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ギャラリーランコントル  作者: 津村
19/42

富士潮商店街


「まずはそこ、坂崎鮮魚店」


 俺が指差した先を、ルカが目で追う。


「ここはエビ団子が最高に美味いから、揚げたてが売ってたら必ず買うこと!狙い目は夕方の五時~六時頃かな。少し混むけど」

「へぇ、この店は魚屋さんか」


 ルカはまたスマホで写真を撮って、魚の絵文字と共にメモ画面に添付する。


「焼き魚も売ってるから、一人の時に食事で困ったらここへ来るといいよ。それにきっと、世話焼きのおじさんたちが色々と助けてくれる」

「分かった。よく覚えておくよ」

「じゃあ次の店は」


 やっぱりあそこだよな、と目指す場所へ視線を移した矢先、恐れていた事が起きて思わず足が竦んだ。


「やぁハル!昨日は大活躍だったんだって?」


 通りがけ、接客を終えた魚屋の店主が目敏く俺の姿を見つけ、大声を上げてこちらに手を振ってくる。しまった……と思った時には、店から去ろうとしていたお客さんが俺に向かって頭を下げたから、俺も慌てて頭を下げ返した。


 はぁ。やっぱりルカを連れてると目立つよな。


「大活躍はトウマの方です。あいつリレーで五人抜きしたから」

「でも次の奴で三人に抜かされて、結局ハルが一番でゴールしたんだろ?ハルがアンカーなんて、つまらないリレーだな」


 ガハハハ!と盛大に笑う坂崎のおじさんから逃げるように足を進めると、「もしかしてハルって有名人なの?」とルカが俺の顔を覗く。


「違うよ。あの人、クラスメイトの親父さんなんだ。つまりあの店は友達の家」

「へぇ。友達には会わなくていいのか?」

「どうせ部活で学校だよ。また今度紹介するから」

「ふーん」


 あー焦った。いつものように店番をしていることは分かりきっていたのに、こうやって派手に声をかけられるのはやっぱり苦手だ。跳ね上がった心臓がまだ苦しい。


「次はこっち、駄菓子屋のヤナギさん。ここら辺じゃ一番大きい駄菓子屋で、おじさんがいたらラッキー、大抵はオマケをつけてくれるんだ。駄菓子っていうのは、小さな子供向けのお菓子のことね」

「ダガシね!知ってるよ、メアリーに貰ったことがある。スダコサンだろ?」

「そうそう。俺のオススメはビッグカツとくるくるぼーゼリー。安いからって沢山買うと、メアリーに怒られるから注意だ」


 店先に並ぶ色とりどりの駄菓子を見て、ルカがしゃがみこむ。


「ああ、ほんとにどれも安いな」

「だろ?でも今日は寄らないよ」

「ビッグカツは?」

「この後もスケジュールがびっしりなんだ。残念だけど寄り道をしてる時間はない」

「そうなの。残念」

「さ、次は文具店だ。で、その後は本屋と八百屋、肉屋、靴屋。そうだ、和菓子屋のツル屋も外せないな」

「分かった分かった。ゆっくり行こう」


 全長約四百メートルほどの商店街には、その他にもゲーセンやラーメン屋が並び、平日の昼時にも関わらず、店先で話し込む主婦の姿や、自転車で疾走する人の姿がよく目につく。


 祖母の話によれば比較的新しい商店街らしいけど、こうしてしっかり地域に根づいていて、ここからバスで十分の場所にある大型スーパーになんか負けない活気で溢れている。


 俺はなるべく知り合いに会わないようにそそくさと商店街を進み、外観と、そこが何の店かだけしっかりルカに教え込んだ。



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