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ネイチュの詩(詩)・その1  作者: ネイチュ
89/101

89.「手袋」、「拠り所」、「親愛なる若者へ」

「手袋」


 おれも18歳になって孤児院を出て

 国王の親衛隊の一員となった

 21歳になったお前と6年ぶりに再会した

 この恋は叶わないものだという予感が

 薄々していた

 お前はおれの気持ちをはっきりと意識し

 その上で気づかないふりをした

 おれもそれに従った

 側にいられるのならなんでもいい

 永遠に“弟”に見られるのだとしても


 ふたり育った下町にある孤児院に

 給金から寄付をするために向かった

 近づくにつれ硬かったお前の表情が和らぎ

 子供時代の思い出話に笑みがこぼれる

 寄付で届いたひと組の毛糸の手袋を

 片方ずつ分け合ったこと

 あれは大切にするあまり持ち歩いて

 どこかに失くしてしまった

 お前もとっくに捨ててしまっただろう

 今は互いに貸与された革の手袋をしている

 雪が降ってきた

 お前は街角で天にすがるようなポーズをした

 聖人の像の前で立ち止まる

 そしてあの手袋を取り出し

 片手につけさせた


 ーーー


「拠り所」


 戻らない日々に安息があり

 たどりつけない場所に拠り所を求める

 報われない恋に身を焦がし

 届かない愛に苦しむ

 それでもあの人がこの世界にいるだけで

 生きる価値はある


 ーーー


「親愛なる若者へ」


 だからやめておけとアドバイスしたんだ

 火傷をするのはお前なんだから

 平気なふりをしていても

 奥歯を噛み締めていることを知っている


 言いたいことなんてお見通しだ

 “都合のいい答えにしがみつきたくない”

 そう思うのがお前の甘いところ


 長く生きていれば

 保守的じゃなく賢くなるんだ

 遠回りする時間ならたっぷりあるはず

 焦らなくていい

 お前は確かに前進している




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