表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギャラリーランコントル  作者: 津村
4/42

日本語と英語


 メアリーへ向けられた達筆な筆記体は、アメリカ人にしてはとても丁寧に書かれていて、それがルカの名前と住所を示していることは、日本人の俺でもすんなり理解できた。


 渡されたハサミで慎重に端を切ると、中には五枚ほどの便箋の束が入っていた。開いてみる。確かに俺宛だった。


 ルカと文通をしだして、そろそろ半年になる。


 きっかけはメアリーだった。バイトを始めて半年が経った頃、ちょうど俺と同じ年頃の孫がいるから、文通相手になってくれないかと持ちかけられた。今時メールじゃなくて手紙?と訝しくも思ったけど、理由は一通目で分かった。ルカは日本語の勉強をしていて、それでわざわざエアメールを使って日本語で手紙を書きたかったようだ。


 初めてルカから受け取った手紙には、小学校に入りたての子供が書いたような、歪なひらがなが大きく書かれていた。そんな文字を可愛く思い、俺はなんだか先生になった気分で読み解いていった。


《はじめまして。るかといいます。いま、にほんごをべんきょうしています。めありーからきいててがみをかきました。これからよろしくおねがいします。》


 そして手紙の後半は、ブロック体で書かれた流暢な英文になっていて、そっちは一転、辞書を捲りながら読むことになった。


「筆記体で書かれていたら、メアリーに翻訳を頼むところでした」


 そうメアリーに言うと、


「ブロック体だって辞書の先生に頼りきりなのに」


 と笑われたのを覚えている。


 メアリーのところにルカから返事が来るのは、早くても一ヶ月後。それでもアメリカと日本を繋ぐその手紙に、俺は運命みたいな深い繋がりを感じていた。


 早速便箋を広げると、今回も前半は日本語で書かれていた。あんなに大きかった文字も随分と小さなサイズになり、中にはカタカナと簡単な漢字まで混ざっている。俺が英語を覚えるよりも遥かに早いスピードで日本語をマスターしていくルカには、毎回とても驚かされる。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ