三人目(過ち)
面会日程:十二月十二日~十二月十三日
面会可能時間:午前十一時から翌午前十一時
今日も一時間前に来ちゃった。
だって、今日遅く来ちゃうと、前の二人より扱いが悪いというか、なんか失礼な様な、まぁ、あんまし意味無いだろうけど。
予定は、昨日と同じく、ファストフードから水族館のコースにします。
昨日、好評だったからと、あえて別な行動に変える必要が無いと思ったから。
ただ、ファストフードは、別な種類のお店にして、豪華な夕食もホテル内の別なお店に変えるつもり。
ほんとは、同じにしてもよかったけど、流石に、同じカップルが連日はちょっとね。
そして、やはり結婚式の話になった。そこまでは、ほぼ同じ展開。
違うのはここから、今日は一泊OKなので、そのまま宿泊にした。
話したい事が、たくさんあるのです。
でも、なぜか、思い出や質問的な話になってしまって、少し疲れた気がした。
明日も、午前中はあるから、早く寝て、早起きするのもいいかもしれない。
「今日は、早めに寝ましょうか? 明日もあるし」
「ああ、そうだね」
「じゃ、先にシャワーしてくるね」
「どうぞ」
「行ってきます」
そう言ってシャワーを浴びるためにバスルームへ入った。
しばらくして、シャワー室を出ると、彼はベッドに座っていて、
「ええと、今日は、いいのかな?」
と、いきなり聞かれた。
「え?」
「今日の流れではそうなのかなって」
もしかして……。
「結婚するまで、そういう事はしないって……」
「あれ、そうなのか、ごめん、俺シャワー行ってくるよ」
もしかして約束を覚えて無い? というか消えてる?
「あ、ちょっと待って。 突然聞いちゃうけど、わたしに告白したときの事覚えてる?」
「ああ、えっと、覚えて………」
「もしかして、思い出せない?」
「ああ、なんでだろう、もやっとは何かあるんだけど……」
「昏睡になるくらいだから、やっぱり少し影響が出たのかもしれないね」
「悔しいなぁ。 どんなだったの?」
「今度教えてあげるね」
そう言って抱き付いていた。
「いいのか?」と聞かれてキスで答えた。
必死に思い出そうとする顔が、とても健気だったからだろうか、それとも、この三日間でわたしも……。
結婚するまでは、絶対にしないと決めていた。
付き合い始めた日に二人で決めた事、
提案してくれたのは彼だった。
泊りでの旅行は何度も行った。
だけど、決して、違えることは無かった。 たぶん、男の人には辛かったんじゃないかな。
あの日の記憶、約束した記憶がすっぽり無いんだ。
それを責めることはできない。
それにさ、わたし自身、結婚も決まってるんだし、構わないよね……とも考えていた。
あ、ワイン飲んじゃったからかもとか、言い訳はいくつも浮かんできた。
そんな感じに、既に頭がオーバーフローしていて、考えたくない案件は消えて無くなっていたのだろう。
つまりは、そのまま流されて、朝を迎えてしまった。
そして、早起きどころか、九時過ぎまで寝てしまった。
しかも、彼は先に起きていて、ずっとわたしの顔を眺めていたらしい。 ずるい。
朝食はルームサービスで済ませて、急いで準備した。
彼が戻らないといけない時間は十一時なので、
チェックアウトは十一時までだけど、ぎりぎりまで粘ってから研究所に向かった。
研究所へ着くのは、ちょっとだけ遅れた。ぎりぎりまで粘った結果ではなく、えせ牛歩戦術だ。 まぁ、最初に少しくらい遅れても良いって言われてるので、担当者さんには怒られ無かった。
「今日は、楽しかったね。 また来るからね」
昨日と同じ台詞を言って、わたしは面会室を出た。
今日は、記録を書く事にした。
昨日までの事も思い出せるだけ書いておこう。
なんで、初日から、そうしなかったのだろう。
担当者さんがアドバイスしてくれてれば……気付かなかったのかな。わたしが聞き洩らしたのかもだけど。
一人目の印象としては、顔がちょっと良かったくらいかな。後は彼のまま。
二人目は、普通に彼だった。違うところが思いつかないくらい、だけど、一日目の彼の顔をみちゃったからか、なにか物足りなさを感じちゃった。 うわ、何書いてるの、わたし。
三人目、やさしかったけど、大事な日の記憶が欠けていた。そして、……。
やっぱり意味無いかな、メモ……日記とかも付けたことなかったし。