止まっている。
二人は、この一年間、クエストを達成すると報酬を三等分に分け、クウガとユウカ、それと共同貯金にそれぞれ振り込んで、経費は共同貯金から出していた。
ユウカは買いたい化粧品も1カッパー均一のもので我慢してかなりのお金を貯めているつもりだが、クウガはクエストに必要な装備品とは言え、高い刀を買ってばかりいるようで少し不満だった。
ユウカがクウガの方をチラッと見ると、もう眠りについているようだ。(クウガ君分かっているの?私たち、もう結婚できる年なんだよ?私の王子様)
7月1日午前10時に二人はキリス空港に着いた。
空港からは、もう海が目の前に見えていた。7月の暑い日差しが肌を焼く。
二人はラーの冒険者ギルドへ行き登録した。これで、7月2日の10時からダンジョンへ入れることになる。
そのままの足で予約していたホテルへと向かった。ホテル・キリス・東海岸というリゾートホテルだ。
中年の受付者が担当してくれた。
「クウガ・レイ様とユウカ・レイ様ですね。本日から五日間新婚旅行ですか、おめでとうございます」
ユウカがクウガの方を見るが素知らぬ顔をしている。
「はい、ありがとうございます」ユウカはにっこり笑った。
部屋はホテルの最上階、6階の海側にあった。
予約していたのは2階だったし、海とは反対の空港側の部屋だったし、ここはダブルベッドだが、元々はツインルームのはずだった。
「クウガ、何を企んでいるの?」ユウカの顔がクウガの近くにまで迫ってくる。
「ユウカとのパーティーを解散したい」真剣な表情でクウガが告げる。
「私が足手まといってこと?」
「はっきり言えばそうだ」そう言われて、今までの失敗が頭の中を駆け巡る。例えば、大イノシシに追われてコケタことや、スライムを見て失神したことなど、数えたらキリがなかった。
「私が冒険者なんて無理だよね、何となく分かっていたんだ」涙が自然とあふれてくる。
「退職金代わりにさ、これを受け取ってくれないかな」
クウガはミスリルでできた指輪を差し出した。ミスリルロッドの代わりにもなる指輪で、魔術師の結婚指輪では定番の物だった。
「こんな高い物?バカじゃないの?役立たずの魔術師を追い払うのに結婚指輪みたいな、こんな・・・結婚?」ユウカは泣きながら何かに気付いたようだ。
「俺、もうユウカに危ないことはして欲しくなくて、だから、俺と結婚して、俺のことを待っていてください」
「うん・・・」ユウカは素直にうなずいた。