テーマ「フリスク」
「はい、フリスクあげる。」
もし、ちょっと気になる女の子からプレゼントを貰ったのなら、それが何であろうと嬉しいものだ。
しかもそれが接点のない女の子だったら、、、
思春期の僕は、モテない僕は、(恋の始まりかも!!)と浮かれたって良いもんだよな。
でも、
このフリスクが
僕を変えてくれようとは
思いもしなかった。
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9月上旬。
夏休みも明け、平凡な日常が始まると思うと足取りは重くなるものだが、ウチの『知香良』はちがった!
夏休みの宿題も早々に終わらせ、予習復習も気を抜かずに、趣味のゲームに没頭した夏を越した『知香良』は!!
(授業めんどくせぇ〜.......なんでわざわざ学校に来て、わかってる内容をやらなきゃいけねぇんだよ〜.......イベクエも廻れねぇし、アイテム回収もままならん。)
他の誰よりも気分が上がらない毎日を過ごしていた。
今回のお話は、この知香良が主人公です。
この子は、勉強はこなせるのですが他はまるっきりダメな子でして...
見た目は小柄でプヨプヨした感じ。人間関係は土台も作れず、瓶底メガネに少し長めのボサボサヘアー。
こんな見た目のコミュ障だから、高校生活は基本的に楽しくなさげです。
勉強が出来なかったら、もう悲惨な人生を歩むことしかできなかったで(うるさいぞ!ナレーション!!!)
.............少し言いすぎたようです。
でも、正論だから煩いのでしょうね笑
ともあれ、知香良にとって学校はあまり楽しくはなく、行かされてるようなものでした。
そんな知香良でも、冒頭のようなことがあれば盛り上がってしまうのです。
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「ふんふんふふんふ〜ん♬︎」
帰り道。知香良は下手な鼻歌を披露しスキップをしている。軽く雨が降って湿気を多く含んだ土の匂いを嗅いでいるにもかかわらずだ。
今日、フリスクを貰ったのは2時間目終わりだったはずなのに、放課後になっても気分が落ち着くことは無かった。
「いや〜初めて学校で物貰ったな〜。しかも食べ物ってなかなか仲良くないと貰えないよな!さては.......!あの子は俺のこと好きだな〜!?」
彼のことをよく知っている私から見てもかなり気持ち悪い。今朝なんて、どうしたら合法的に学校をサボってソシャゲに没頭できるかを真剣に考えながら二度寝したアホなのに、こんな簡単なことで有頂天なんて.......
さすがウチの知香良.......。たかだかお菓子のひと粒でよくこんなによろこ(だからうるさい!ナレーション!!!)
.......はい?
だったら言わせてもらいますけどね!!
一体何処の誰なら、あんたみたいな見た目もコミュ力も最低ランクの正真正銘の根暗に恋が出来るんですかね!?
そのフリスクだって!たかだか余ってたか、もしくは口臭が気になるからあげたんじゃないですか!知香良くん!!!
(うっ…痛いところをついてくる.......!
でも!違うかもしれないだろ!少なくとも口臭はないね!!!)
いいや!!自分で気づけないモテない理由の中に口臭や体臭はよくあがりますよ!!というより、自分の体や口からフローラルやらラベンダーやらの香りがあるとでも、思い込んでませんか!?
ぜっったい!口臭が気になったんですよ!!あの女子は!!
(.............っ!!
んじゃ!変えてやるよ!!!
口臭も体臭も変えてもフリスクが貰えるのなら、脈アリでいいよな!!??)
はい!いいですよ!!
それをしたら、絶対にフリスクは貰えないですからね!
というより、早めに自分が公害レベルで臭いからフリスクを頂いたと認めた方がよろしいですよ〜!
(そんなことあるかぁぁあああああ!!!!)
さっきの有頂天は何処へやら。そう感じざるを得ないほど猛ダッシュで帰路を辿る。
だが、これで諦めないのもウチの知香良なのです。
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翌日の2時間目後。
「はい、フリスクどうぞ。」
「.............ありがと。」
.............はい??.......うそ???
(ナレーションさ〜ん?フリスク貰いましたよ〜?
これはどういう事ですかな〜?)
またも同じ女子から、昨日のリプレイかと思うぐらい、知香良の手にはフリスクがあった。それを口に含む知香良。
そして口の中の清涼感が鼻から抜けていく快感を顔全てで表現しながら、こちらを見ているウチの知香良。
あのドヤ顔腹立つなぁああ!!!!
なんだあいつの態度わぁぁあああああ!!!!!!
確かに昨日の帰りはドラックストアに寄って、高めの歯磨き粉とメンズボディソープを無けなしのお小遣い(大半はガチャの餌食になるため、本当に無けなし)で買ってたよ!!!だから、口臭や体臭の件は有り得ないのはわかりました!わかりましたよ!
だったらなんで!フリスクを!渡すのかなぁ!!!???口が臭くなかったら、渡す理由なんかなくない!?それとも本当に恋.......??
いやあんなクソデブに恋なんかするわけ無いだろぉぉがぁぁあああああ!!!
(いや!!言い過ぎだろ!!!)
.......嘘は言っていない。真実こそ残酷なのだ。
(そうだな。だとしたらナレーション。お前は俺がモテないと決めつけ、かなりの暴言を吐いた真実がある。つまり、名誉毀損罪だ。どう落とし前つけてくれるんだ?)
かなりのドヤ顔をキープしながら脅してくる知香良。
目つきが悪いのも相まって、借金取りみたいな風格を醸し出している。だが、こんなやつに一度屈したら最後!!
骨の髄までしゃぶしゃぶした後に、コンクリに詰め込んで東京湾行きになってしまう.......!!!
って、ナレーションの私は存在がないんですけどね笑
(そんなノリツッコミしてる暇があるなら早く謝罪しろ!コラ!)
.............いや、まだ問題はある!
(はぁ!?)
口臭や体臭は改善したかもしれないが、知香良にはまだまだ残念な箇所が多い!!
だから別の問題で改善して欲しい所があると考えるのが自然!
また!本当に恋心があるなら、フリスクよりももっといいお菓子をくれそうなものではないか!
つまり!フリスクを貰い続けている限り!改善されてないということでは!?
(何その無理やり理論!?!?)
だが、恋心があればいずれいいものが貰えそうなものだろう?だから、ありのままの知香良でいてもずっとフリスクなら、それはもう遠回しの汚物宣言なのだよ!
それでも、安易にフリスクを貰い続けられるかな?!
知香良くん!!
(.............わかったわかった。
ナレーションがそこまで言うと、もうメンタルが持たなくなってきた.......
そしたら、フリスクを貰わなくなるまで自分を磨いていきゃいいって感じなんだろ?)
諦めたように天を見上げる知香良は、ニッコリと笑いながら頷くナレーションを見て憂鬱な気分になった。
(なんでこんなことになったかなぁ〜?)
と思いつつも必ずフリスク以外のものを貰うために努力してやる!なんてことを思っていた。
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12月半ば。
フリスクを貰い始めて、3ヶ月程。
.......訂正。
フリスクを貰い続けて、3ヶ月程が経った。
空気が冷たくなり、防寒具がないと耐えられない気温となった。そんな中、知香良は鼻を赤くしながら校舎裏に来ていた。理由はフリスクを渡し続けた女子から来て欲しいと言われたからだ。
「知香良くん!」
校舎裏にはすでに女子の姿があった。マフラーをつけているのに分かりやすく顔を赤くし、緊張している様子だった。
「おう!今日はどうした?」
いつもと同じようにと心構えて返したつもりだが、多分女子には緊張が伝わってしまったのだろう。女子の顔が綻んだように見えた。
「知香良くん。実は話があってね。」
そんなことは分かってるし、内容すら理解しているが女子からその言葉を聞きたくて、知香良は真っ直ぐと女子と対峙した。
「実は知香良くんのこと!ずっと前から好きでした!
付き合ってください!!!」
その言葉を聴いた知香良は二つ返事で答えた。
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最終ステータス
身長・158センチ→173センチ
体重・65キロ →60キロ
体脂肪率・26% →17%
髪型・少し長めのボサボサヘアー→行きつけの美容院で整えたショートヘアー
コミュ力・底辺レベル→陽キャに混ざれるレベル
性格・真性の根暗→天然不思議ちゃん
趣味・ゲーム廃人→ボルダリング
ナレーション→統合失調症による幻覚だと理解し、服薬にて自己安定を図れている。