第三話 東の室町幕府
ペースアーップ! なぜかと言うと、執筆が進むからです。
ただそれだけなんです。投稿頻度に関しては水曜日と土曜日の朝7時です。水曜は予告無くお休みを頂くかもしれませんがご了承を。土曜日のお休みはお知らせします。
ではどうぞ。
「私の名前は土御門有宣だ。」
白髪で左目が前髪で隠れたような容姿をしていた。男はそう名乗ると中に入れと手招きしてきたので、おとなしく厄介になることにした。
「突然押しかけてすみません。」
俺はとりあえず謝った。実質犯罪行為だからだ。
「いいんだよ。だって知ってたからね。」
すると目を隠していた前髪をあげた。その目に刻まれているのは五芒星。
「『星海の渡航者』ってやつに伝わる能力でね。利き目じゃない方に未来視の眼を持つんだ。ただ、1年に1回、4月1日にしか未来を読めないんだよ。しかも直接見えるわけじゃないしね。まぁ、それで君達の来訪を知ったわけだ。」
話を聞いていた俺たちはまだ名乗っていなかったことに気づいた。
「時真奏多です。」
「勒莉麗蘭です。」
すると有宣は少し驚いたような顔をした。
「姓があるんだね。君たち多分平民階級でしょ?」
俺は相方に目をやった。
「俺はそうですけど、麗蘭はちょっと・・・」
「ま、まぁ特権階級ではあるかもです。」
家宣は少し納得した。
「勒莉は確かに貴族系の名前だね。」
少し気になることがあった。
「あの、有宣さん。」
「何かな?」
「あなた、女ですか?」
「「!?」」
有宣と麗蘭が2人合わせて驚いた。
「どうみたって男でしょ!?目、おかしいんじゃないかしら?」
麗蘭が怪訝な表情をしてこちらをみた。
「ちなみにどうしてそう思ったのかな?」
どうしてと言われても困る。
「幻術を貫いて、その人の性別をオーラで感じ取れるんですよ。自分の目には男に見えますけど女の雰囲気があるな〜って。」
有宣は心底驚いた。
「まさか、そんな人がこの世に2人も存在していたなんて。」
すると有宣は頭をポンと叩くと男性の見た目から女性的な見た目に変化した。
「ふぅ。貴方達の前では男っぽく振る舞わなくて済むのね!」
有宣はもう一つ頭をポンと叩くと服の見た目も黒を基調とした服が桜色に変わった。
「改めて、私の本当の名前は土御門 桜春。春さんと呼んでね!あ、あと敬語もいらないから。自然な感じが一番よ。」
雰囲気があまりにも違いすぎたが故にきょとんとしていると俺たちだが、麗蘭が真っ先に我に帰った。
「あのセクハラ式神は一体なんなのー!?」
「ウェイト!ウェイト!」
麗蘭が桜春の胸ぐらを掴みそうな勢いだったので俺が止めた。
「奏多、せくはら・・・とは?」
と純粋な質問が飛んできたので答えた。
「男性が女性に対して性的な嫌がらせをすることだよ。」
「でも、あの式神には性別ないよ?」
すると麗蘭が必死に反論した。
「男性的なフォルムをしているから、セ・ク・ハ・ラ、なのっ!」
「まぁまぁ、春さんには罪ないでしょ。」
「つくってるんだから同じでしょ!」
「何が同じかわからないけど、そもそもあの式神自体にそんな願望があるなんて知らなかったなぁ。」
どうやら人型式神には人格を搭載しているらしい。ハリボテ式神にはどう考えたって搭載されてないよなと思いながら麗蘭を制止した。
「はぁ。わかったわよ。たしかに春さんに罪は無いわ。そこは認める。でも、あのセクハラ式神はなんとかしといて!」
「わかったわかった。」
と桜春は少し笑った。
夜遅くだったので俺たちは少し仮眠を取らせてもらうことにした。
夜も開けて時刻6時。
「奏多、麗蘭。今日は幕府の会議で私の弟子として参加して、今のおかしな状況を知っておくといいよ。」
服は桜春に見繕ってもらった。装束と呼ばれる神主が来ているものを陰陽師は着る。今まで女性がいたのかと言われるとこれが女陰陽師なんてものはいなかったらしい。といってもそれは見かけ上の話で、女でも優秀であれば男装させて陰陽師にしたらしい。桜春はそのいい例だ。
「麗蘭も性別偽装術式かけとくからね。あと、御所では蘭明と名乗るんだよ。」
「うん、ありがとう。」
着替え終わって、屋敷の外に出ると馬車が止まっていた。
「馬車って意外に気持ちいいな。」
俺は素直に感動した。
「だろう?」
風景を眺めながら進んでいくと、ついに目的地に到着した。
「奏多、麗蘭。ここが花の御所だよ。」
想像以上の大きさだ。
門を抜け、俺たちは会議所のところへ向かった。
「待っていたぞ、有宣。」
と声をかけたのは身長が高く少し厳つい顔をした女性だった。
「これはこれは、富子様ではありませんか。」
(この人が!?)
流石の俺でも知っている。日野富子といえば室町幕府第八代将軍足利義政の妻で、義政に代わって政治を仕切っていたという。
「ところで、有宣。その者達は?見ない顔だな。」
俺たちのことを指しているのだろう。
「私の弟子で奏多と蘭明です。いい子達ですよ。」
「へぇ・・・」
すると富子がじっと睨むから少しビクッとした。
「いや、いい顔をしている。いい子達なのだろう。」
富子の顔が緩んだ。俺は麗蘭の様子を伺った。するとホッとしていた様子だ。するとそれが顔に出ていたのか富子が気遣った。
「ああ、あまり怖がらないでくれ。真顔なんだ、これ。」
そりゃ初対面じゃ誰だって怖がるよな、と思った。
「君達も参加するといいぞ。有宣。そなたも来たことだし、会議はすぐ始めるから早くくるのだぞ。」
そう言っておくの方へ消えていった。
「怒られないよう早く行こっか。」
会議室につくともう準備が整っていた。
「奏多と蘭明は私の背後にいなさい。」
と言われたので麗蘭もあいづちをうって背後に下がった。
すると一段高いところに座っていた男が話し始めた。
(富子様の隣にいるのが八代将軍義政・・・か。)
「では会議を始めよう。では、富子よろしく。」
「久しぶりに会議に出たと思ったら、結局実際にするのは私なのですか!?」
「冗談だよ。勝元、昨日の強盗事件件数を教えてくれ。」
細川勝元。東軍を指揮する将だ。勝元が指揮する東軍と山名宗全が指揮する西軍に分かれているものの、戦闘行為には至っていない、ということらしい。勝元は兵達を検挙人としそれを率いているのだそうだ。
「はっ。強盗事件の数があまりに増加しすぎているが故検挙しきれない、というのが現状にございます。以前は兵達の中にも盗みを働く者が多数出現しましたが、有宣殿の呪詛切りの護符を身につけて以来一切なくなりました。」
すると桜春は少し得意げな顔をした。
「有宣。ということは、この謎の強盗欲病についてわかってきたということか?」
(強盗欲病!?何じゃそりゃ。)
俺はネーミングセンス以前にどういう病気なのか聞く必要があると思った。
「あの・・・。」
すると富子が対応してくれた。
「なにかな?」
「強盗欲病ってなんですか?」
「ああ、そうか。君たちはこの病名が何なのか知らなかったな。有宣、教えてなかったのか?」
すると桜春は少し焦った。多分言い訳を考えている。
「ええ。病名自体は教えていませんでした。」
「では、どういうものか教えてやれ。」
「はい。奏多、蘭明。強盗欲病とは文字どうり、人のものを力づくでも奪いたくなる衝動がおこり、犯行に及ぶというものだ。これは西の方でも起こっているらしくってね。」
(なるほど。それでお互い対処に追われ乱が起こらなかった、ということか・・・。)
俺は納得した。同時にどうすれば事件解決に繋がるかも。
「奏多くん。もういいかな?」
富子に声をかけられたので返事した。
「で、有宣。どうなんだ?」
「昔からある呪詛切りがたまたま聞いただけなのですが、それによって、これが呪詛系であることがわかりました。」
すると、義政はすぐに桜春に問うた。
「量産は可能か?」
桜春は少し考えた。
「術式刻印自体は全然難しくないのですが、護符の数が圧倒的に足りないんですよ。なので、結界型にして京都に呪詛が流れ込まないようにするしかないと考えまして、試作型は完成しています。」
「ほう?」
「今すぐにでも御所を包む程度の大きさのものなら結界を張れますが?」
「わかった。では、有宣、奏多、蘭明。今すぐ下がり、結界を貼りたまえ。」
桜春は立ち上がった。
「御意に。」
そう言って俺たちも下がった。
なぜ東軍なのかって?それはもちろん書きどころが多いからです。ちなみに土御門有宣は実在の人物で桜春なんて人はいません。正式に土御門家を名乗ったのも有宣からなんですって。
というわけで次回もよろしくお願いします!