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誰よりも才能がある彼は、それでも屍を謳歌する  作者: 赤茄子 秋
江戸川区編
7/20

7話 死は隣り合う

騒動開始から一週間が経ち、それまでに別の班の鬼殺官は4人死んだ。川村がCレートの吸血鬼を既に4体仕留めているが、収束する気配はない。グールを作り、街に解き放つ奴等は頭が良く、被害も拡大の一方である。


そんな時に、今度はうちの班で死人が出た。川村のパートナーであった、見習いの子 海寄だ。


「……貴方は何とも思わないのよね、仲間が死のうと」


墓参りに来て早々に、隊長である川村から言われる。私は確かになんとも思っていないようにはしてるが、全く何も感じないわけではない。少なからず、寂しい気持ちはあるのだろう。私がCレートの吸血鬼から情報を引き抜いている間に、彼女はDレートの吸血鬼と戦っていたらしい。


「赤の他人である私が彼女を覚えても、意味はあるのか」

「それを、死んだ人の家族や同僚に平気で言えるのよね。それと……意味?生きているだけで人は良いのよ。貴方のような生きていても屍のように過ごして、命を浪費する意味がわからない」


生きてるだけで良い、生きている事を感謝しながら生きる。確かに、私には1日を乗り切っても……特に思う事がない。このいつ死ぬかもわからない場所で自分は死なないように立ち回れていると思っているからだろう。生きた心地を感じるのは死を感じた時だ、他人であれ自分であれだ。墓参り来ている私は心底生きた心地を感じる。だが、同時にそれに嫌悪感も感じる。


「人の最後ってのは、良くも悪くもその人を表す。私が四年間、鬼殺官をやって来て知った事だ。それが人生の終点で、それ以降にそいつの人生は無い」


汚い死に方をする奴は多い、市民を放って逃げ出して死ぬ者、仲間を盾にしたクズ野郎は私が殺したが最後まで泣き喚いていた情けない奴だった。


「少女を庇っての名誉の死と聞いた……私には彼女の死を慰る資格はないが、花だけでも手向けさせて頂きたいからね」

「……貴方、変ね。葬儀は出ないくせに、墓参りはするとか」

「私は讃えたいんだよ、誇り高く散った少女を救った英雄を。最後の汚い者に、花を贈ったことは無い」


私には出来ない事を出来る人はどんな者でも尊敬する、何故なら死ぬのが怖い私には絶対に出来ないから。

そんな存在だから花を贈るのだ、今までで彼女を含めて4人にしか贈ったことはない。終点を贈ったことは多々あるがね、吸血鬼とかグールとか人間のゴミとか。


「そして、目の届く範囲であった彼女を死なせてしまった償いの意味も込めて」


そう言うと彼女は何故か溜息を吐く、やれやれといった顔をしながら「馬鹿ね」と呟く。


「彼女は貴方より戦えるわよ」

「私は先週、吸血鬼を2匹倒した。自己防衛はできる」

「レートは?」

「CとDレート」

「嘘ね、だから貴方は8等なのよ」

「いや、来週から7等らしい」

「何回目の?」

「3回目」

「……そう」

「やけにしおらしいな、乙女か」

「乙女よ、貴方より強いけど」


得意げに言う彼女、しかしどこかか細さを感じる。


「……死ぬのが怖いのか」


いつもより戯言が長かった。それはこの戯言が日常と感じていたからだろう、その戯言を会う度に行なっていたのはそんな彼女の心の強さの支えになっていたのかもしれないが、日常そのものが彼女の支えなのだろう。


「……江戸川区は、私の生まれ故郷なの。桜並木の下でお弁当を食べたのも、ザリガニを釣ったのも、広い川の近くの原っぱでボール遊びをしたのも楽しかった私の思い出」

「意外にわんぱくな少女だったのだな」

「えぇ……この区の人達を、私と同じ様な目に合わせたくないの」


一応、川村がなぜ鬼殺官になったかは知っている。学生時代に噂話で聞いたのだ、家族のほぼ全員が死亡したと。その時にたまたま彼女は家におらず、外に居たらしいが、今のを聞くと遊び続けていたのだろう。そして帰ってきた時は、悲惨な光景だったのだろう。


「……妹はまだ生きてるわ、でも眠ったまま。8年経った今でもね」


重体で見つかった少女は一命をとりとめた話も聞いた事がある。しかし、妹の為に戦い続けるのは妹の為なのかどうなのか。もし彼女が死に、目覚めた場所に肉親が本当に消えたのを知った時、彼女妹はその時を耐え切れるのだろうか。


「私は吸血鬼を倒す、これ以上の悲しみの連鎖を私が止める……その為に紋字になるわ」


紋字、9人しか居ない日本支部の頂点にして最強の鬼殺官。彼女はなる気なのだろう、その1人に。なれるかなれないか、学生の時に紋字の本気を一度しか見た事が無いからはっきりとは言えないが……なれないだろう、彼女が劇的なレベルアップをしなければ。


「なら、今回の事件くらいサクッと倒してくれ。囮なら引き受けてもいいから」

「えぇ、当然よ」

「未来の紋字様って自慢できるからな」

「自慢する友人なんて、貴方居たの?」

「…………川村の紋字、傷とか悪になればいいのに」

「あ、えっと……ごめんなさい?」

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