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トラベラーズ~時の流れは少年と共に~  作者: マッキーryo
七つの大罪 怠惰な浪漫人(悩めるビザンツ皇帝)
10/10

1話 取り返しのつかない世界

ほんっとうに申し訳ないです!めちゃめちゃ遅れました。ということで早くどうぞ。

ー ローマ教皇庁


 普段はそれなりに騒がしい教皇庁だが、現在はそうではない。時の教皇ウルバヌスとそのシスターのピグレド・クルンしかいない。


「だから言いましたのに。今の民ではロクに教皇の言葉すら聞いてくれませんよ。権威とか、そう言うの抜きに。」


「僕は嫌だったんだよ!?ほかの人よりもちょっと信仰に厚いだけで教皇に推薦されて、挙句全会一致で教皇になったんだよ。なりたかったわけでもないのに・・・」


 ウルバヌスは頭を抱えて嘆いた。ピグレドもこれほど弱気なウルバヌスを見たことはなかった。


「僕たちもあの住民のように()()()()に落とされるのさ。」


「確かにあの堕落は想定外ですけど。まだ聖職者たちは辛うじて大丈夫です。どうやら信仰を守っている以上は堕落することもないようですし。」


 ピグレドもため息混じりではあるがウルバヌスを落ち着かせようと頑張っているのだ。


「ピグレド、疲れてないか?」


「いえ、決してそんなことは・・・」


「僕のことは構わないでいいから休んでくれよ。祈り続けて食事もするから。」


 ウルバヌスも気遣っているのだ。ピグレドは首をふるふると横に振った。


「今休んだらそれこそ堕落しそうな気がして・・・」


「無理をしない程度に祈ってくれよ。」


「わかっております。」


 ウルバヌスは立ち上がって窓から街を見下ろした。


「活気に溢れたローマが戻ってくることはないのだろうか・・・」


 ローマの街は閑散としていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 一方その頃、アルカディアはローマ上空にホールアウトした。俺はいつものプロセスを踏んでホールアウト後の計器のチェックを行った。


「ホールアウト。遮蔽システムオン。全計器、オールグリーンだ。」


「了解。桜春と麗蘭は現地の様子を見てくれ。」


 凛斗は2人に命令を下した。


「りょーかい。」


「わかった。」


 若干やる気のない復唱だが気にしない凛斗であった。すると桜春がいち早くローマの異変に気がついた。


「これって、街だよ・・・ね?」


 凛斗に聞いた。


「そうだが。それがどうかしたのか?」


 逆に聞き返した。


「人が居なさすぎるんだ。」


 凛斗がそれを聞いて、手元のパネルを操作し始めた。


「生命反応はあるが、全員家の中だな。だから閑散としているのではないか?」


 麗蘭はおかしいと思い、前回のような呪いの類をにらんだ。


「春さん。この辺に呪いみたいなものが漂っていないかな。」


 桜春は目を閉じた。


「ああ。流れているね。とびっきり邪悪なものが。」


「堕落させる系の呪いなのか?」


「見てみないとわからないだろう。」


 凛斗は例によってブリーフィングパネルを開いた。


「まぁ、前回と同じく僕はここに待機だ。奏多、麗蘭、桜春の3人で上陸してもらいたい。それで、先遣として先に上陸している海津少尉と合流。ローマの状況を早く掴みたい。」


 全員異論なしで作戦行動に入ろうとしたその時、凛斗がある大きめの長い箱を見つけた。


「これはなんだ?」


 俺と麗蘭は首を傾げたが桜春は


「親佐さんに頼んでたものだよ。中身はまだ秘密さ。」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 俺達は凛斗に指定された修道院に向かっていた。


「それにしても、本当に閑散としているな。」


 麗蘭も桜春もそう思うらしい。


「ゴーストタウン、よね。」


「若干不気味だね。」


 俺の腕の通信機が鳴った。


『奏多、そろそろ目的地だ。目の前に大きめの教会が見えないか?』


「大きめって、アバウトだな・・・」


 俺は目の前を見渡した。するとたしかに、大きめの教会があった。俺は指差して言った。


「もしかしてだけどさ、あれのこと?」


『ああ。少尉からもらってる写真と一致する。』


「よし。じゃあ早速入るとするか・・・」


 すると俺の偽装服の袖をぐいっと引っ張る感んじがした。


「あ、あのぉ・・・」


 麗蘭だ。しかもめちゃめちゃ震えている。


「どうかしたの?」


「あの教会薄暗すぎない!?」


 言われてみればそうだ。とても誰かがいるような気配ではない。


「あれ、麗蘭って幽霊系って苦手なの?」


 と桜春がたずねる。


「苦手だよぉ・・・」


 するとさらに桜春が指摘する。


「あの『禍・此隅山城』にだって突入できたじゃない。」


 すると麗蘭が言い返す。


「あっ、あれはッ!そ、その・・・」


 俺がフォローをいれることにした。


「アカデミー生時代からなんだけど、麗蘭ってわかってることには全然平気なんだけど、驚かされるとかすっごく苦手なんだよ。だから、お化け屋敷とかめちゃくちゃ苦手だと思う。1年の学園祭の時とか酷かったような・・・」


 するとなぜか袖の引きが強くなった。


「あ、あの・・・麗蘭さん?」


 恐る恐る麗蘭を見ると、頰がすごく赤い。


「なんで・・・」


「は、はい?」


「なんで奏多が恥ずかしい思い出を知ってるのよーッ!!」


 妙にビリビリした拳が突き飛んできて・・・


「グァワァッガッ!?」


 とへんな声を出して倒れた。


 ー10分後


「あの・・・春さん。どれくらい気絶してた?」


「ほぼぴったり10分。麗蘭の雷殴りが炸裂してぶっ倒れたよ。」


 食らったのは3回目だが、やはり笑えない・・・


「なにが笑えないかというと、痛くは無いんだけど若干感覚が30分くらい麻痺するところだ。」


 個人的には大問題だと思った。


「奏多が悪いでしょ!」


 とド正論を言われてしまったので、


「すいません・・・」


 と謝るしかなかった。すると、桜春は


「どっちでもいいけど、早く行かない?」


 とまたまたド正論を言われてしまった。


「あ、ああ。そうだな。」


 俺たちは前へ進み、教会の扉を叩いた。


「すいませーん!だれかいらっしゃいませんかー?」


 一瞬静かな空気が流れる。


「いないのかな?」


 やはりまだ怖がってる麗蘭はもう言葉を発せていない。


「入ってみようよ。」


 と桜春に提案されたので、


「まぁ、そうするしかないよな。」


 と同意して、中へ突入した。


「奏多、これは聖堂?」


「十字架と教徒達が説教を聞くための長椅子があるあたり、そうだろうな。ていうかやっぱり不気味なんだな。」


「ねぇ、やめとこうよ・・・」


 今にも泣き出しそうな麗蘭であったが、気にしていては前に進めない。


「ねぇ、奏多。奥の方、なんか明るくない?」


 言われてみれば、奥に続く不自然にうっすら明るい道があることに気がついた。


「麗蘭怖がらないで。もうすぐつくから。」


 確証はないけど、という言葉は飲み込んでおく。


「うん・・・」


 と素直に返事してくれたので助かった。


「たどり着いたのはいいが、階段は地下に続いているのか・・・」


 こんなの進むしかないわけだ。しばらく進むと、少し大きい広間に到達した。すると、


「ようやく来たか。まったく、飽きるか飽きねぇか、ギリギリのラインだったぜ。」


 という声が聞こえた。


「海津少尉ですか?」


 と尋ねると


「ああ。あとついでに、硬いのは無しで行きたい。」


 そう言って影から赤い髪の少年が出てきた。


「海津リオだ。リオでいい。ああ、あと敬語も無しで。」


 と名乗ったので、


「時真奏多だ。先遣任務ご苦労様。」


 と名乗った。


「勒莉麗蘭よ。あなたに聞きたいことがあるんだけど・・・」


 何か問おうとしたら、


「先に自己紹介させてくれないかな?」


 とニッニコしながら麗蘭の方を見ながらそれを遮った。


「え、ええ。どうぞ。」


 と、若干押されたような形で引き下がった。


「土御門桜春だ。春さんと呼んでくれ。」


 と自己紹介すると、ホロパネルがブンッと浮かび上がって、


「日々名凛斗だ。こいつらのバックアップ担当だ。」


 と名乗った。すると、リオは笑って


「みんな個性的なんだな。仲よさそうでいいよな。」


 と言った。凛斗は


『任務中なんだがな。まったくこいつらと来たら・・・』


 と呆れていた。すると、


「なーに?凛斗ってばあきれないでよ。」


 麗蘭が凛斗が写っているパネルを覗き込んだ。


 リオは笑いながら言った。


「ピリピリしてるよりはマシだと思うぜ。」


『そういうものなのか?』


 凛斗がたずねると


「経験上間違いないって!」


 リオが返した。


「あ、そうそう。現地協力者なんだけど、今呼びに行くから・・・って言ってたら来たな。」


 明るいところから2人分の足音が聞こえてきた。


「人が増えてなんだか楽しいかも、ですね!」


「うん!これはいい予感だね・・・」


 まず白い髪の少女から


「アメリア=ゼフィレッリです。13歳です。アメリアって呼んでくださいね。」


 と丁寧にに名乗った。赤毛のショートの方は


「ジュリア=ザヴァッティーニだよ。12歳!ジュリアって呼んでね!」


 元気いっぱいだった。


「2人はここのシスターなんだ。」


 とリオが補足を入れた。


「あなた方がリオさんが言っていた、『未来人』ですか?」


 おれはギクッとした。リオに近付いて小声でたずねた。


「もしかしてありのままの事を言ったの?」


「もちろん。信じてもらえなかったけど。」


 頭の中に『?』がものすごい数が浮かび上がった。


「え、なんで協力者あつかい?」


「未来人が来たら信じてくれって言っちまったぜ。ハッハッハ!」


「ハッハッハじゃねぇよ。」


 するとアメリアとジュリアが近づいてきて


「未来人ですか?」


「なの?」


 とググッと押し寄せてきた。話を聞くかぎりウソを言う通りがないのでここは正直に


「そうだよ。」


 と肯定した。


「リオの言ってたことってホントだったんだね!」


 とジュリアが眼をピッカピカにして興味津々に見つめてくる。だが、アメリアはまだ疑念が晴れていないようだった。


「証拠ってありますか?例えばこの時代にないものとか。」


 俺は色んな道具を連想した。なにせ星のようにある中からどれが未来っぽいとか難しいのだ。


「この時代に電話ってあるかな?」


 アメリアは、はてなと首を傾げた。すると、桜春に


「私の時代より前なのにあるわけないでしょ。」


 とツッコまれた。


「ですよね。なら、これがいいんじゃないかな。」


 俺は腕のリストバンド型通信端末を操作し、ホロディスプレイを起動した。


「凛斗なんか話して。」


 ディスプレイ先から返事が返ってくる。


『なんかとはなんだ。』


 アメリアは少しびっくりした。


「これは遠いところから顔を見ながら話すことができる道具だ。昔はケータイとかスマホなんて言われたものだけどね。」


「これはすごい・・・便利ですね。」


「だろ?」


 今度は麗蘭に


「なんで奏多がまんざらでもない感じなのよ。」


 とツッコまれた。俺は返す言葉もなかった。


「あなた方をとりあえず信じます。でも多分、天の主的にはちょっとアウトっぽいものとか多分あるでしょうから教皇様の前ではこのことは内密にしておきましょう。」


『僕の言葉全部取られたんだが?』


 と子供相手に悔しがっていた。むしろ、子供に遅れをとったので悔しかったのかもしれないが。


「しっかりしてるなぁ。麗蘭もこのくらいしっかりしときゃな。」


 とつぶやいた。と言う言葉がどうやら


「奏多さん?」


 麗蘭の耳に入っていたらしい。拳がバチバチに光っている。


「すいませんなんでもありません」


 と何も言っていないアピールをした。すると突然、ドンっと何かが落ちた音が響いた。


『奏多。その近くに何かいる。すぐに向かってくれ。』


「了解!みんな行くぞ!」


 俺たちは教会の外に出た。そこには禍々しい何かがうずくまっていた。


「これ神代のやつ。ぜったいこの時代にあっちゃいけないやつだよ。」


 と桜春が即座に解析した。すると


「ガアアアッッ!」


 とガーゴイルは汚い姿と共に目覚めた。


「リオ!アメリアとジュリアを守って!」


 と指示を出した。


「よっしゃ!任せとけ!」


 という返事がバッチリ聞こえたので、俺はレジストソードを抜き構えた。麗蘭にいつものことをやってもらうように頼んだ。


「麗蘭!いつものやつ!」


「了解!あの見た目から考えて名称はガーゴイルを提案!」


 凛斗はその案を一発で通した。


『提案許可。以後、同タイプをガーゴイルと呼称する!奏多、撃破して!』


 俺は構えたレジストソードを斬撃態勢に構えて、一息深呼吸し、眼を閉じ、開いた瞬間・・・


「せいっ!」


 と掛け声と共に地面を蹴り相手に急接近した。


「ギシャァァァァッッ!」


 ガーゴイルも急速に近づく。


「『視せよ』。」


 その、一瞬を予言する。俺の目は()ではなく、()()しか見ない。そしてガーゴイルが見せる一瞬の隙を俺は見逃さなかった。


「ハッ!」


 弧を描くような斬撃は確実にガーゴイルを仕留めた。


「ふん。挨拶ってことなのかな、これは?」


 なぜか視線を感じた。殺意と堕落の意思に満ちた。こうして、ローマでの初戦は割と早い段階で起こったのだった。

次回もいつになるか分かりませんが最低1ヶ月以内の投稿にします。実は展開自体はかなり先まで決まってるので。なるべく早く出せるよう頑張ります。次回もよろしくです。

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