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98.「私は知らない」、「ぬいぐるみ」、「ねむりましょう」
「私は知らない」
ずっと
ひとりぼっちで
荒野を彷徨っている
誰かに話すと
決まって
サボテンを食べてでも
生き残りなさいと
言われる
私は風景の食べ方なんて
知らない
ーーー
「ぬいぐるみ」
ぬいぐるみが苦手だ
皆
笑いながら
すましながら
泣いている
スマイルマークも
泣いている
なぜ
他人には
その涙が見えないのだろう
なぜ
見過ごせるのだろう
なぜ
心がかきむしられないのだろう
私は
こんなにも
苦しいのに
ー
同じぬいぐるみでも
買うときは
汚れていたり
縫製の悪い子を
選ぶ
美しい子は
誰でも欲しがるだろうから
ーーー
「ねむりましょう」
さあさあ
よい子よ
ねむりましょう
お布団に入って
ねむりましょう
手を握ってほしい子はだれ?
夜中に
おしっこに
行きたくなったら
ばあばはすぐに起きるから
手を繋いで
行きましょう
ばあばは強いから
闇の鬼も
逃げていくでしょう




